新しいからだ
呆然と部屋と見たことの無い男2人眺めていると、黒髪の方の男が伸びっぱなしであちこち跳ねている髪をガシガシと掻きながらこちらを覗き込んできた。
「type Я32、私の言葉が分かるか?」
男は長い前髪の間から茶色の瞳で無感情にこちらを覗き込みながら素っ気なく聞いてくる。
type Я32、とは私の事だろうか…
全く現状が分からないまま話しかけられてさらに困惑する。
「あの、type Я32とは私の事ですか?
私の名前は真名 佳織です。
日本の東京在住の…あの、ここはどこの病院ですか?」
ーーー??
現状を理解しようと一気に喋った後、ふと聞こえてくる声に違和感を感じた。
見える景色も、目の前の外国人にしか見えない顔立ちの男たちも違和感しかないが、まさか今の声は自分の声か…?と
驚いて右手を喉に当てる。
目は大きく見開いているだろう。
そんな彼女を男2人も驚いた顔で見ていた。
「…おい、ヤージュ。この子には今までと違う設定をしたのかい?」
「いや、………今までのタイプと同じはずなんだが…」
佳織は男たちの会話も耳に入らない様子で「あー」とか「いー」とか言いながら自分の声を確かめている。
そして徐に自分の掌を見つめ…そのまま視線を下げて自分の足から徐々に目線を上部にずらしていく。
掌も足も記憶にあるよりも白くほっそりとしていて…
下半身の局部にも体毛は見られず…
腹部も薄く細く…
最後に胸部を見て女性の膨らみが全く無いことに気がつく。
ペタペタと自分の体の手や胸や足、腰の後ろやなんかを座った状態で確かめ…恐る恐る顔と頭部に手をやると
顔の造形は分からなかったが肩下まであった髪の毛がショート丈まで無くなっているのにまず気がついた。
髪質も元は硬く太く毛量も多かったのに、手触りがなんとも柔らかくサラッとしていた。
顔立ちが分からないとなんとも言えないが体は確実に自分のものではない。
佳織はますます訳が分からなくなって声にならない声で叫んだ。
そのまま酸素を脳が取り込めなくなったのか、気がついたら意識が落ちていた。