間章
「だめ、勝てないよ。逃げてよミレイ……」
ぺたんと座り込んで手をついたヴィエダーが、泣きながらそうせがむ。
「ちょっと……」
その声を聞いた薫が、コメカミに青筋を浮かべて立ち上がった。
「事情は知らないけど、あなたが美鈴を戦わせているんでしょう?」
怒気をはらんだ声に、ただでさえ小さな肩を竦めて脅えて見せた。
「ヴィエダーちゃんは、戦わないの?」
ヴィエダーの隣にしゃがみこんだゆかは、複雑な声音でそう尋ねた。力なく首を横に振ったのを見て、薫がその襟首を掴む。
「なんで?」
迫力に負けたヴィエダーは、思わず顔の前に手をかざして謝っていた。
「謝罪はいらない。あなたが戦えないなら、それはそれで仕方ない」
おそるおそる目を開けたヴィエダーは、その顔を覗きこむ二人の顔を見て目を瞠った。
「だったら、私に力をよこしなさい」
「アタシが、みーちゃんを助けるから!」
その言葉に、我が耳を疑った。
「で、でも……」
「早くしないと、絞め殺すわよ?」
襟首を掴む手が、すっと首に当てられた。ヴィエダーは確かな恐怖に震えながら、以前美鈴に施したように儀式を執り行った。
「な、名前。君たちの力に名前をつけて……」
順調に執り行われた儀式は最終段階に入り、二人は胸に確かな熱を感じていた。
「私を許して認めてください」
「強敵を討つ名誉を求める」
自然とその言葉が口から出ていた。そして彼女達の胸に名が刻まれる。
「ビッテゲベン・ズィミア・エイン・ブッセウンド・ヒルフロス」
ゆかを見る。頷き、その体に変化が生まれた。
「ウンミット・インメル・ゲヴィネン・ヘンリッヒケント」
薫を見て力尽き、ヴィエダーは気絶した。




