契約
エルス子爵が着た翌日、俺はいつも通りに登校する。
「ふむふむ、なるほど」
昨日提出された、設計図を見る。
確かに、この方が良いかもしれない。
魔法の力によるセキュリティー整備。
生態を感知する波動完感知動扉に自分の魔力の波動を記録しておく。
そのことにより、登録者にのみ扉が開く。
その他にも、ポンプにも魔道具を使用し、スペースを大幅に確保する。
「これはこれは、中々いい案だ」
そうして席に着き座っていると、一人の青年が近づいてきた。
「クラウディア卿、この度は誠にありがとうございます」
「ん?誰だっけ?」
「エルス子爵家の長男、モリスです」
その美青年は、優雅にお辞儀をする。
「私は、エルス子爵家長男のモリス・エルスでございます。以後お見知りおきを」
教室は静まり帰っていた。
「今後、閣下の付き人をさせていただきます」
その声とともに、教室は喧騒を取り戻した。
「クラウディア家がエルスを取り込んだって、本当だったんだ」
「ついに動いたか」
「おいおい、こんな時の限って」
「とにかく、親父に伝えないと」
「俺もだ」
クラウディア家が立場的にも地理的にも派閥的にも中立だったのは過去の事。
すでに、クラウディア家の保護下に入っている。昨日の今日ですでに駐留軍の派遣が行われ、一部軍事兵器の輸送も行われている。
「なんか騒がしいな」
「それはそうでしょう。なんせ、クラウディア家が数百年ぶりに重い腰を上げたのですから」
数百年ぶりに重い腰を?
「まあ、そんなに騒ぐことなのか?」
「それはそうでしょう、最も、クラウディア家では特に問題ないようですが」
事実、分家や家臣から特に異議申し立てがあったわけではない。
「まあ、なるようになるだろ」
分からんが。
こうして、水面下で派閥争いが始まった。
訳ではなかった。