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第21話 王子様の蕩け顔を見せられる悪役

「誰か今なんか言った?」

「いいや」

「ううん」

「僕じゃないよ」


 美人姉妹も結斗も首を横に振った。


 ちょっと待った、コールが聞こえたと思ったが……俺を含めたこの場のメンバーは誰もそんな事を言ってない。


「なんだ、気のせいか」

「俺たちだよ……!」

「ん?」


 また声がした。

 誰だと思い見渡すと、俺の席を囲っている結斗たちの後ろに文句ありげな表情をした陽キャグループがいた。

 

 ………この班に声を掛けるとは、中々勇気があるな。


 強面で怖がられている俺に、美人姉妹。美人姉妹に懐かれている主人公……ある意味最強の4人が揃ったこの班に、まさか割り込む勇者がいるとは思わなかった。

 チラッと周りを見ると、担任がいないことに気づく。なるほど、だから……。


「…………」

「………っ」


 次の言葉を待つように、俺たち4人は陽キャたちをじっと見つめるが……彼らは怖気付いたのか、口をもごもごさせているだけで中々話さない。


 ……まさか親睦会や個人で美人姉妹を誘ってもダメだったからって、結斗に八つ当たりしようとしているのかぁ? ほーう?


 結斗に八つ当たりした瞬間、怖い顔で睨めるようスタンバイしていると、


「どうしたの? 僕たちの中の誰かに用事かな?」


 話しやすいように結斗が優しく尋ねた。いい奴すぎるだろ……さすが主人公。


 結斗の気遣いもあってようやく1人が口を開いたと思えば、


「佐伯だけ……澄乃姉妹を独占して……ず、ずるいぞ!」


 …………ん? 


「そ、そうだ! 俺たちだって澄乃姉妹ともっと関わりたいのに……!」

「私たちにもチャンスを!」


 1人が言うと乗っかるように周りも意見し始めた。

 

 あれ? うちのクラスの陽キャってこんな感じだっけ? 俺にはもっと厳しい視線だったけど……。


「えっ、ええ!?」


 戸惑う、結斗。予想外の展開に俺も美人姉妹も固まる。


 なんで結斗に言って……ああ、美人姉妹のガードが固いからか。でも美人姉妹がすぐ傍にいる中で、結斗に言ったってしょうがないんじゃ……。


「なあ、頼むよ佐伯!!」

「ちょ、ちょっと待って!」

「うおっ!?」


 陽キャたちに迫られた結斗は、逃げるように俺の後ろに隠れて、ちょっと待てコール。お、俺の後ろ!? 


「びっくりした……こ、怖い……」


 怖がってらっしゃる……。こういう時って頭とか撫でればいいのか? いや、待て。男の頭を撫でてどうする。


「はいはい。みんなそこまで」


 まひろがパンパンと手を叩くと、陽キャたちが一瞬で大人しくなった。このクラスのボスが一目で分かるなぁ。


 クラスの注目を集める中、まひろはにこやかな表情で語る。


「私とりいなと班を組みたいって思ってくれたことは嬉しいよ。けれど……私たちは結斗と一緒がいいんだ。優しいみんななら……分かってくれるよね」


 言い終わり、まひろが微笑めば、


「まひろさんがそう言うなら……」

「そ、そうだよね。まひろさんがこの班が良いって言うんだもんっ」

「佐伯、詰めかけてごめんな……」

「あっ、うん……」


 さっきの勢いはどこへやら。陽キャたちはキッパリ諦めがついたように、スムーズに席に戻った。


「さすがお姉ちゃん〜」

「ふふ。じゃあこの4人で林間学校の班は決まりだね」

「ありがとう、まひろちゃん」

「結斗のためと思えばなんて事ないさ」


 何事もなかったようにクラスが賑わい始めた。


 微笑みだけで陽キャたちをコロっと従わせるなんて……さすが王子様。


「ねぇ」

「……ん? ん!?」


 まひろの声がしたと思い、横を向くと、すぐ近くにまひろの姿が。


 びっくりして固まる俺の耳元に、まひろが口を寄せる。結斗が向こうを向いているうちに、内緒話をするつもりなのか……?


「ありがとうね、笠島くん」

「えっ、いや……俺なんもしてないけど……?」


 むしろハブかれていただけで……。


「君のおかげで結斗のまた可愛い姿が見れたよ。ふふ……♡」

「……………」


 少し離れてまひろを見ると、目がなんだがとろんとしていて……


『結斗は可愛いんだ。そう、世界一かわいいぃ♡』


 前もあったな。結斗のことで嬉しそうにしているの。


 主人公である結斗に嫌がらせをする俺が真逆の友達というポジションについたことで、まひろにバグが生じたかもしれないが……


「………♡」


 いや、これが本性なのかもしれない。あと、俺だけに蕩け顔見せるのやめろ! 何も嬉しくないわ!!




 


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