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僕らは死にたい  作者: あくまでも悪魔
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第二話

「…お前ら、何者だ?」



目付きが怖い男性がドスの効いた声で話しかけてきた。…確かに、足が透けている幽霊と、その幽霊を傍らに連れている人なんて、怪しいに決まっているだろう。


「…わ、私達は怪しい者ではないです…!家にいたはずなんですが、気がついたらこの洞窟にいました…。目を覚ましたら、幽さん、こちらの幽霊さんがいたんです。記憶喪失のようなので、ここの場所の詳細も、わからないと思います…。」


「そうそう、経緯は司ちゃんの言う通りなんだ…。僕、ここの場所も知らないし、そもそも幽霊になっていることも信じられてないし…でも悪い幽霊じゃないよ。本当さ!」


「…司、ってのは、その女の名前か」


「…は、はい。私の名前です…」


それを聞き、茶髪の男性は、顎に手をあて、更に顔を険しくし睨み付けてきた。すると、今まで黙っていた白いセーラー服を着た、ピンクのツインテールの女の子が口を開いた。



「…ホログラフィー、ではなさそうだね!それを搭載してる機械もここには見当たら無さそうだし…まさか、本物の幽霊が見れるとは~!一生見ないと思ってた!」



あはは、と、今の殺伐とした空気に似合わない笑顔を見せる。


「それで?司ちゃん?が言ってたけど、幽霊さんも記憶喪失らしいね~?実は私もなんだ!」


そう言うと、彼女はニコニコと笑顔で私の目の前に近寄ってきて、私に手を差し出せて見せた。何かしてくるのか、と思い少しの間固まっていると、女の子は私の様子に気づき、少し困った笑顔でこういった。


「握手だよ握手~!今いがみ合ったって何も生まれないでしょ?」


「あ、はい…よろしくお願いします」


ずいぶんコミュニケーション力が高い子だ。記憶喪失なのに、不安にならないのだろうか。そんな疑問を抱えていると、その女の子は、幽さんのところにも近寄り、握手をしにいった。だがやはり相手は幽霊なので、幽さんの手をとろうとするとすり抜けてしまった。


「わぁ、本当に実態がないんだね!手がすり抜けちゃった!じゃあエア握手でよろしく~!」


「うん、よろしくね。」


そして、お互いブンブンとエア握手をし始めた。そのお陰か、少しは空気が和んだように思えた。

それを見ていた男の人は、呆れ顔で手を首の後ろに持っていき、何か折れたようにため息を一つ吐いた。眉の間のシワが無くなり、ぶっきらぼうに話始めた。


「あほらし…まぁ、敵がわざわざ仲間の情報漏らすわけねぇしな…今のところはその言葉、信じといてやる。…俺は遥。愛内 遥だ。」


「私は湯澤 司です…。」


なんとか場が収まった、と安堵の息を吐いた。

私たちの会話で自己紹介の流れが始まったようで、隣でピンクヘアの彼女が、うーんと声を出しながら渋い顔になり、何か考えているようだった。


「んー自己紹介するにも名前が…あ、じゃあ、私は天使ちゃんとでも呼んでもらおうかな!可愛いから♪」


「…それ自分で言うんか…で、お前はなんて呼べば良い?」


そういって、遥さんは幽さんに指を指す。幽さんは少し驚いた表情をとったが、すぐに笑顔になった。


「僕は幽でいいよ。幽霊からとって幽。さっき司ちゃんにつけてもらったんだ」


「ほ~、良いねぇ、呼びやすいし!さすが司ちゃん…私も名前つけてもらえば良かったな…」


「お前は俺の中でピンク頭で決定だがな」


「うぇ~可愛くない呼び方…」


「呼んで欲しい基準が可愛いか可愛くないかなんですね…ふふっ」


さっきまで雰囲気が悪かったのに、いつのまにか仲睦まじく話せるようになっていて、心の中が温かくなった。そうだ、人と話すことって、こんなに楽しいものだった…なのに、いつから私は…

そう思い耽っていると、幽さんが私の顔を除き混んできた。


「大丈夫?司ちゃん…具合悪いのかい…?」


「あ、いえ、大丈夫です…!」


「ま、急にこんな知らねーところにほっぽだされて、平気な奴なんていねぇよな…ここも氷で覆われてんのに寒くないしよ…」


「うんうん…体感温度が感じられないっていうか…不思議な感じ。」


もう一度、ぐるっと目でここの状態を確認してみた。最初にいた場所と似たようなところだ。通常、洞窟は肌寒いはず。それに加えここは氷で覆われているのに、なぜか気温を感じられない。違和感を覚えてはいたが、他の人たちも同じたったみたいだ…禍々しい空気が肌にまとわりつくようで、居心地が悪い。幽さんは幽霊だから、何も違和感はないと思うけど…


とにかく情報が足りなさすぎる。私は二人に、最初にいた場所について聞いてみることにした。


「あの…ここに来るまで何か…ありませんでした?」


「ん~、氷で覆われてはなかったよ。水色に光る湖ならあったけど…その後、不気味な岩が光る一本道通ってきたけど、特になにもなかったかな。」


「俺んとこもピンク頭と似たような感じだわ。司達は何か見つけたのか?」


私たちの通ってきた場所と同じような特徴だ…。でも、紙切れや青い靴みたいな特殊なものは落ちてなかったようだ。なんで私達のところだけ…?

とりあえず情報共有はした方が良いと思い、私はそのことを話そうとした。


「あ、実は…」


「イヤァァァアッ!!!!!!」


すると、一番大きい真ん中の穴から悲鳴が聞こえてきて、私の言葉は遮られた。


「さっき、僕を見て二人が逃げていった所だ…何かあったのかもしれない。」


「あぁ、急ぐぞ」


私たちは急いで大きな暗黒の暗闇へと駆け出した。



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