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プロローグ

合間に不定期更新です。よろしくお願いします。





嫌だ嫌だ嫌だ


どうしてこうなった





1週間も前から予報されていた多くの大型台風の豪雨の中

打ち付ける雨も気にせずひたすら歩く。

雨の勢いは凄いが風はちょうど弱まっていて濡れるのさえ気にしなければ歩いて進める。


視界は悪いが、打ち付ける音も凄いが、

先程の光景を見ないふりで進むのにはちょうど良かった。


肌に強く打ち付ける雨足も、


絶え間なくザーザーと耳に入ってくる雨音も、


気を紛らわすのには丁度いい。




どこに向かうともなくひたすら足を動かす。

いつもなら帰り着く場所。


そこからさっき逃げ出して来たところだ。




真名 佳織。32歳。

来年には結婚を控えていた。

同棲5年目。

両親からの帰省する度にかけられる結婚への圧力に、私も同棲相手も半ば折れる形で来年には結婚を、と相談して決めた。


元々私も彼も仕事を優先してしまいがちで、付き合い出したのも友人として過ごす中で価値観が同じだったからだ。


仕事を優先して恋人を思いやれない。

集中してしまうと相手の存在を忘れてしまう。

お互いそれでいつも上手くいかず、分かり合えるのはお前だけだと振られる度に不満を分かちあっていた。


それならばもういっそ、分かり合えるもの同士で付き合えば上手くいくのでは?

何回目かのどちらかの振られた話のグチの延長でそんな話になって、

それでそのまま勢いで付き合いだしたのだ。


それでも付き合ってみれば順調で、お互い重くもならず、負担にもならずのいい距離で付き合えて、お互いの一人暮らしのマンションの更新日が近かったのをきっかけに同棲しはじめた。

家事の分担も、仕事が忙しい時の配慮も、お互いの1人の時間だって尊重してこれた。


この5年、少なくとも自分は今までのなかで1番いい付き合いをしてこれた、と思っていた。




それなのに。





今日台風が酷くなる前に、と

いつもは散々残業もさせる会社側から珍しく早く帰るようにと

言ってきたのだ。

正直電車で30分、途中で中途半端に臨時停車でもして帰れなくなるのは非常に辛いし、会社に泊まり込みも嫌だ。


ありがたいとばかりに我先に、と帰宅した。




そうしたら深刻な顔をした彼と、知らない女の人。





聞けば付き合い同棲して最初はいい距離感だと思っていたが、私があまりにも彼の存在を気にしていなさすぎるのが寂しくなったのだと。


そんな時会社に新入社員として入社してきた彼女(いかにも可愛いらしいものが好きです、といった風な所謂ゆるふわ系女子)に癒され、

気がつけば体の関係を持ち、ずるずると付き合っていたのだが

結婚の予定が具体的になってきたからと別れを切り出そうとした時に彼女が妊娠していると分かったのだ、と。





いやもう、



はあ???



である。




いやほんと、それしか言えなかった。




もう瞬時に


結局お前もか!

とか

3年以上(詳しくは3年と7ヶ月)も浮気してたんか!

とか

なんで気がつかなかったんだ私!

とか

いやそもそも気が付かないほど無関心だったのか!

とか




最初に沸点超える怒りが爆発したが

よくよく考えると確かにそんなに長い間気が付かない位の気持ちしか

私にはなかったのだと気がついてしまった。





そこで一気に頭は冷えたが

それと同時に嫌悪感が凄まじいくらい襲ってきた。




この男にも、




自分にも。







なんだかそうなるといても立ってもいられず


今はとりあえず同じ空気も吸いたくなくて


そして自分のことも受け入れ難くて。






気がつけば豪雨の中傘も差さずに

肩に掛けたままだった鞄だけ持ったまま家を飛び出していた。





そしてどこまで走ったのか分からない住宅街の

曲がり角を曲がった先の交差点




雨にけぶる視界に突然の強い光



眩む目を反射神経のままに閉じたすぐ後



体に強い熱さとも痛さともとれる衝撃




宙に体が浮く浮遊感からの頭への強い衝撃


目の前に飛ぶ火花





そのまま視界はすぐに真っ白になり






私の意識はそこで途切れた




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