他の興味
先立って、まず建築士とデザイナーを呼ぶことにする。
アパート言ってもここは中世前期の真っ最中。
暫くはこの世界観が続くであろう昨今で、無機質なコンクリの箱に住みたいと思う変人は居るまい。
故に、デザイン性かつ機能性に富んだものにした方が万人受けするのは明白。かつ、家の事業で扱う製品をオプションで置けば新たなニーズが誕生し、そこに物を投入していけばいい。
こんなに荒い金の使い方をしたのは初めてである。
しかし、思い立ったが吉日。
行動は直ちに起こすべきなのだ。
と立派なことは言ってるものの、マリーにデザイナー探しと機材集めを任せて、後はそのままだ。
そもそも、王家がクラウディア家に王都の土地を売るかどうかすら怪しいのだ。
期待薄で待つとしよう。
四日後。
「え、良いの?」
「はい、定価の三倍で買い、合意に至りました。その土地の地下、上空の開発はすべて当家の所有と言うことです」
正直、本当は無理だと思っていた。
俺の考えるアパートは、ほぼマンションだった。周りを公園で囲んで、地上三階の大型の建物を内側に玄関を置き、外側には窓しか見えないようにする、そう言う作りだ。
それには大きな土地もいるし、周りの景観を損なうこともあり得るのだ。
っていうか、これ将来的に電気や水道が通った場合どうすんだろう。
多分そんなことは考えていないだろう。
まあいい、出だしは上々だ。
後は、開発するだけ。
「と言うことで、マリー、後は頼めるか?別にやんなくてもいいけど」
「すぐにとりかかります」
と言う事だ。
まあ、できて二年、遅くて三年かかるだろう。
のんびり気長に待つとしよう。
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生まれてこの方パーティーに参加していなかった俺にも、ついに参加しなければならない時が来たようだ。
今回、王子が主催する、王宮で開催される夜間のパーティーに招待された。
礼儀的にも、立場的にも断れない。
故に、参加することになったのだが。
さてどうしたものか、エリーに聞いても、いつも通り、使用人に聞いてもいつも通りに、の一点張りだ。
「なあ、エリー、アパートの計画は進んでいるか?」
「はい、順調に進んでいます。マロン様が丈夫で機能性のあるもの、とおっしゃったので、当家の領から取り寄せた石と当家の商会の技術を生かし生産したコンクリートを使用し、食器や家具類などはすべて、当家のブランドで統一しております」
何と、ここに高級アパート極まれりな計画が遂行されていた。
「ふ~ん、家の領の名産使ってるんだったら、一部屋キープしておいた方が良いかな」
「畏まりました」
クラウディア家は事、雑貨類、伝統工芸品など、加工技術にたけており、海に面していることを利用し、港を整備し、海外との交流や流通も行いつつ、税金だけで多大な利益を生み出している。その上、クラウディア家でも開運業を行っているため、まさに、海の商売だけで並みの貴族以上の利益を得ている。
また、広い領内には、貴重な木材や石材、それらを加工する技術が備わっているため、それらだけでも王族以上の利益を得ている。
これ等は、長い歴史を持つクラウディア家が、各々の分野を専門的に伸ばしていきできた副産物である。
そもそも、クラウディア家の領だけでも一つの国以上の利益を得ている。
先ずもって、クラウディア家は元王都である。それ故に、世界の料理や食料などを得られるよう流通を発展させてきたものだった。
そんなことを考えていると、王宮の門の目の前に馬車が止まり、鎧を着た衛兵が扉を開けてくれる。
エリーが招待状を見せ、紋章を見せる。
「クラウディア卿、ようこそおいでくださいました」
歓迎の言葉を受け、そのまま中に入っていく。
エリーはここまでだ。
中に入れば、すでにパーティーの準備が整った後の、ほとんど誰もいない時間帯だった。
どうやら、まだ集まっているのは少数のようだ。
近くにあった席に座り、鶏肉を食べる。
お腹に何か入れないと、お腹がすいてしまう。
「さて、どうしたものか」
手持ち無沙汰にしていると、近づく一人の男がいた。
「クラウディア公爵閣下、お久しぶりでございます」
話しかけてきたのは、ホールマン侯爵だった。
「ご体調はいかがでしょうか?」
「そうだね、いつもと変わらないかな」
「そうですか。最近娘と交流などは行っているのですか?」
「いやいや、中々会う事がなくてね」
「左様ですか。今後とも、娘ともども良しなに」
「こちらもそう思っていますよ」
この後は他愛のない話をして、その後も何人かの貴族と話しをした後、国王とその家族が入ってきた。
「皆、今宵のパーティーは楽しんでおるか?今夜の宵では、我が息子三人と、娘も参加する。そしてなんと、今日には、皇太子になった我が息子、サラ・エインズ・ドリスのお披露目も含んでおる。どうか楽しんでいってくれ」
拍手とともに、国王陛下の話は終わった。
この後は、ただひたすら受け答えをするだけの時間。
ここで、王家について話しておこう。
まず、国王陛下のお隣に座る妃様は、エリナ・シェイス・ドリス。
確か、隣国の王女だったかな。そして、その隣に第一王女のグランツ・エインズ・ドリス。
反対側には、第一王子のローランド・エインズ・ドリス、第二王子のエドワード・エインズ・ドリス。
そして、数年前に家の領の視察を行った、サラ・エインズ・ドリスだ。
さてさて、クラウディア家にとっては敵であり、反乱の現況なのだが、すでに水に流した話。
そろそろ挨拶する人が少なくなってきたので、席に座り食事をとろうと思う。
なんせ、挨拶に来るのはほとんど分家だからな。
クラウディア家の団結は昔から知られていることなので、特に何も言われないというこの状況。
そうして、ゆっくりしていると、会場の端で何やら騒ぎが起きているようだ。
「貴様、こちらの方は第二王子のエドワード殿下だぞ!そこをどけ!」
「貴様こそ誰に物を申している。この方はグランツ殿下である」
見たところ、大人は参加しておらず、子供だけの小競り合いのようだ。
間に挟まれているのは、第三王子だろう。
「・・・・・・・帰るか」
どうせ、家の庇護なんて誰も受けたくないだろうし、参加させる気もないだろう。
私は、席を立ち、会場の出口に向かう。
すると、周りにいた分家の者達も後ろに付いてくる。
なんか、王子たちよりもついてくる人数は多いのだが。
それにこちらは、跡取りや子息、令嬢などではなく、本物の貴族だ。
威圧感が違う。
そうして歩いていくと、自然と喧嘩の渦中に行きつくわけで。
そのまま突っ切って出て行こうと、その場を押し切る。
「君、どいてくれ」
端にいた男の子に声を掛ける。
「なんだ貴様っ!?これは失礼しました」
こちらに振り向いた男子は、そのまま場所を開けた。
そして次々に場所が空き、気が付けば中心部分に食い込んでいた。
「なっ!クラウディア家が何の用だ!」
我が家は良く分家で固まって、中の良い貴族も一緒に来ることがあるので、我が家を筆頭とした派閥は、クラウディア家と呼ばれている。
「いやいや、特に用はない。そこを通してさえくれれば」
「君たち、こんな公然の場で喧嘩をしてはいけない。よそでやりなさい」
隣に居た分家の、クレイマン侯爵がたしなめるように言う。
「そうだ。ここでは静かにパーティーに参加した方が良い」
続いて反対側にいた分家の、リーゼルトン侯爵が口をはさむ。
「む?何事だ」
そして、人の海を割って入ってきたのは、国王陛下だった。
王子たちが一気におとなしくなった。
「いえ、何でもありません」
「はい、少し弟とじゃれあっていただけです」
「ふむ、そうか。しかし、次からはもう少し静かにやりなさい。ところで、そちらの者達は?」
「私は何も、ただ彼らが割って入って来ただけです」
第一王子の何気ない発言に国王陛下がうねりをあげる。
「ほぉ、クラウディア家は此度の王子たちに興味があるのかな?」
国王陛下の目線がまっすぐ俺に来る。
「私は何も、ただ、この度のお話は少々度が過ぎていたかと」
「まあ、確かにな。この場は争う場ではない。パーティの場だ。三人とも、今日はここまでだ」
「「「はい」」」
こうして、波乱は過ぎ去った。
誤字の報告、ありがとうございます。
これからも、書いてほしい内容や展開がありましたら、ご提案、お願いします。