Swing by me
過去に書いた掌編です。ガラケー最先端だった時代のものなのでその辺はお察しください。
「ねぇおじいちゃ~ん」
「あぁ、なんだい美也ちゃん?」
春の朗らかな日差しの中、ベンチで隣りに座る孫の頭を撫でる。
「アタシもブランコ乗りたい」
「今はまだ乗ってる人がいるからね、もう少しだけ待っていなさい。美也はもう小学一年生なんだから、我慢できるだろ?」
「うん、でも――――――」
美也がチラリ、というかむしろギロリという擬音が似つかわしい視線を目の前に向ける。
「ブランコに乗ってるお兄ちゃん、中学生だよ?」
視線の先に、項垂れてブランコに揺られる男子学生の姿が映る。寂しげに、ゆやんゆよんと。
「………………おっきくなっても、ブランコに乗りたい時はあるんだよ。なんだったらお兄ちゃんのお隣で遊んだらどうだい?」
「やだよ! 知らない人だもん。おじいちゃん、どいてって言ってきてよ」
「ん~、でも公園はみんなのものだからね。美也ちゃんだってお友達とは、公園の道具をみんなと代わりばんこで使ってるだろう。お兄ちゃんを仲間外れにしちゃいけないなぁ」
「ん……うん、仲間外れよくない。学校の先生が言ってた」
「そうだね。ほら、あっちの砂場でみんな遊んでるよ? 行って混ぜてもらったらどうだい」
「じゃあちょっと行ってくる! …………勝手に帰んないでよ?」
「ハイハイ、気をつけてね」
手を振って孫を見送ると、自然と手持ち無沙汰になってしまう。脇に置いたハンドバッグから美也の好きな飴玉をひとつ取り出すと、ポコンと口に含んだ。
少しだけ公園全体に視線を巡らせ、最後に目の前でブランコに揺られる彼を見る。
「さて」
よっこらせ、と。最近は意識して掛け声でも出さないと立つのも座るのも辛い。
二つ一組で並ぶブランコのうち片方、俯く少年の隣まで来ると、わざと音を立ててそこに座った。
「やぁ、こんにちは」
「? はぁ、こんにちは」
声を掛けると、彼は怪訝な顔をしながら私を見上げる。
「随分と暗い顔をしているね、何か悩み事かい?」
「…………いえ、別に」
「ふむ、別にか。まぁおひとついかが?」
そう言って飴玉をバッグから取り出すと、ちょっと引き気味な少年に無理やり手渡す。
「私はハッカ飴のほうが好きなんだが、孫はどうも嫌いみたいでね。フルーツ味だが良かったかな」
「あの…………、僕になにか御用でしょうか?」
「あぁいやいや。用ってほどのものでもないんだが、ちょっと気になったものだから。ほら、君等は昨日もこの公園にいただろう?」
君等、とそう言うと。
今まで頑なに合わせようとしなかったであろう視線が、しっかりとかち合う。
「私、孫と毎日のようにここに来ているんでね。――――で、昨日は可愛いお嬢さんと一緒だったのに、今日は一人で塞ぎ込んでいるようだったから、気になってしまったんだよ」
「………………………………」
「ようするに年寄りの冷や水というか、この公園で見知ったのも何かの縁ってことで。よろしければちょっと雑談でもどうかな?」
「雑談、ですか」
「そう、雑談。ついでに青春の悩みでも吐き出してしまえば少しは気も晴れるかもしれないよ」
「………………いえ、初対面の方に話すことでもありませんし」
「ねぇおじいちゃん!」
振り向くとそこに、元気よく砂場へ駆けていったはずの美也がいて、はぁはぁと肩で息をしている。
「ん? どうかしたのかい美也ちゃん」
「アメ、ちょうだい。たくさん」
「お友達にあげるのかい?」
「うん、今日初めて一緒に遊ぶ子がいるの。だからみんなでお菓子食べて、お友達になってくる!」
「じゃあはい、仲良くしてらっしゃい」
飴玉を両手一杯にして元気に走っていく美也を見送ると、私はチラリと少年を見やる。瞬間、少年の口から微かに飴玉を転がす音が聞こえた。
「一緒のお菓子を食べればお友達、だそうだよ」
「――――――お孫さん、いい子ですね」
「はっはっは! あの子は素直なんだが、上の孫にはいつも振り回されているよ」
「…………昨日の僕ら、そんなに目立ってました?」
「そうだねぇ。なんというか、ベンチですごくいい雰囲気だったから。君たちの近くに座っていた男性もチラチラと気になる様子だったよ」
そう言うと、少年は真っ赤になり顔を手で覆った。
「あの女の子は恋人さんだろう? 喧嘩でもしたのかい」
「恋人――――に、なりたかったんです。昨日はあの場でその、告白をしてまして」
伏せた顔を上げて、やり切れなさそうな笑みで言った。
「で、振られちゃいました」
「そうなのか。でもそれは本当に振られたのかい? 彼女からはっきりと告白をお断りされたのかな」
「…………正直よくわかりません。でもあの時、僕の顔を見た瞬間、彼女は真っ赤な顔をしながら言ったんです。ごめん勘弁して、って。そう言って走り去って行きました。これは明らかにお断りの言葉じゃないですか」
「そう、かもしれないし、そうじゃないかもしれない。その台詞じゃあ拒絶と保留、両方の意味に聞こえるなぁ。諦めるのは時期尚早かと思うよ」
そうなんでしょうかと呟いたあと、彼はまた塞ぎこんでしまう。なんともネガティブ指向の強い少年だ。
「そうさね、君の好きな彼女はどんな性格の子なのかな? そんなとこから詰めていけば、もしかしたら答えに近いものが得られるかもしれない」
「彼女は――――僕の一つ年上で部活の先輩なんですけど、なんというかすごくハッキリとした性格の人、ですね」
先程までよりも少しは張のある声で、少年は語りだす。その顔にはうっすらとだが笑顔も浮かび、本当にあの子が好きなんだなと感じさせる。
「とにかく曖昧なのが大嫌いで、僕はいつも怒られてばかりです。なんとも気が強くてちょっとのことじゃ動じなくて、男子相手にだって言い負けたりしないし。姉御肌っていうのかな? ほかの部員たちの面倒見もいいんです。でも締めるとこはきちんとする人で、ミーティングでハッキリ受け答えをしないと本気で叱られちゃったり……。肝が座ってて、上級生相手でも平気で注意しちゃうんですよ。慣れない人はきつい性格って思ってしまうかもしれないけれど、それは先輩がすごく真面目なだけでそんなに怖い人じゃないんです。だって笑い方なんかとっても柔らかくって、品があるっていうのかな。不意にあの笑顔を向けられるとグッとくるというか、普段とのギャップにやられちゃうんでしょうか? たまに言動とかも可愛くなるし、仲良くなってくるとちょっと甘え癖みたいなとこも見せてきてそれがまたなんとも卑怯で――――――――あの、おじいさん聞いてます?」
「ん~。聞いてる聞いてる、いやなんとも凄い惚気話だ。おじいちゃんなんだかポカポカしてきちゃうね」
カチカチ、と忙しなく動かす指は止めずに生返事を返す。少年は私が携帯電話を弄りだしていたことに気付き、甘い繰り言をようやく止めてくれる。
「…………メール、打つの早いんですね」
「ははっ。上の孫が最近携帯を持ち始めたら、随分とメールに付き合わされる羽目になってね。あの子にはまだ早いって言ったんだけど息子が買い与えちゃって。お陰様で私のボケ防止にも役立っているが、っと」
送信ボタンを押すと、携帯電話をパチンと閉じて胸ポケットにしまう。改めて彼に向き直ると、自然と浮かぶ笑顔のまま尋ねる。
「さて、そこまであの子のことをよく知って好いてくれている君がだね、どうしてそう不安になるんだい?」
え? と声を漏らすと、少年はよくわからないと困惑を露わにする。なんとも正直に顔に出る子だ。
「君の言った通りの性格の子が、昨日は何故か曖昧な言葉を残して逃げ出した。君はこのことに疑問を抱かなかったのかい」
「確かに不思議には思いましたけど…………それは僕の告白に怯んでしまった、とか」
いやそれはないなぁ……、と独り言のように自己否定。なんか面白い子だな。
「そうだね、それはない。好きでもない相手ならハッキリと断るだろうし、好意を持っていれば飛び跳ねて喜ぶだろう」
「え、えぇ。あの」
「しかしそれをしなかった。そして君にはその理由がわからない。なら答えは簡単だよ、彼女は君にはわからない理由で逃げ出したんだ」
「…………それ、答えになってません。っていうかさっきから、あの」
「うん、君にとっては答えになっていないね。でも幸か不幸か、私には答えがわかっている」
「えっ! ほ、本当ですか!?」
「あぁ、もちろん」
数段トーンの跳ね上がった声を聞くと、私は待ってましたとばかりにいやらしい笑顔を浮かべて彼に言った。
「教えて欲しいかい?」
「お、教えてほしい、です…………」
怯みながらもそう答えるのを聞いて、私は胸ポケットにしまった携帯電話を再び取り出す。
「じゃ、メアド交換しようぜぃ」
「――――――はい?」
この十分間弱の会話の中でもっとも良い表情を引き出すことができて、私は少しばかりの満足感を覚える。他人にこういうポカンとした顔をさせるのはなんとも面白い。だけど、しようぜぃ、は無かったかもと少しだけ赤面……。
「君と私のアドレスを交換しようと言ったんだよ。別に悪い条件じゃないだろう?」
「いや、ちょっと言っていることの意味がよく」
「あ~私は別にどっちでも構わんのよ? 答えが解らなくてずっと公園で悶々とし続けるのは君だし。私は答え解ってて『スッキリ』してるけど!」
「おじいさん是非ぼくとメアド交換しましょう!!」
あ~、この子からかうの面白いわ。
少年はといえば「なんかこの感覚、すごく見に覚えが……」と頻りに首を傾げながらも携帯電話を取り出す。
端末を近づけ、ピロリ~ン♪ と赤外線通信が成功した音が響く。互いに交換したアドレスや登録名を確認していると、少年はえ? あれ? とまたも独り言を呟きだした。
「さて答え合わせ、と言いたいとこだが、その前にちょっと確認しておきたいんだ。君は昨日この公園で告白することを、前もって決めていたのかな?」
「え? い、いえ。昨日は先輩に誘われて初めてここに来て、ベンチに座ってお喋りしてて……。前からずっと告白しよう、しようって心に留めていたら、なんだかいい雰囲気にになっていったのでつい勢い余って、ですね」
「そうかい…………。君はけっこう思慮深そうだから、周りに人がいたら中々そんなことを言いそうにないと私は思ったんだが、いや会ったばかりの人に失礼な言葉だがね? とにかくそう感じたんだが」
すると彼は苦笑いしながらそれを肯定した。
「仰る通りです。でもあの、昨日だけじゃなく、僕は以前からかなりの回数で告白未遂をしてましてですね。それを踏まえて昨日は絶対に成功させようと思ったら、周りの人を気にする余裕もなくって…………」
「いやいや、そういう勢いはとても大事なことだよ。ただ今回は、相当にタイミングが悪かったんだ。昨日もう少し時間がズレていたり、場所が違えばきっと君の告白は成功していたさ」
「――――――なぜ、そう思うんです?」
私は少し間を置いたあと、また飴玉を口に放りこんだ。もう一個取り出して、少年に手渡す。
「君さ、あの子の家がどのへんにあるのか知っているかい?」
「いいえ……いつも途中までは一緒に帰りますけど、詳しい場所までは」
「彼女の家はね、この近所にあるんだよ。歩いて一〇分も掛からない」
そう言うと、すでに少年は大体を悟ってきているのかあまり驚く様子はない。私はなんだ詰まらん、と鼻から少し息を吐く。
「あの、おじいさん。間違っていたら申し訳ないんですが、あなたはもしかして――――――」
「うん。私、君の好きな先輩のおじいちゃん。送った連絡先の苗字同じだっただろう?」
やっぱり、と言った少年はまるでカタツムリのように丸く頭を抱え込んでしまう。
「僕は、ご家族の目の前で先輩に告白してたんですね…………」
「あちゃあ、って感じだよね。でも君、それくらいで頭を抱えていたら、これから知る事実に耐えられないぞ。きっとブランコを漕ぎまくって何処か遠くに飛んでいってしまいたくなるだろうさ」
「こ、これ以上なにかあるんですか」
「だってこれだけじゃ、あの子が逃げた理由にならないだろう?」
そう口に出すと、前途ある若者を谷底に追い込んでいるような気分で、少しだけ気分が悪くなってきた。
「君が覚えている限りでいいから、あの時、あの場で誰がいたのか、よ~く思い出してみなさい」
縮めた頭を少しばかり浮かべ、必死で昨日のことを思い返しているのだろう。笑ったり困ったりと、また一人で百面相を繰り広げている。
「…………ダメです、大人のひとや子供が沢山いたとしか覚えていませんよ。大体、僕はおじいさんが昨日ここにいたことだって分からなかったんですよ?」
「いや、それだけ認識していれば十分さ。『大人のひと』と言ったね、それは具体的に何処にいた、どんな人だったかな」
首が今にも九〇度まで傾きそうになりながら、彼は自信無さげに答えた。
「ベンチで、僕の隣りにいた人とか……男の人です。少し離れてましたけど、多分会話は聞こえてたんだと思います。僕が帰ろうとした時にジッと見てきましたから」
「そうそれっ!」
ポンッと手を叩き彼を指さす。少年はいよいよ困窮をきわめたようで、眉をへの字にしたまま固まってしまった。
「あの子はね、その男の人に君の告白を聞かれたから逃げ出してしまったんだなぁ」
「で、でもっ!あの、先輩は他人にそういった会話を聞かれても、その、きっと動じないと思うんですが……多分」
「まぁ、他人ならね」
「はい?」
私はなんだか彼の目を見つめているのが居た堪れなくなって、思わず空を見上げてしまう。あぁ、もう夕方かぁ。
「その男の人って、私の息子なんだよ」
「あ、え、…………ん? あの、ぇ」
ちらりとだけ目をやると、少年の顔は真っ赤になり、脂汗がびっしりと額を覆っている。なんか私までつられて汗をかいてしまう。
「私の息子でね、あの子のお父さんなわけだよ。昨日は一緒に公園に来てたんだが……きっと孫も緊張して、周りに誰がいるかなんて分かってなかったんだろうねぇ」
「あ――――――――あの、あのっ」
「そして君の方に振り向いた瞬間、ようやく向かい側に自分の父親がいた事に気づいた、と」
「あぁぁ、あの……あのっ、あぁのっ!」
さっきからあの、としか発してないなこの子。なんかカタカタと震えだしているし。教えないほうがよかったかと、今更ながらに少しだけ後悔する。
「ぼ、ぼぼぼ僕は、せん先輩の、おと、お、お父さんの前、でこく、こ、告白をっ?」
「しちゃったんだね~。家に帰ったら鬼の形相でやけ酒してて、おじいちゃんちょっと引いちゃった」
「――――――おじいさん、僕を背中から押して何処か遠くへ飛ばしてください」
「ごめんよ、もう歳だから無理だ」
ま、若い時でも無理だけど。
完全に私は貝になりたい状態な彼の肩を軽く叩くと、取り敢えずな励ましを送る。
「これであの子が逃げ出したのは、君が嫌いなわけじゃないってことはわかったろう? まだきっとチャンスはある、もう一度頑張ってみればいいさ」
「でも…………昨日はあれから電話もメールも返してくれないし、今日の部活中だって一言も喋らなかったんですよ。きっと、もう相手にしてくれません」
あ~思春期特有なネガティブ思考の蟻地獄ね、あるある~と内心微笑みつつも、顔をピリリと引き締めて少年に活を入れた。
「そんなんでどうするっ!!」
「っっ!?」
急な大声に驚くと、今まで曲げっぱなしだった彼の腰がシャンと伸びきる。私はその背におもいっきり平手を叩きこんだ。
「君は私が感心するほどちゃんとあの子を見ているよ、正直驚いた。そんな君が簡単に諦めてしまうのは、とても哀しく思うんだ」
「お、じいさん?」
「初めは本当に興味本位だったんだが、今じゃ私は君を気に入っている。どんな結果でも、と君に言ってしまうのは酷だがね。どうかもう一度きちんとした形で、孫に想いを伝えてやってくれないか?」
少年は少しだけ視線を逸らす。だが数秒もしないうち、彼はまっすぐこちらを見据えた。
「おじいさんは――――良いおじいちゃんですね。僕、もう一度頑張ってみます!」
「うん、それが聞きたかったんだ。じゃあもう少しだけ待っててね、もうすぐ来ると思うから」
はい? と首を傾げる少年。
その肩口から見知った顔が公園に入ってくるのが見えて、大きく手を振った。
「あ、きたきた。おぉ~い麻也ちゃん、こっちこっち!」
「――――――――――――っっっ」
少年の顔が再び紅く染まり、汗に埋め尽くされる。面白い面白い。
側まできた上の孫――麻也は傍らにいる彼が顔見知りだと判ると、ギロリと私を睨みつける。姉妹揃って睨み方そっくりだなぁ。
「……おじいちゃん、美也の迎えに来いって話じゃなかったの」
「ん~。そうだったような、そうじゃなかったような。あれ、こういうときってなんだっけ、テヘペロって言えばいいんだっけ?」
「無理してそういうの使わないで……どういうことよ、メールでわざわざ呼び出すなんて」
え、メール!? とようやく現状復帰した少年が反応する。
その声は聞こえたはずなのに、麻也は決して彼の顔を見ようとしない。ハッハッハ、でも耳まで真っ赤だよこの子。
「いや~家に情緒不安定な人間が二人もいると気を遣ってしょうがないから、やりやすい方から解決しようかなって」
「………………な、なんで彼のこと知ってんの」
「だって昨日公園にいたの、お父さんだけじゃないから。やっぱり気づいてなかった?」
瞬間、顔を覆ってうずくまる孫。若者苛めるのって楽しいね。
「とまぁそういうわけで、思う存分話をつけてきなさい。お母さんには言っておくから遅くなってもいいけど、夕飯までには戻るんだよ」
去り際、どうすればいいのか分からずオロオロとする少年の肩をポンと叩き、また飴玉を取り出して二個手渡す。
「暗くなったらちゃんと送ってきてね。あと、なんか相談があればいつでもメールしなさい」
「あ、あの――――本当に、ありがとうございます!」
キッチリ九〇度、最敬礼でお辞儀をされる。麻也にはちょっと大人しすぎる気もしたけど、まぁこれはこれでちょうどいいのかも。
公園の出入り口までくると、砂場で男の子に砂をぶっ掛けている美也に向かって声を掛ける。
「美也ちゃ~ん、おうち帰るよぉ~っ!」
『も~うちょ~っとぉ~っ!!』
孫だけでなく、砂場にいる子どもたち全員に返事を返される。
苦笑して、もう小さくなった飴玉をガリリと奥歯で噛み砕いた。
「あ、入れ歯に挟まった――――――」