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ロストスペル  作者: 海老飛りいと
第4章.機械都市
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93 新しい仲間

俺が頷くのを待って立ち上がる、彼女の可憐な横顔を観察する。

ユーレカは人形のような服を着ている……というよりも自分で選んだ物ではなく他の人が選んだ服を着せられているような雰囲気がある少女だった。

服装だけ見ればとてもおとなしい。おしとやかそうな風貌をしている。

だが、話せば非常に活発な娘だ。


表情筋が元気に動くために幼く感じられる時もあるが、歳は予想した通りコズエ辺りに近いと本人も言っていた。はきはきと話すし彼女の立ち振舞いには頑固そうな芯もある。

食べっぷりには驚いたがきちんとした所作も心得ているらしい。


もしかしたらどこか良いところの貴族のお嬢さんが家出をしてきたのかもしれない。

彼女の金髪は光の当たり方によって黄緑がかっているようにも見える。

頭の上を通して右肩に垂らしている細い三つ編みは彼女が自身で結っているのか使用人にでも結わせているのか、いずれにせよ慣れた人が整えたのだろう。綺麗な形でまとまっている。


「改めまして。私はユーレカ。で、こっちはメナちゃん。今朝、きんもちわるぅいストーカーから逃げてたところをマグ先生に助けて頂きました!」


ユーレカが丁寧にお辞儀をし、二度目になる自己紹介に「それで」と付け加える。


「私、マグ先生に恩返しをしたいので……しばらくここに住まわせてください!」


「えっ? す、住む? って魔法学校に?!」


「あらあら。まあ。そうですか……」


またとんでもないことを言い出したものだ。

思わずスープを噴いて椅子からすっ転びそうになってしまった。

あっけにとられる俺の向かいで、おっとりとした顔をしたままビアフランカが一同へ振り向く。


「ええと、みなさん。どう……しましょうね?」


ビアフランカの表情は俺と初めて会ったときと同じ、穏やかだが少し困ったように眉が下がってしまっていた。

俺自身ユーレカを不審者から助けたのは本当だし、彼女の好意も感じ取っている。


(いや、いや。でも……そりゃあ、なあ……)


しかし、ビアフランカの困り様からして、朝飯が済んだら住所を聞き出して家へ送ってあげるのが筋だろうと俺は思う。

然り気無くビアフランカに目配せをしてみるが、


「いいと思うぜ。また変な奴に絡まれてもここなら強い先生達がいるしさ! ユーレカのこと、俺は歓迎だぞ」


ニッと笑って言ったのはいつも元気なジェイス。

割り切りが良いというか、少し単純な馬鹿でもあるがこういうときの明るさには感心する。

今朝収穫したトマトをうまそうに頬張りながら隣のアプスと「なあ? いいよな?」「いや僕は良いなんて言ってないぞ」とつつきあっている。

彼らの様子に他の生徒たちも顔を見合せ、


「……そうね。確かに。追って敷地に入ってきたっていう不審者のことも詳しく聞かせて欲しいし」


「ふむ。コズエがそう言うならば仕方がない」


「ユーレカさん、大変だったんでしょ? ここなら安全だし気が済むまでいなよ。あっ、でも先生のお手伝いはボクも一緒にするからね」


「せーも、メナちゃんといっぱい遊ぶですよ」


「ぴゃい!」


セージュの笑顔に飛び跳ねて返事をするメナちゃん。朝からすっかり打ち解けた様子だ。

納得のいかなそうなアプスとわけがわかっていなそうなディルバーを除けばあとは全員が俺の返答待ちといった様子だ。

皆の視線が俺とユーレカのほうに向けられる。


「……わかったよ。皆がそういうなら俺も反対はしない。落ち着くまでここにいたらいい。その代わり気が済んだら俺が家まで送るから、あとで親御さんの連絡先を教えてくれよ」


「ありがとうございます!!」

「ぴゃーんっ!」


こうして魔法学校に少女が一人と謎の生き物が一匹。新しい仲間が増えたのであった。

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