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再会 ~いや男の方じゃ無くて~

一話目なので若干説明多めになってしまっていますが、最後まで読んでいただけると光栄です!

 はるか昔、魔法や魔術、忍術、錬金術などと呼ばれた異能の技。

 今やそのプロセスの殆どが理論的に解明され、魔法陣と少しの才能さえあれば、汎用化されたその“術”を扱うことができるようになった。


 “術” を扱う専門職 “術師”。


 術の一般化により、多岐の分野に渡って重宝されるようになった職業。その術師のプロフェッショナルを育成する大学、“国立第六術師大学” の入学翌日。


 308ミーティングルームの扉の前。


 1人の青年、一条いちじょう 矢月やづきが憂鬱そうに手をかけようとしていた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 中学時代、矢月は術を使うのが極めて苦手だった。


 考え方の古い両親が、術を極めるのを良しとしなかったせいもある。皆が通っていた術師の塾に、自分だけ通わせて貰えなかった不満は消えない。だがそれを差し引いても、彼が才能に恵まれているとは言えなかった。


 強さイコールカッコよさと考えがちなのが中学生の心。そして現代における強さとは、術を扱う技量の高さ。


 それを持ち合わせていない矢月は、周りから大いに見下さた。

 陰口もほとんどの同級生から言われていた自信がある。


 そしてこの308ミーティングルーム。


 扉を開ければそいつらと............3年ぶりに再会することになる




 そして、“彼女” も。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 扉を開けた矢月の目にまず映ったのは、いかにも会議室といったふうの真っ白な部屋に、円形に並べられた長テーブルとデスクチェア。


 それを囲んで学生男女計9名が談笑していた。

 その中でもひときわ大きな声で、下品にゲタゲタ笑っている男子学生1人が矢月に気付き、わざとらしく嫌そうな顔をして口を開く。


「うぅわあぁ最悪、クソザコのやづきくんじゃあん」


 そう言葉を発した彼は、中学時代に矢月をしいたげていたメインメンバーの1人、さかき 慎二しんじ その人。

 オールバックにした茶髪に、チャラついた服、平均より多少整った顔。


 数年前までの矢月にとっては、顔を合わせたくない人物最上位だっただろう榊。

 だが壮絶な高校時代を過ごした矢月にとっては、もはやうるさい以上の感情は湧かない。


「今さら何言ってる? 名簿に書いてあったろうに」


 気だるげに答えると、


「同姓同名だと思ってた、いや祈ってたんだよ。だってさあ、やづきくん分かってる? うちはトップチームなんだぜ? そこにお前みたいな足引っ張るしか能のないおサルさんがいたらさぁ......」


 と、さも悲しそうに頭を振る榊。


 ちなみにトップチームというのは、榊の自意識過剰が生み出した妄言ではない。


 第六術師大学(よく第六と略される)では、入学時の技能試験および各々取得している資格、それらを合わせ評価が高い順から12人ずつでチームが組まれる。


 昨日配られた名簿から、矢月や榊のチームがトップ12名の寄せ集めであることも分かっていた。


 榊は話し続ける。


「てか、随分でかい口聞くようになったじゃん。大学デビュー? 偉そうにピアスなんかも開けちゃってさあ?」


 確かに矢月はピアスを開けている。それも両のロブ(耳たぶ)の他に、左耳のヘリックス(側面の軟骨)、右耳のコンク(耳中央軟骨)の計4カ所に。

 ただこれは矢月が不良になったわけではなく、アメリカ人に囲まれて過ごしたここ2年で価値観が変わったのだ。


「うる...」

「あ〜ぁ、うるさい。せぇっかくゆずはちゃんと一緒のチームだってのに、萎えるわ〜」


 矢月がうるさいと言おうとした瞬間遮ってきた。この速度は長年の経験のなせる技。さすがと言わざるを得ない。

 にしても、


加古かこ 柚子葉ゆずは...か )


 榊の口から発せられた名前に、矢月はかすかに顔を曇らせつぶやいた。


 加古 柚子葉。数万人に1人と言われる稀有な才能を持つ優秀な術師で、さらに容姿も抜群に優れている少女。

 その噂は他高校だった矢月にもすら頻繁に耳に入っていた。


「加古ちゃんさっきまでここにいたのに、いつの間にかいなくなってたよね。そわそわしてたけど、お花つみにいったのかな?」


 そう口を開いたのは、先ほどまで榊と話していた女学生の1人。


「生でみても超綺麗だったよねえ。なんか妬けるなあ」


 他の女子も会話に加わり、そこからはしばらく黙っていた他の学生たちも会話に復帰し始め、またやいのやいのと談笑が始まった。


 会話に加わる気などさらさら無い矢月は、適当な席に着こうとして、気づく。


 ミーティングルームに向かってくる、よく知る()()()()()


 間もなく、バタン!っと勢いよく開かれる扉。


 そこにいるのは、暗めの茶髪にも関わらず、クールな雰囲気がかすかにただよう女子学生。外国の血が多少混ざっているのが伺える、あらゆる角度で整った顔立ち。10人に聞けば間違いなく10人がイエスと答えるであろう、まごう事なき美少女。


 加古 柚子葉。


 2年前()()()で死線を共に戦った少女。


 柚子葉は部屋に入るなり何かを探すように見回すと、ある人物に視線を留め、あろうことか、端正な顔を歪め瞳を潤ませ始めた。


「ゆずはちゃ〜ん。突っ立ってないでこっちに...」

「やづ!!」


 空気を読まない榊の声を遮って柚子葉が奇妙な単語を叫ぶ。


「生きて......あ!」


 さらに言葉を紡ごうとした彼女は、何か思い出したのか一度止め、呼吸を落ち着けると、


「あなたは.........?」


 と、続けた。

 多少違和感はあるものの、初対面の多い顔合わせのこの場では自己紹介の起点とも取れる発言。


 しかしこれに答える人物も、その内容も、この場にいるほとんどが予想していないものだった。


「俺は........そこらの道草だよ」


 そう答えた矢月の胸に、加古 柚子葉は勢いよく飛び込んでいった。


 

矢月たちの過去は少しづつ明らかにしていきます


ちなみに

日本だと男性のピアスの個数が右側に多いと同性愛者と言われますが、アメリカや一部の国では左が同性愛者となる(※必ずしもそうというわけではない)そうです。

矢月くん双方の板挟みの末、左右同じ数つけてます。苦労してるんです

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