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第26話 悪役。いざ林間学校へ

 ついに林間学校当日の朝を迎えた。


「今日は随分と早起きなのですね」

「まあな」


 雲雀が俺の部屋を訪れた。起こしにきてくれたんだと思うが、今日は俺の方が早く起きたようだ。さらに制服にも着替え終わっていた。


「林間学校が楽しみなのですね」

「ああ」

「ぼっち脱却ですもんね」

「そうだな」

「お気をつけて」

「おう」

「………」

「………」


 今日はなんだかんだ会話が続かないな。

 それは雲雀も思っているようで、何か話そうとするも口をもごもごしている様子。


 お互いに数秒黙り、


「……もう行かれますか?」

「そうだな。ギリギリで出るよりは余裕を持って出た方がいいしな」


 俺はボストンバッグをベッドの上に置き、中身をシーツの上に並べて持ち物の最終確認をする。雲雀は後ろで見つめているだけ。


  ……なんか、俺と雲雀が静かって新鮮だな。


 そんなことを考えながら確認を終え、荷物を詰めたボストンバッグを肩に掛ける。


「じゃあ行くか。運転お願いな」

「はい」


 うーん……やはりいつもより大人しい会話だよな。まあいつもが異様に騒がしいんだけどな。

 

「雲雀は1人で大丈夫か?」

「はい。今まで1人だった……」

「ちょいちょいちょい! そんな寂しいことを言おうとするな! たくっ……帰ってきたらどこか出かけような」

「はい」

「俺は俺で林間学校を楽しんでくるから、雲雀もひとりで好きなことしろよ」

「特にひとりですることはないですが、雄二様は羽目を外しすぎないように」

「了解」

「特に……」

「特に?」


 続きが気になり見つめる。雲雀は何かを伝えようとして……口を閉じた。


「雲雀?」

「なんでもありません。林間学校楽しんでくださいね」


 




 集合場所である学園内のグラウンド着いた。少し早めにきたので生徒はまばら。早朝とあって生徒のほとんどが静かである。


 こんな静かだと眠くなってしまいそうだ……。


 集合時間が近づいてくると、生徒の数が多くなってきた。


「おはよう……雄二くん……」

「おはよう結斗。眠そうな顔をしてるなぁ」

「うん……」


 眠たそうな目を擦りながらのろり、のろりと結斗が俺の元へくる。いつもは元気に駆けつけるが、今はさすがにテンションは低いか。それにしても眠そうだ。


「ちゃんと眠れてないのか?」

「ん……林間学校が楽しみでちゃんと寝れなかったのかも……えへへ……」


 ふにゃりとした笑みを見せる結斗に、一瞬だけときめいてしまったが……多分俺じゃなくてもときめいていたはず。


 けっして……


『おちんちんを確認するまでは女の子です』


 雲雀の謎の名言が気にかかって変に意識しているわけではない。


「雄二くん?」

「なあ、結斗。お前って……」

「?」

「男だよな?」

「僕は男の子だよ?」


 ですよねー。本人が言うんだから間違いない。


「そ、そうだよな! 悪いな、変な質問してっ」

「ううん。もしかして僕が女の子だった夢でも見たの?」

「ま、まあな?」


 実際はうちのメイドが結斗のことを女の子と疑っているだけだが。


「あはは、不思議な夢だね〜」


 ほのぼのと笑う結斗だが、お前はヒロイン力が強すぎて女の子と勘違いしてもおかしくないんだよなぁ……。


 まあでも、笑顔なのはいいことだ。この笑顔を曇らせたり、泣かせるなんてことをしたら……美人姉妹に馬乗りされてボコボコにされちゃう……!!


 それから学年主任の軽い説明のあと、バスに乗り込む。後ろの方の2人掛けの席に座った。俺は窓側。隣はもちろん……


「雄二くん。僕……寝ててもいい……?」

「ああ。つか、もう目がほぼ空いてねぇじゃねか。休憩で立ち寄るサービスエリアに着いたら一応起こすな」

「う、ん……お願い……。すぅ……」


 瞼が閉じたと思えば、寝息をたてて、結斗はすぐに眠った。


 全員が乗り終わるとバスが動き出す。


「林間学校……ちゃんと楽しめるといいが……」

 

 この強面の顔と良くない噂のせいで変なことに巻き込まれませんように……。


 なんて考えながら、窓に反射して映る自分の顔をぼんやりと眺めていると。


 カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ


 怒涛の連写。

 呆れるように俺は顔を覗かせる。


「……まひろさん。結斗の写真を撮るのは自由だが……いや、自由じゃねえな。せめてシャッター音を切れ……」

「ああ、忘れていたよ」

「お姉ちゃんうるさい……ふぁ……」


 通路を挟んでのお隣は、もちろん美人姉妹である。






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