第10話 悪役の平穏な学園生活?
「おはようみんな! おはようおはようおはよう!!!!」
教室に入り、元気よく挨拶。みんな俺のことを苦虫を噛んだような瞳で見ているけど全然気にならない!!
「なんだアイツ……昨日はめちゃくちゃ暗い顔してたのに……」
「やっぱり変な薬でも打ってるんじゃない?」
「大体アイツに関わる人なんて……」
「おはよう雄二くんっ!!」
「おう、おはよう結斗!」
結斗だけ嬉しそうに挨拶を返してくれた。なんていい奴なんだ……。
「雄二くんごめんね。みんなにもまだ雄二くんの良さを伝えられなくて……」
「俺は結斗が友達なだけで"安全"な学園生活を送れるから気にするな」
「雄二くん……」
胸に手を当ててジーンと感動してらっしゃる。相変わらず純粋だなー。
「っ!!」
「?」
強烈な視線を感じた。モブ生徒なんかとは全く違う圧が篭った視線。
結斗の後ろを恐る恐る見ると……
「………結斗。またあの男と話してるね」
「ゆいくんのあんな嬉しそうな顔。私たち以外で見たの初めてだよね〜」
「まあ結斗に新しい友達ができたのは喜ばしいことじゃないか」
「そうだねー。男友達だしねぇー」
「そうだ。男友達……優しく見守ろうじゃないか」
ほんわかした会話なはずなのに、顔が全然笑ってない。結斗は後ろからの視線に全く気づいていないようだ。
「あっ、もうホームルームになっちゃうね。またね、雄二くん」
「あ、ああ」
美人姉妹の近い席に戻った。すぐさま2人から話しかけられている。
うん、これでいい。結斗の友達としていながらも美人姉妹とは関わらない。
これが俺の新しいポジションだ。
4限目終了の知らせるチャイムが鳴り、凝った肩をほぐしていると、
「雄二くんお昼食べよっ!」
結斗がお弁当袋を持って俺の席にきた。
「俺とでいいのか?」
「当たり前だよ、友達だもんっ!」
それは嬉しいのだが……
「美人姉妹……じゃなくて、澄乃姉妹と一緒に食べなくていいのか? 仲が良さそうに見えるけど……」
「まひろちゃんとりいなちゃんには雄二くんと食べてくるね、って言ってきた!」
「………」
……本当に大丈夫なのか? さすがに昼まで俺に結斗を取られて美人姉妹も黙っていないんじゃ……。
気にしすぎか。大体、俺が結斗といようと美人姉妹はどうも思わないだろう。女の子には嫉妬しても男には何も思わないヤンデレ姉妹のはず。
教室を見渡すと、美人姉妹の姿がない。食堂にでも行ったのだろうか。
「一緒に食べるか」
「うんっ。雄二くんもお弁当?」
「そうだ」
雲雀が作ってくれた弁当を取り出す。
今朝、チラッと台所を見れば、雲雀がお重箱におかずを入れようとして慌てて止めに入った。あと、トリュフやアワビなど高級食材を使うこともやめてもらった。
外見は笠島雄二でも中身は、どこにでもいる平凡な男。そんなお重箱とか高級食材とか食べ慣れないし、学園ではできるだけ目立たないでいきたい。まあ、顔面の時点で無理だけど。
「僕もお弁当なんだぁ〜。あっ、お茶買ってきてもいいかな?」
「おお、行ってこい。ちゃんと待ってるからゆっくりでいいからな。怪我すんなよ」
「僕はそんなにドジじゃないよー! じゃ行ってくるっ」
結斗が教室を出た後、ホッと一息。
友達とご飯……平穏な学園生活を送れているなぁ。
「ちょっと君」
「ん? え」
ほんわかした顔で見上げれば、美人姉妹の姉、まひろがいた。
「ちょっと私とお話してくれないかな?」
「え、え………」