間章
いつしかただの肉塊は、本当に肉の塊になっていた。
「しばらく、ハンバーグは食べられないかも……」
目の前の物体を見て、吐き気が込み上げてくる。
突撃槍で跳ね飛ばし、吹き飛ばされるより早く先回りして、ガントレットで殴る。それを何度も繰り返した。
最初の内はすぐに再生される脳髄だったが、いつしかそれがゆっくりになって行った。
客観的には遅くなったのではなく、ゆかが早くなり過ぎたのだが、本人はまだわかっていない。
薔薇侯爵は因果律を組み替え自分への攻撃を無効化する。しかし因果を捻じ曲げるよりも早く、ゆかは攻撃を与えた。
速さという概念ではない因果の概念をすら跳躍し、ただ”当てた”のだ。
どっと疲労感がのしかかって来た。
最初に魔法が途切れ、同時に魔装具が消えた。
そのまま冷たい床に座り込むと、肩で大きく呼吸した。
丸一日走り通してもここまでの疲労はない。それこそ先日の葉月の特訓ですら、ここまで体力が刈り取られる事はなかった。
ついに体を支えきれずに、その場に寝ころんだ。
ここで敵を討ったからといって、それこそ父をどうかしようとも、母が回復するわけではない。
だが、無性に会いに行きたくなった。
「そうだ、お見舞い……。もう、ずいぶん行ってなかったなぁ」
これが終わったら母に会いに行こう。折れた心はそう簡単には治らないだろう。それでも、全身全霊をかけて、向き合っていこう。すべてと対峙していこう。
そう自分に誓った。




