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転生公爵は土属性  作者: 梅雨川
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降臨

気が付いたら赤ちゃんだった。


最初の光景は、数人の人間に囲まれているところから始まった。

一人は、軍服を着た、若い男と、黒髪の女性に見つめられ、十歳ほどの子供に見下ろされていた。

やがて、女性が手を伸ばしてきて、俺を持ち上げる。

その感覚はまるで、誰かに抱き上げられているようだった。

途端に恐怖を覚え、声を上げる。


「うーーっうーーーっ」


その時、俺はさらなる恐怖に会った。俺は普通に声を挙げたつもりが、赤子の様な鳴き声しか聞こえてこなかった。明らかにひとの言葉ではない。

いや、正確には聞こえる音は人のそれと同じなのだが、言葉ではなかった。

もう一度話してみる。


「うー?」


本当にしゃべれなくなってしまったらしい。

まず、そもそもここはどこだ?と言う疑問に流れる。

つい数舜までは、会社のデスクで仕事をしていた。それとこの光景には何ら脈絡がない。

なんだ、なんなんだ、この状況。さっきまで仕事をしていたら、いつの間にか赤子になっていた。怖すぎる。おいおい、困るよ。誰か助けてくれよ!この状況を飲み込める奴が居たら、ここを変わってほしいレベルだ!


とにかく、俺は赤ちゃんになったらしい。


気付けば、暗い部屋に一人寝ていた。

夜をこんなに怖く感じたのは、いつぶりだろうか。


切に思う。

どうして、こんなことになってしまったのかと。


やがて再び寝てしまった。


それからそのくだりが十回ほど繰り返した後、ようやく思考を始めた。


今は昼過ぎ頃だと思われる。。

あおむけに寝転がる体制をしていて、視界に映るのは恐ろしく高い天井だけだ。天井には、様々な絵や、模様が織りなす、芸術があった


起き上がるように手足を使ってみるが、中々起き上がれない。

先程から体が妙に重たく感じる。


体を動かす度に思ってしまう。早く、家に帰りたいと。

俺は、悪夢を見ているとさえ思ってしまう。

しかし、寝ている布団、着ている衣を一つとってもどれも現実味を帯びるほどに質感が指先を伝って感じられる。ここまでくれば、俺はここが現実だと知る。とすると、問題は、ここがどこなのかだ。地球のどか、あるいは、何かのアトラクション。

もしくは、異世界転生。


これは、俺が一番に認めたくない物だ。ラノベや漫画の無双物と違い、現実は只々怖いだけだった。本気で家に、はては実家に帰りたくなるほどに怖かった。


思考停止期間が終わり、少しづつ頭を働かせている。とにかく、現状を確認しておこうと、周りを見る。

中々動かない体をもぞもぞ動かしていると、誰かが入ってくるのが音でわかった。

靴の音が近づき、その者の正体が明らかになる。


その人は、現代のオシャンティーなメイド服とは違い、地味で、裾が細いスカートのメイド服を着た老齢の女性だった。


女性は、こちらを確認すると、おむつを交換した。


「あらら、起きていらしたんですか?今、おむつを替えますからね」


その後に、俺の両親らしき美男美女が部屋に入ってきた。


「あらマロン、起きていたのね。お母さんとお父さんよ」


恐ろしく美人な人が、俺に話しかけてくる。


「アウアウアウ」


応答しようにも、しようがない。

しかし、普通に聞き取れることから日本語であることがわかる。


「おお!息子よ、こちらにおいで」


美男に抱き起され、その後ろにある鏡で自信を確認。


やはりと言うか、なんというか、己の姿は、黒髪の赤目と言う、中二チックな赤子に生まれ変わっていた。

そして、同時に突き付けられた事実に忠実に従うのならば、俺は、この赤子の体に転生したのだと。


やがて、抗いきれない眠気が襲ってきた。

明らかに夢では感じられない眠気。


取り敢えず今は眠いので、眠るとしよう。

次の日から、情報収集に励むこととなった。


そして、分かったことと言えば、まず、この世界は地球ではない。なぜならば、電気がない。

これは、電気がなく、つけられないとかではなく、単純に電化製品がないことから見てとれる。

もし、地球だとしても、これほど大きな屋敷を持つ一家が電気製品を買えないだろうか?答えは否である。

そんなこと言ったら、俺ん全での暮らしは21世紀に戻っている。


次に、この屋敷についてたが、かなり大きい。

すでに階が三つ以上あることを確認しているし、窓からは大繁栄を極めた都市が広がっている。と言っても、高層ビルやマンションが並び立つのではなく、かなり大きい時計塔や、四階ほどの建物が見える。これは、建築において高度な技術を持っていることを意味する。


そして、最後にこの家の苗字、これはクラウディアと言うらしい。公爵家の最大勢力のようで、その名は王国だけでなく、大陸でも通じるそうだ。肝心の娯楽について、トランプやチェスは普通に存在するようだ。しかし、この地域、結構手狭だ。まるで、イギリスに来たかのような既視感を覚える。


さて、未だ赤ちゃんである俺は、まずはゆっくりと休息をとるとする。

床には一面に絨毯が敷かれているのは良いが、留め具の金属にいつも困らせられる。四足歩行で会う臭いにちょっと邪魔だ。


言語に関しては、いまだにうまく発音できない。

そもそも、言語が日本語と言う事がちょっとおかしい気がする。


生まれて数か月が経ち、いよいよ離乳食となった。

既によちよち歩きを卒業した俺は、この屋敷を自由に歩き回っていた。


父は基本屋敷にいる。

たまに領地の視察に出ている。


母は、ずっと家にいる。

何故か知らんが、朝昼に必ずランニングをするのだが、これはこの世界では普通なのだろうか。


兄は、今は丁度学園の休みらしく、家で俺に構ってくれている。

トランプやチェスなどで遊んでいる。


異世界の滑り出しは順調と言えるだろう。

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