放課後の出会い
翌日
いつも通りのスーツみたいな私服に着替え、スカーフを巻、なぜかマントを肩にかけ学園に行く。俺は朝に弱い方なので、寝ぼけたまま登校する道を進んでいて、気づいたことがある。
他生徒の服装が、結構落ち着いたものだった。
なんというか、自分だけ一張羅用意して、浮いてる感じだ。みんな、一度はこちらを見るが、クラウディア家の人間だと知ると、視線を逸らす。そして、笑顔で振り向きお世辞を言ってくる。
こうしてみると、クラウディア家の影響力が怖くなる。
「うん、、これは選択をミスったな」
朝から憂鬱な気分になりながら登校していると、いきなり周りが騒がしなった。みんなが一応にため息や歓声を上げる方を見ると、第一王子とその取り巻きが登校しているのが見えた。
「見て、第一王子のハリス様よ?相変わらず、素敵な方だわぁ~」
そう話していた女学生も、ハリスに笑顔を向けられ倒れていく。
なんというイケメン力。我ながら嫉妬すら起きないほどの素晴らしいさわやかな笑みだ。
いや~まぶしい!
実にまぶしく、バラ色の世界だ。俺がいる、灰色の日常とは全く違うな。
だがこれは日常になりつつあることを俺は知っている。
毎朝毎朝の笑顔を振りまき続ける王子に敬意を払い、俺は一足先に教室に行く。
「それでは、教科書の・・・」
ちょっと禿げたおじさんの授業が始まり、いつの間にか昼休みに。
授業初日なのに、何故か友達が出来ている周りに置いていかれるのがつらいので、上の部屋に部室として使われていない部屋があるので、そこで一人食べる。
正確には執事も一緒だ。
基本、学園の規則として、泥土や使用人、執事を連れ歩くことは禁止事項である。
この男、マロンは、無自覚に規則を破り、誰も咎めなかったのだ。故に、彼は気が付かないまま禁止事項を侵し、知らない間に不良へと進化していた。
そんなマロンは、昼の穏やかな温かさの中、一人空き教室で昼寝をしていた。
ここで、空き教室の説明をしておこう。
天井には天窓と小さな庭が付いていて、、そこには白いベンチ、椅子が置いてあり、まったりとした空気が流れていた。
その場所は、空き教室の域を超えているのだが、マロンは教師陣にそう言われ、愚直に信じているのだ。
その教室で今日も今日とて昼寝をしていたマロンだった。
その教室に、入る人影が一つあった。
「マロン、こんなとこで寝てるんだ」
その人影は、マロンのよく知る人物だった。
マロンの寝顔を眺め、しばらくしてどこかへ行ってしまった。
今日もマロンは穏やかな昼寝を満喫する。
やがて、昼休みが終わり、放課後になり、マロンはまたも空き教室に足を運んでいた。
今日は、執事のエリーと一緒に、駒遊びをしていた。
将棋によく似た、と言うか自分が作らせたゲームである。
自分の領地では、この他にも様々なゲームがある。
我が家の稼業は商業で、主に木製製品や焼き物、お菓子などを生産している。
過去の遺物と言うか、名残で、家の領には何でもあった。
砂糖大根やサトウキビ、芋に樹海に森林、海に湖。
其れこそ、色とりどりだ。
そんなわけで、この国のほとんどの製品ブランドは我が領から発信されている。
どこぞの半島のようにブランドだけ残るのはあまり好ましくないが、今のところ大丈夫そうだ。
放課後の遊戯も終わり、自宅に帰る。
本当に何もない。灰色青春まっしぐらの予感である。
とりあえず、俺は余りある金銭で何かしてみようと思いつく。
「そうだ。王都に土地を買ってアパートを作ろう」
それは、現代の価値観と相場を丸々取り入れた、この世界では荒唐無稽な物だった。
無論、このことにマロン自身が気付くわけがなく、巨額の投資がここに決まってしまった。