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37.([前]編-37)

 辺境伯になってからの俺は、妙に、美少女との遭遇率が高いな、などとホケっと考える。


 やはりインパクトが一番強烈でど真ん中なのは、ラヴィニアさん。

 うん。未だに、まだまだ、まともに見てしまうと見惚れてしまう程に、ラヴィニアさんは鮮烈な美少女だ。

 魔法少女さんやドジっ子メイドさんの美形度も大概ではあったが、王女様やボクっ子侯爵令嬢様やこの国の第二公女様も、相当なレベルの美少女だった。

 王妃様とクールビューティな侍女兼護衛さんやこの国の第一公女様なんかは、美少女と言うには少し違和感があるものの、ハイレベルな美女、ではあるよね。

 まあ、何にせよ、辺境伯になってから出会う女性たちは皆、異様に美形率が高い。

 あ、ああ。勿論、それ以前からの知り合いである開拓村のミランダも、可愛い女の子、だ。忘れない内に断っておかないと、本人とジェイクに、怒られる。猛烈に。

 そう。開拓村や農村にも、可愛い女の子たちは沢山いる、のだ。それは、間違いない。


 って、何の話だったっけ...。

 ああ、そう、そう。

 レジーナさんを眺めながらの、美少女についての考察、だった。


 光沢のある薄桃色のラヴィニアさん、光沢のある水色のレジーナさん。

 物静かで大人しいが気が強そうにも見えるラヴィニアさん、元気いっぱいで表情も明るいレジーナさん。

 ある意味、二人は、対称的な突き抜けた美少女、だと言えると思う。


 そういえば、この世界の人々の頭髪の色は、どうなっているのだろう。

 イケメン騎士の代表格である面倒な人物二人も、俺の常識からすると突飛な色だったが、目の前で揺れている光沢あるさらさらストレートの水色のショートヘアも、ある意味では非常識な色だ。

 ラヴィニアさんの光沢ある加減によっては銀髪にも見える薄桃色の綺麗な長いストレートヘアも、個人的には好みなんだが、よくよく考えてみるとあまり現実的な髪の色とは言えない。


 など、など。

 長閑な農村から荒野へと向かう寂れて人手の入っていない荒地の中を通る一本道を、騎士伯の一人娘だから責任があると気負うレジーナさんと連れ立って歩きながら、俺は、ぼんやりと考えていた。

 そろそろ荒野も近付いてきたので気を引き締めないとな、などと気を取り直したタイミングで、道が、なだらかな丘を越えて緩やかな下り坂になった。

 その途端。目の前の景色が、開ける。


「わあ~、かわい...い?」

「は?」

「猫、かなぁ?」


 レジーナさんが指し示す先に、黒猫がいた。

 そう。可愛らしい仕種で、顔を洗い毛繕いをする、黒猫が。

 ただ、縮尺が妙だった。


 この位置から見ると、遠くで可愛い黒猫が毛繕いしながら寛いでいる、ようにも見える。

 俺たちが向かうその先、道の上で。

 ただし。俺たちの居る場所では馬車一台が何とか通れる程の道幅がある道を、そこでは、その猫の身体が完全に塞ぎ、尚且つはみ出し、占拠していた。


 アホか~い!


 ちょっとした一軒家ほどもある黒猫(?)が、俺たちの目の前で、愛嬌を振り撒いていた。

 まあ、あれに、敵意は無いようだ。

 それに...この気配、ある意味では馴染みがある。


 頭が痛かった。


 白猫ドラゴンのエレノアさんは、今、王都のノーフォーク公爵家のお屋敷、だよな。

 ラヴィニアさんの事は任せとけ、とか言っていたような気もするが...。

 本当に、大丈夫なんだろうか?

 頼むよ、エレノアさん。

 よくよく考えてみると、あの白猫ドラゴンに、人類の常識を期待すべきではなかったのかも。


 はあ。頭が、物凄く痛い。

 思わず頭を抱えて蹲りたくなりながらも、何とか踏み止まる、俺。

 そう。まずは、目の前の課題解決が最優先だ。

 あそこに見えている、あの非常識な生き物を、とっとと片付ける事にしよう。


 俺は、茫然と呆けているレジーナさんをその場に放置し、すたすたと速足で歩いて、巨大な黒猫のもとへと向かった。




 そして、今。俺の目の前には、見上げる程に巨大な黒猫が、鎮座している。

 ここまでに巨大な黒い毛玉の塊りは、ある意味、あっ晴れなものだった。

 うん、デカい。けど、質感は、間違いなく猫だ。


『にゃ?』

「にゃ、じゃないわ!」

『にゃ、にゃ?』

「喧しい。猫に化けるなら、体長も猫サイズに変化させろ!」

『ちっ...仕方なかろう。俺には、あ奴のように小さくなるような特技など無いからな』

「あ奴って...」

『おう。エレノアに頼まれて、助太刀に来てやったぞ』

「はあ...やっぱり」

『なんじゃ、その迷惑そうな顔は?』

「エレノアさんも、どうせなら、もう少し使える奴を紹介してくれれば良いものを」

『な、なんだと!』

「荒野の探査行じゃあるまいし、人里を旅するのに、こんな巨体を連れて行けるか!」

『む、むむ』

「せめて、見た目だけでも人間サイズに出来ないと、連れていけないだろうが...」

『お?』

「ん?」

『見た目だけで良かったのか?』

「あ、ああ。まあ、そうだな」

『何だ、それを早く言え』


 ポンッ。


 効果音(?)が鳴り、何処からともなく湧いて出てきた白煙が、巨大な猫を包んで消える。

 と。

 その後には、ちょっと大きめの人間サイズになった黒猫。


 ここまで来ると、もはや、唯々感心するしかない俺だった。


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