ころがる戦況
今まで早朝に更新する事が多かったですが、少し遅めの時間に変えてみようと思います。
と言うわけで、今日は二話投稿です!
「まったく、無駄に大物が釣れたものだ。骨が折れるな」
そう言った男の瞼が、少し歪んだ。笑っているのか。
「加古さん...パラサイトだったのか」
「パラサイトってなんだ?」
山城の呟きを耳ざとく聞き取り、榊が尋ねる。
「パラサイト...妖怪や精霊、そう言った人外の力を遺伝的に宿してる人間のことだよ」
緊張の中でも、山城は少し嬉しそうに解説する。
「そしてその力を振るうのに、魔法陣や他一切のプロセスは必要ない。自分の手足のごとく力が使える、極めて貴重な才能だ」
意外にも、山城の解説を緑目の男が引き継いだ。
そして、さらに目を細めて続ける。
「本当に......厄介だ。拉致しなきゃならないのに、手加減できずに殺してしまいそうだ」
瞬間、柚子葉たち3人に強い悪寒が走る。
強い...まず間違いなく敵わない。柚子葉は全身で感じ取った。
「榊くん、山城くん...時間稼ぐから、逃げて」
震えだしそうな唇を何とか抑えて、彼女はそう指示した。
だが無論...
「なっ! 何言ってるんだよ加古さん!」
「そうだぜ! あんなコート野郎、俺がぶっ飛ばしてやる!」
2人は否定する。だが柚子葉と違って、その体は震えを抑えられてはいなかった。
「状況を考えて! これはもう学生任務の枠を超えてる! 早く行って!」
声を荒げる柚子葉。
しかしその時、周囲一帯がドーム状の半透明の光に覆われた。広さは、緑目の男を中心に半径100メートルほど。
結界に閉じ込められた。
「行かせると思ったか? コミックじゃ無い、これは実戦なんだぜ?」
低く抑揚の無い声で話す男の足元には、魔法陣が輝いていた。見ると、男の周囲にもドーム状の結界が張ってある。どうやらその結界は、捕獲と防御両方に使えるようだ。
それに気づいた柚子葉は、チッと小さく舌打ちすると、
「とにかく出来るだけ離れて、脱出方法を探して! 真と黒衣は2人を守って!」
そう言って柚子葉は男に突進した。
一瞬で肉薄した彼女は、爪と刀で凄まじい連撃を叩き込む。
しかしその全ては結界に阻まれ、男に届くことはなかった。
「駄目か......なら!」
そう言って柚子葉は一歩下がり、右手を握る。するとその右腕に、凄まじい電流がほとばしり始めた。
虎の剛腕に、雷獣たる鵺の雷。それを全力で結界に打ち据える。
どっがあああ!
落雷のような轟音とともに土煙が巻き上り、男を結界ごと包む。
視界が悪い中、柚子葉は再度身を引いて様子を見守った。
もう少しで煙が晴れると思われた、その時だった。
きゃあ! っと叫び声をあげ、柚子葉が吹き飛んだ。
「柚子葉ちゃん!」
榊の声が響く。
3メートルほど地面を転がって止まり、すぐに顔を上げる柚子葉。その目には、同じ場所で涼しげに立つ男の姿が映った。結界には、傷1つも入っていない。
( 見えなかった! いったい、何が⁉︎ )
急いで体制を立て直す柚子葉。
見えない攻撃は、確かに彼女の腹部を打った。斬撃で無かったからまだ良いものの、攻撃を見切れ無ければジリ貧だ。
再度刀を構え、神経を研ぎ澄ませる。
だが、
「そう簡単には、対応させないさ」
男がそう言い、パチンと指を鳴らした。
すると、
「おあぁ!」
「やばい、加古さん!」
榊、山城の叫び声がした。
見ると2人の周囲に、先ほどとは違う魔獣が2体、輝く魔法陣と共に召喚されていた。
召喚されたのは、巨大な鷹と狼。いづれも榊、山城に襲いかかって行く。
今は真と黒衣がうまく防いでいる。だが、その2体の召喚獣が先程のマンティコアレベルなら時間の問題だ。
( どうにかしないと... )
そう思いつつ、柚子葉は男を振り返る。
だが......
「よそ見は......良くないぞ?」
「え...うっ!!」
またしても、柚子葉の体が突き飛ばされた。先程と同じ、見えない攻撃。
「一芸だけじゃあ、やっていけないからなぁ」
そう言いつつ、男はクツクツと小さく笑い声を上げた。
( くそっ! 戦い方がいやらしすぎる! )
逃げ隠れできない結界内で召喚獣に戦わせつつ、自分は安全圏からチクチク援護する。
柚子葉は心の中で、畜生が...っと毒づいた。
...だが、分かったこともある。起き上がりながら、柚子葉は口を開いた。
「球状の結界...今私に放ったのも、あなたを囲っているのも同じもの」
柚子葉は精一杯強がって、勝気な笑みを浮かべる。
「攻撃が見えなかったのは、暗い上に結界が半透明だから見えにくかっただけ。あなたはただ、小さな結界の球を私にぶつけた......違う?」
「ほぉ、やるじゃないか。90点だ」
はっはっはっと笑い、男は楽しそうに褒める。
「どうして分かった?」
「待ち伏せしている時からずっと、感知用の術は張っておいた。だから、ここを取り囲んでいるのも、あなたの周りのも、半球では無く球状なのはすぐ分かった。それにあなたはさっきから、新しく魔法陣は投影していない。つまり、ずっと同じ術を使っている...」
ふむふむ...っと男はうなづいて、問う、
「召喚獣を出した時、俺は魔法陣を出したぞ?」
それに対し、柚子葉は答える。
「魔道具...仕込んでたんでしょ? 」
そして矢月を真似るように、陰惨な笑みを浮かべる。
「あなた......一芸しか持ってないんじゃない?」
ツイッター始めました。
作中では語りきれない呪術や妖怪の話ができたらと思っています。
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