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転生公爵は土属性  作者: 梅雨川
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謝罪

当主になり、二日目を迎えた。

書類が増えた。


領内の偵察結果に税収区分、領土計測図に結界の状況。


この世界、魔法にも種類があり、結界などと言う魔法が存在する。


前提として、魔法とは万人が扱えるものではなく、稀に使える者がいるだけだ。


血筋も、努力も、産れも関係なく、無差別に使えるものが選抜される。


ただ、魔法が使える親から、魔法が使える子供が生まれるのはよくある。


そのためか、魔法による技術革新はその家で独占されることが多いい。それでも、一部では魔導列車などと言う物も存在するので、科学と魔術半々と言ったところなのだろう。

 

それはさておき、この世界の領地の統治には結界が用いられる。

この結界は、便利なことに外からの魔物の攻撃や、魔法による攻撃を防いでくれる。

だが欠点は、魔法的要因の攻撃以外は弾かない。


そも、人間を通す故に戦争には役立たない。

その場合はまた別の結界を使わなければならない。


そして、最も厄介なのは、派閥関係だ。

何もしない貴族にしては、唯一行ってきた事業。その名も、クラウディア家である。この、クラウディア家とは、クラウディアに連なる貴族、商会などの派閥をまとめてそう呼んでいる。


他にも、王国には、国王派閥、第一王子派閥、第二王子派閥、第三王子派閥、第一王女派閥、そして魔術師派閥、貴族派閥、レルゲン公爵派閥、マルコ公爵派閥、トリスタン公爵派閥、カミック公爵派閥がある。


現在、この派閥の中での優劣はついていない。そして、クラウディア家と呼ばれる派閥は。貴族は派閥になっている。理由は、数代前の当主が、貴族最高とか言って、貴族派閥に入ったそうだ。

当時、国王の力も強く、民衆の支持が厚かった国王派閥、そこに、最弱の貴族派閥があったのだが、この一件で並び立ってしまった。

理由は簡単。


クラウディア家の分家並びにクラウディアに連なる派閥が全てくっついてきたからだ。これにより、元々貴族はを名乗っていた家は既に派閥を離脱し、他の派閥へと下っている。元々力のかった家であるゆえに、当然のことだと言える。

故に、派閥に関しては、いろいろと調整を取らなければならない。


更に、もっと悪いことに、最近活動を活発化させたせいで、各地と連携を取ったせいか、今日にも会合がある。


と言うことで、結構やることが多くなった。


思った以上にペンを持つ時間が増えた。


10歳なので、もっと難しいところは屋敷の人に手伝ってもらっている。


5年後には王立ドリビアン学園に通わなくてはならないので、その手配も自分ですることになった。

ドリアン王立のドリビアン学園とは、貴族の子息令嬢、金持ちの子息令嬢が通う、中高育成学校だ。

期間は何と4年。

この世界では、貴族の子供や大商家の子供は15歳から学園に通わなくてはならない。


そんなわけで、今日も忙しく働いていると、部屋にやってくる者がいた。


「マロン様、本日のお手紙です」


クラウディア家に届く手紙は舞踏会、お茶会、つまり社交界へのお誘いだ。


未だ子供という理由で、ほとんどを断ってきたが、今回の手紙は一味違った。


「ドリアン王家の、第一王女サラ・エインズ・ドリアン様からのお手紙です。我が領にお越しになる予定だそうです」


現王家の第一王女は、俺と変わらぬ十歳児、今は王城で教育を受けている期間だが。


「王家?何故だ?」


エリーに率直に聞く。


「すでに今月分の納税は終わらせています。別件かと」


「ふむ。別件か・・・」

別件ね。

なによ。別件って。

機能投手になったばかりだから分からんて。


「それと、ホールマン侯爵が懇談の申し出と、公文書を受け取っております」


「ホールマン侯爵?隣の有力当主が?なんで?」


「はい、この度、マロン様のご両親が行方不明になられたことに関して、ご相談があるそうです」


本当に何のようだろうか。

身に覚えがないのだが。


「応接間に当してくれ」


「畏まりました」


応接間で会ったホールマン侯爵は、髭を生やしたダンディーな親父だった。

隣には同い年くらいの女の子がお行儀よく座っていた。


「クラウディア公爵閣下、この度は、我が領での事故、誠に申し訳ありません。先の一件のお詫びに付き、我が領地の一部を割譲しにまいりました。どうか、お受け取り下さい」


後ろにいた執事から、ある書面を渡される。

そこには、クラウディア家の領地と接するところからとなり町の一つまで領地を明け渡す旨が書かれたものだった。


すでに、ホールマン侯爵のサインと捺印を押され、残る場所に俺の捺印とサインを押すだけ。


「これでいいのかい?」


正直、領地がこれ以上大きくなっても、と言う感じがある。

王国全土の地図に領地区分された地図を見たとき、あまりの大きさに驚いた。


隣のホールマン侯爵領も結構大きいが、それの三倍より大きいと思った。

そんな貴族を複数抱えてる王国って、どんだけでかいの。それ以前に、その王国一の領地って、実家ながら恐ろしい家だ。


「これでは足りませんか?」


本当に、本当に困ったように言われてしまった。

どうやら、意味を取り違われてしまったらしい。


「いえ、何でないですよ」


半ば投げやりにサインし、捺印を押す。

これで、今回の事件に関して、ホールマン侯爵は無罪放免となった。


っていうか、謝罪に領地を渡させるクラウディア家って何なの。


「この度は、誠に申し訳ございませんでした」


深々と頭を下るホールマン侯爵。

思ったのだが、10歳の子供に頭を簡単に下げていいものなのだろうか。


「それで、別件の会談の方なのですが・・・」


ああ、そう言えば、ホールマン侯爵だったね。今日会談を予定していたのは。


「わかっていますよ。場所を移しましょう」


変わってリビング。


何ともまあ、リビングにしては広すぎるこの部屋。

中で何が起こっても外漏れない、事はない。ちゃんと大声を挙げれば外に聞こえ、外からこじ開けも可能。しかし、普通の声は聞こえないという、まさに金を尽くした大部屋だった。なんせ、周りには本だらけだ。


「して、ご子息との親睦会、いえ、閣下との親睦会の事なのですが・・・」


ホールマン侯爵は既にこちらが全てを把握していると思っているようだ。

ふっ、困るな、過大評価するのは。


背中が汗でびっしょりなのがわかる。これなら、もう少し薄着にしておけばよかった。これでは、すぐ乾かないぞ。


「も、勿論わかっております。場所は、そちらのお宅でいかがでしょうか」


ここは、こちらから要求を出して、それは難しい、じゃあもう一回すり合わせをしよう、みたいな流れにしたい。


「ええ、それで構いません。親睦会、と言っても、閣下と娘の二人ですから」


えええ、何それ、もうちょっと、派閥で集まる大きいものを予想していたんだが。それでは肩透かしだ。


「そ、そうですか、では、1週間後にでも向かわせていただきます」


「え!一週間後ですか!よろしいんですか?」


む?

何だこの反応。ひょっとして、なりたて若僧の私を試している?すぐには行動できないだろうって


その手には乗らんぞ!


「ええ。勿論。何ら、今日、ともい参らせていただけるなら、すぐにでも」


「ほ、本当ですか!いやあ、さすがクラウディア公爵だ。当主交代の後にこんなにすぐに動けるなんて」


ん?当主交代後に?もしかして、私はとんでもない勘違いをしたのでは?


「しかし、今日からはさすがに申し訳が立ちません。何せ、今日はお詫びに参ったのですから。是非、一週間後にから起こしください」


ホールマン侯爵は、本気で心配したうえでの話だった。

ここからホールマン侯爵が暮らす領都まで、急いで丁度一週間。


その後は、しきりに褒められ、謝られ、結局御令嬢と話す事もなく、帰っていった。


「エリー、すまないが私は急病に伏せた。許せ」


「畏まりました。おい、誰か、医者を呼べ」


冗談に乗るエリーにより、本当に急病に伏せたことになり、訪問は一月後になった。

おっと、罪悪感で、本当に腹痛が。


さて、今回の謝罪の件だが。

貰った領地は、大きな町が一つの辺境、クラウディア家の物になったからには、調査し、問題点を探り、変革しなければならない。


と言っても、そこに住んでいるのは、黒髪赤目の典型的なクラウディア家領民と同じため、あまり衝突がないと思うが。


これからのことを思うと、気が重くなる。


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