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美少女と勘違い野郎

2話連続投稿の2話目です。


設定中毒な作者ですが、読みやすいよう頑張ってます笑

「あなたは誰」と問い、「草」と答える。


 これは()()()で、テロリストたちから逃げ戦った人々が、仲間であることを確かめるための合言葉。


 お互い生死の分からない状態で別れた矢月と柚子葉は、このやり取りでお互いが確かに生き残っていた事を確認した。

 

 もっとも、矢月の方は彼女が生きている事を把握していたが...


「やづ!」


 と矢月の愛称を呼び、胸に飛び込んで来る柚子葉......の肩をつかみ、すんでのところで止める矢月。

 そして、彼女の耳元に口寄せ、


( 目立ちたくない。詳しい話は夜に )


 と彼女にだけ聞こえるよう告げると、つかんでいた手を離した。

 柚子葉の方も、渋々という感じではあるが、素直に距離をとった。


 そのとき、


「てめぇ、ゆずはちゃんに何してんだ!」


 叫ぶ榊が横から矢月に殴りかかってきた。

 ただ、部屋にいる全員の()()()()()()()()矢月は事前に気づき、顔を少し引くだけでそれをかわす。


 榊は気勢をそがれつつも、尚も怒鳴り続ける。


「ゆずはちゃん泣いてんじゃねえか! てめえはどんだけこのチームに迷惑かけりゃ気が済むんだ! 2度とゆずはちゃんに話しかけんじゃねぇ!」


 そんな雰囲気で無かったことは、この場にいる人間のほとんどが分かっていただろう。涙だって、決して悲しみのそれでないことは容易に見て取れる。そもそも泣いていると言えるほどの量でもない。


 だが榊は柚子葉に、否、()()()()に対して先入観が激しいいわゆる “勘違い野郎” だったらしい。完全に “自分の女を守るおとこ”モードだ。


 頭大丈夫かこいつ、と矢月は思う。


 っとそこで、ガチャりと部屋の扉が開かれた。


「はいはい皆席にすわれ! 顔合わせ始めっぞ〜」


 入ってきたのは青いジャージ姿の長身の女性。おそらくこのチームの担当教員だろう。名簿によれば、名前は 秀島ひでしま 京子きょうこ。綺麗に染めた茶髪を雑なポニーテールに結っている。


 その気の強そうな眼光に気圧されたのか、さしもの榊も不満げな一瞥を矢月に投げつつ、


「この後の模擬戦......覚えてろよ?」


 っと、捨て台詞まで添えてから席に着いた。


 全員の準備ができた事を確認し、メモを確認しつつ秀島が話し始める。


「よおし始めるぞ。私はお前らの担当教員だ。名前は名簿見ろ。えぇと、次はお前らの自己紹介か。興味ないな...10分で済ませろよ。はいお前から!」


( 次って......自分の紹介してなくないか )


 心の中で矢月はツッコミを入れた。おそらく皆もそうだろう。

 それはさておき、指名された男子学生がたちあがり自己紹介を始めた。


山城やましろ ゆうです。資格は四級を持っています。中村警備でサポーターしています。趣味はピアノです。特に最近は......」


 山城と名乗った男子学生は、平均男子より少し背が高く、真面目そうなそばかす顔をしている。


 ちなみに “資格” というのは、主に戦闘能力を評価する術師の国家資格のことである。ここ第六ではその資格も成績に反映され、入試の受験資格には5級を所持していることも条件に入っている。


 対して “サポーター” とは、“政府から術関連の取り締まりを許可された民間の警備会社でアルバイトをしている” という意味で、これは成績には加味されないが、やっているだけで学生の経歴にはかなり華が添えられる。と言っても、本当に雑用程度の役割がほとんどだ。


「......歌の方はまだまだなんですが、カラオケで歌うのは大好きで......」


 にしても山城と名乗った学生、まだ紹介を続けている。10分しか与えられていないうちの既に2分は独占している。真面目そうな見た目に反してかなり自己顕示欲が強いらしい。

 自分自慢したがりの子供、そう矢月は印象付けた。


 それからやっと山城のアピールタイムが終わり、残りのメンバーが急いで自分の番を済ませていく。


 中でもやはり1番目立ったのは柚子葉だった。


「加古 柚子葉です。準二級術師です。サポーターは......ファクター第37支部でやってます。よろしくお願いします」


 終わった瞬間、大きな歓声が上がる。

 それもそのはず、三級が主力の現役プロの中でも準二級術師は少数なエリートであるし、ファクターという組織も、政府から委託されている民間会社などではなく、警察庁が組織した歴とした公営団体だ。民間とは格が違う。


 対して矢月は、名前と適当な話題で濁し、資格や所属の話は避けた。こう言っておけば、ギリギリ5級の無所属だと皆思うはずだ。

 榊が鼻で笑っているのに気づきつつ席に着く矢月。


 全員の自己紹介が終わった所で、


「先生、1人まだ来ていないみたいですが」


 不意に1人の男子学生が尋ねた。確かに12人1チームだと聞いたが、部屋には秀島を除いて11人しかいない。


 これにたいして「病欠だ」っと秀島は一蹴して司会に復帰する。



「じゃあ次は...学生の危機感理能力向上のための“草刈島くさかりじまテロ”の説明......これは誰でも知ってんだろ。3年前だぞ...」


 猪狩島テロと聞いて、矢月と柚子葉はビクッと身じろぎしたが、誰もそれにはきづかない。


「よおし、じゃあ最後のメニューだ。っつーか、これがこの顔合わせのメインだよな」


 っと話す秀島は、今までとは打って変わって悪そうな笑みを浮かべ、非常に楽しそうだ。

 今までの内容は前菜だったかのような、まるでビールの美味さのための仕事のような、彼女にとってはそんなものなのだろう。否、ほとんどすっ飛ばしている限り、それ以下なのか。


 当のそのメニューとは...


「今から2人1組で模擬戦をやってもらう! 仮にもトップチームなんだ。しっかり楽しませろよ!」

次話でやっと戦闘描写書けそうです。


でも盛り上げ部分あってこそなので手は抜けませんね。

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