嫌味な教師と急展開
おはようございます。
本日もよろしくお願いします。
3人でしばらく雑談していると、教室に教師が入ってきた。
秀島とは違う男性教師だった。メガネをかけ知的な雰囲気を醸し出している。
教卓にたち、皆が静かになるまで待ってから話は始める。
「......3分。君たちは黙れと言われないと黙れないのか。そうか分かった。今後私が君たちに話しかけられたときは、そのように接するとしよう」
(大学教師までそのネタやんのか。しかも平均以上にねちっこいな)
この教師はダメだ、学生を見下している。
矢月の評価はとても低かった。
「では本題に入る。今回のガイダンスは 、皆もある程度内容は把握しているだろうが、“学生任務” についてだ」
教師は名乗りもせずに本題に入ろうとする。この学校の教師は名乗らないのが普通なのだろうか。
まあAクラス副担任の水城 智であるだろうことは昨日の資料から分かるが。
「昨今、術師や術を用いた凶悪犯罪が増える一方、それを取り締まる優秀な術師は足りなくなる一方だ。そこで、君たちにもプロの術師の仕事の一部をこなしてもらう。これが学生任務だ。国としては、君たちのような半端者すら遊ばせておく余裕がないらしい」
話しながらもちょいちょい学生をディスってくる。
「言っておくが、学生任務だろうと、死者が出ることがある。現場を知らないくせに目立ちたがる君たちの年頃では無駄死にもままある。心してかかるように」
死ぬ。その可能性を提示されたことで、講義室には動揺の色がはしる。
「そして、ここからは去年からの変更点だ」
男性教諭のガイダンスは続く。
「通常、学生任務は12人ごとに作られたチーム毎に割り振り、割り振られたチーム内から最適なメンバーを担当教諭が指定する形となる。その際、選ばれたメンバーに大学院から1人指導役がつくのだが...」
ここで、いったん間をつくり、再び話し出す。
「成績最優秀チーム、君たちが “トップチーム” とアホらしく呼んでいるチームには、今年から指導者がつかないことになった」
「なっ!」
それを聞いた広瀬は、驚いたようで小さな声を上げた。
ちなみに、矢月と柚子葉は事前に知っていたかのように驚きがない。いや、事実知っていた。
矢月は情報力の高いプライムセキュリティの上官から聞いていたし、柚子葉は今朝矢月から聞いていた。
「先ほども言ったが、今は優秀な術を用いた犯罪が増え続けている。大学に持ち込まれる案件も年々増加しており、今までの体制だと全ての任務をこなす事が難しくなっってきた。
そこで今年からは、院生の部隊を用意し、ある程度高難度のものを請け負うことにした。その分のしわ寄せで、優秀者チームにはチームメンバーのみで任務に挑んでもらう」
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場所が変わって308ミーティングルーム。
ガイダンスが終わり、早速任務が割り振られるらしい。
だがそれを待つメンバーたちの表情は暗い。
それでなくともトップチームには骨のある任務が回って来がちだというのに、誰のサポートもないというのを先程聞かされたばかりだ。
平気そうな顔をしているのは、矢月と山城くらいだ。あの榊ですら若干軽口のキレがない。
「待たせたなお前ら...って、随分辛気臭いツラしてんなあ」
秀島は部屋に入るなり状況を理解したのか、うーんと頭をかいて、
「まあ、なんだ。水城の野郎はガキが嫌いだからああ言ってるが、今回の件でいいこともある」
何と励ますような素振りを見せ、皆は “いいこと” の内容よりその事実に驚きを隠せない。
「学生任務の成績によっては、外部からスカウトがくることもある。それは去年までもそうだったが、院生がつかない、学生のみの任務ってのにさらに注目が集まるはずだ」
つまり、より高名な組織からスカウトをもらいやすくなるという訳だ。
にしてもこの秀島、案外面倒見がいいのかも知れない。少なくとも水城より学生を見ている事は確かだ。
「さあ! うだうだしてても始まんねえ。 もう案件は割り振られてるからな。早速メンバー発表するぞ」
「うそだろ!」
「え、いきなりですか!」
「っるせえ! 黙って聞け」
あまりに急な展開にブーイングが上がるが、そこは強引に押し込める秀島。
「初回だから簡単な案件だ。安心しろ。1つ目は害獣駆除だ。メンバーは一条…」
いきなり呼ばれた。
「加古、榊、山城、以上4人だ。今から隣の部屋でリーダー決め、移動スケジュールの作成をしろ。交通費は後日支給されるから気にすんな。終わったら事務室に報告して、後はスケジュール通りに行動しろ。じゃあ行け」
本当に急だ。
さすがの矢月も少し不安になってきた。
次回! ドキドキ移動編。榊だけでなく山城も柚子葉と絡もうとする中、矢月と柚子葉はどうするのか!




