本当の気持ち
12歳のとき、俺は気が付いてしまった。
俺は、恋をしてるんじゃないかと。
それは、お茶会をするようになって交流するようになった時だった。
それはもう、幼馴染と言っても過言では無いほどだと思っていた。
そんなある時、彼女が朝日を見たいと言った。
日が昇った頃の朝日ではなく、早朝の日の入りを見たいと言ってきた。
その時の俺は既に公爵だったので、中々自由な外出は出来なかった。だが、その時のリリスはやけに見たがっていた。
この時既に王命で王子の婚約者になっていたのだ。
最近は、簡単にクラウディア家の屋敷には来れない。
なんせ、子供でも貴族の男女に違いないのだ。変な不貞を噂されてはいけない。
この時はホールマン侯爵に用事があり、たまたま侯爵の屋敷に泊まっていた。
そして、俺はこっそりと屋敷を抜け出し、二人で丘の上から朝日を見た。
輝くショートの金髪に、朝日がさしその笑顔と共に輝いていた。
それはまるで、幻想の様に淡く輝き、彼女のまわりを照らしていた。
そして気を失い、気がつけば、どこかの小屋にいた。
そこは山の中で、山賊たちのアジトだったようだ。
その時は本当に、焦り、戸惑った。
何とか脱出し、森の中をリリスを守りながら進んでいった。
俺は、子供のころから物作りが好きだったので、狩った獲物の一部を首飾り型のマジックアイテムにしてリリスにあげたことも有った。
その出来事で、俺は気づいた。
やれないだの、無理だのを言っている時間は既に過ぎてしまっていた。
一度死んだその上でこの十数年、俺はどうしようもなく未熟だった。
そして、土魔法で黒ずくめ達を拘束していた。
事件はその時に解決し、リリスを侯爵家に送り届けた。
その後は穏やかな時間が過ぎ、やがて俺が今周りにいる人達、俺に勇気や社会のノウハウを教えてくれたホールマン侯爵達には幸せでいてほしいと思った。
我儘だろう。
そしてあまりにも傲慢な考えであり、偽善的だった。
それでも、俺はそう願った。
と思っては見たものの、中々人の心とは替えがたいもので、行動だけはその決意に基づいて動くのに、日々の努力や生活態度、思想には何ら変化を与えていなかった。
それこそが、マロンと言う人物と言ったところだろう。
主人公故に隠されていた新事実。
彼はとんでもなく怠け者で、怖がりだ。
その上、、
長身でも無く、イケメンでもなかった。
普通のメンズなのだ。
故に、今現在でも単純な力ではリリスに勝らない。
そんな彼が、積極的に学園の事情に首を突っ込む訳がなく。
「マロン様、ご入学おめでとうございます。貴方様のご入学を心よりお待ちしておりました」
目の前では十人の大人が頭を下げ、本当に嬉しそうにそういった。
事実、彼等はマロンの入学を心待ちにしていた。
彼等の本当の主であり仰ぐべき血筋の正当な後継者。
彼らにとって、クラウディア家は未だに君主であり、忠誠を尽くすべき家だと思っている。
その訳は、500年ほど前のクーデターで彼らの領地や彼らを守ったのは、クラウディア家だったからだ。
以後、後世に渡る忠誠を誓っていた。
何故か、今までその思想に反対する者はいなかったそうだ。
しかし、当の本人は知ったこっちゃないと。
「学園では他生徒と同じで良いですから」
と、逆に頭を下げていた。
それでも、そう言われればやるのが彼らであり、本当に、不思議なくらい純粋な忠誠を誓っていた。
「分かりました。我々分家一同、精一杯同程度の扱いをさせていただきます!」
「「「させていただきます!!!」」」
この調子であった。
こうしてマロンは普通の日常を送る事に成功した。
余談:
幼少期にある女の子と、誘拐されたことがある。その際も、リリスと同じような対応をし、リリス同様マジックアイテムの首飾りを貰っている。