プロローグ
私は湯沢司。高校一年生だ。高校生といえば、華やかで、悩みもなくて、友達と笑いあって学園生活を送るイメージがあるだろう。でも、私は違った。私は、学校でいじめられていた。物を隠されたり、陰で悪口を言われたり…でも陰湿で、根拠となる証拠はなく、結局私は家に引きこもってしまっていた。高校になると義務教育ではなくなり、私は出席日数ギリギリだった。教室には怖くて行けなくなっていたが、それでも両親が協力的で優しかったのはせめてもの救いだ。
『死にたい。』
あの日を境に毎日のことながら、布団を被りながらそう思った。ムクッと重い頭をあげて起き上がり、カーテンを開けた。真っ正面から見えるのはベランダの手すりと青い空だけだ。なんら変わりもない景色を見ながら目を擦り、その後、思考が働かない重い足取りでドアを開け、いつも通りリビングへと向かった。
リビングに入ると、簡素なテーブルの上に、焼いたトーストと目玉焼きがラップをかけて置いてあった。その下に白い紙切れが置いてある。…私はそれを手に取った。
『おはよう。朝ご飯置いておくわね。気分が良いようだったら学校へ行って 図書館登校でいいから 今日も仕事遅くなります。』
罪悪感に苛まれ、顔をくしゃっと歪める。私が悪いんだ。もっと精神面的に強ければ…そんな思いを胸に、そっと紙切れを机の上に戻した。
パジャマではムズムズするので、家にあった紺色のジャージに着替える。いたってシンプルで、動きやすいのだ。朝ご飯はキチンと食べてお皿を洗って置いておいた。手を吹きながら自分の部屋へ戻り、ボフッと布団の上に仰向けで横たわる。
「はぁ…ほんとう、死にたい…」
迷惑をかけていることが辛くて辛くて仕方がないし、いじめっこ達に立ち向かう勇気もなくて、それならばいっそ、塵になるなり溶けてなくなりたいとも思った。私は立ち上がり、窓を開けてベランダの下を覗き見た。…かといって、人間は楽に死ねるものじゃない。恐怖感が勝って、私はすぐにやめよう、と思いとどまり、部屋に戻ってカラカラ…ピシャッと音を鳴らしながら閉めた。
それから布団に潜り込んで目を閉じた。いつも目が覚めたら眠れない体質だったのだが、今日は違ったようだ…温かいぬくもりに包まれて、私は眠りに落ちていた。
ピチョン…ピチョン…
水滴が垂れる音と肌で冷たい空気を感じ、私はうっすらと目を開けた。
「__っ!?ここ、どこ?!」
そこは暗い洞窟のような空間だった。上を見ると鍾乳洞が連なっており、すぐ隣には綺麗に青白く光る湖と、不気味に青く岩が、真っ暗な道を少し照らしながら並んでいた。辺りは薄暗かったが、岩のおかげでか青い光で自分の付近は照らされていた。
「私…家にいたはずだよね…」
ひんやりとした冷たい空気に寒さを感じ、腕をさする。ふと下を見ると何故か裸足だった。
「…私、拉致でもされたの?家にいる状況で?」
だが、なぜか足元は冷たくない。
…夢ではなさそうなので、ずっとここでつっ立っている訳にもいかない。人を探して誰かと合流することを目標にとりあえず進んでみるかと思い、一歩、足を踏み出そうとした…その時だった。
「ね…ぇ…」
知らない低い男の人の声が後ろから聞こえてきた。私は不気味に思えて手足が硬直した。
大丈夫だ、この世で怖いのは人間だけ、大丈夫だと心の中で唱えながら、ゆっくりと後ろを振り向くと…ごく普通の、優しそうな青年がいた。
「…よ、良かった、人に会え…て…」
ホッとして視線を下に下げると、彼の足が___透けていて、なかったのだ。
「イヤァァァァア!!!」
「うわぁぁぁあ!?!?」
「うわぁぁぁあ!?!?」
私が驚いて悲鳴をあげると、その声に驚いたのか、私に続くように悲鳴をあげた。
私たちの最悪な絶叫のコーラスは、山彦のように洞窟中にグワングワンと響き渡った。
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作者よりコメント
『ご覧の皆様、まずはこの作品を覗いて頂いてありがとうございます。
この小説を書こうと思ったきっかけは、とあるニュースから始まりました。
「いじめによる自殺」 ここ最近増えてきていますよね…ニュースには報道されていない事件も多く、様々な自殺者がいると思うと心苦しくなりました。そんな中思い付いたのがこの小説です。自分もいじめを経験し、そう思っていた時期があったので現実味はあると思います。様々な自殺の思考になるきっかけを練ったので、もしかしたらキャラクター達の環境に共感できるところもあるかもしれません。
この小説で見て頂いた方が、少しでも心救われればいいなと思い制作しています。
まだ未熟で表現力が拙く、似たようなお話もいくつかあるかもしれませんが、もし自殺を考えている方がいらっしゃれば、この作品を見て、「あぁ、そうか。自分ももしかしたらこんな気持ちなのかもしれない」と思いとどまって頂ければ幸いです。 それでは、本編をお楽しみに…!』
キャストさん方にこのキャラクター達に声を充てて頂いております。良ければ是非お聞きください!
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