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ロストスペル  作者: 海老飛りいと
第4章.機械都市
93/140

92 皆と一人と一匹で朝ごはん

朝ごはんの支度が終わり皆集まってのいつもの朝礼の後。

食卓の一同皆が皆、今日の特別なゲストの様子から目が離せないでいた。


「んー! おいしー! もう一個! もう一個だけ頂いてもいいですか?」


「も、もちろんだよ。よく噛んで食べてね……」


「ありがとうございまぁす! ほらメナちゃん、こっちも美味しいよ」


「んぴゃぴ! ぴゃあっ! ぴゃっ、んぴんぴ」


ユーレカもメナちゃんも余程お腹が空いていたのだろう。

唖然とするみんなの前でがつがつもりもりと威勢よく朝ごはんを平らげていく。

野菜スープのおかわりは三杯目。パンは五個め。ゆでたまごは八個(ワンパック分まるまる)かける二人分。いや、正確には一人と一匹か。

吸い込むように食べる食べる。


細身のユーレカもさることながら小さな体のメナちゃんまでまるで底なしの胃袋の持ち主のようだ。

二人とも美味しそうに食べているので誰も止めることはせず、つっかかり性で文句言いのディルバーでさえ彼女らの食べっぷりに圧倒されて何も言えなくなってしまっていた。


彼女たちが俺の隣で皆と朝ごはんを共にしている理由は席に着く前に簡単に説明してある。

案の定、快く迎え入れてくれたのはビアフランカと畑仕事の時から事情を知るジェイスやセージュくらいなものだった。

もとから警戒心の強いアプスやコズエは彼女ではなく連れて来た俺を疑いの目で見ている。


「うーん……?」


スーは俺と距離の近いユーレカに首を傾げながらも、興味があるのかおっかなびっくりにメナちゃんのぴこぴこと動くお尻を見つめている。


そんな空気はお構いなし。ユーレカたちは物怖じすることなくせっせと食べ物を口に運んでいた。

彼女らまるで何日も食べていなかったようじゃないか。と、溜め息が出る。


「ねぇ、ユーレカさん。このこ触ってみてもいい?」


「うん? メナちゃん? どうぞ~」


いただきますの挨拶のあと誰もが何も言えないでいる空気を最初に割ったのはスーだった。

眺めていたメナちゃんを指さしてユーレカに聞けば、ユーレカも食べる手を止めてテーブルの上にメナちゃんを差し出す。


「ぴゃっ……?」


「わぁ。ふわふわでもこもこだぁ……」


恐る恐るスーがふかふかな毛に手を添えてそっと撫でるとメナちゃんは心地よさそうに目を細めた。


「だ、大丈夫なのか? それ魔物なんじゃ……」


「大丈夫みたい。かわいいよ。あっくんも触らせてもらう?」


「ぼ、僕はいい。ここ、こっちに近づけるなよっ!」


スーの行動に反応したアプスが言えば、メナちゃんはきょとんとした顔でアプスの方を向いて小首を傾げる。

子犬や子猫未満の小動物のような愛らしい動きだがそれでもまだアプスは警戒を緩めないでいるようで、メナちゃんを抱き上げ膝に乗せるスーを睨んでテーブルの上の手をひっこめた。


「そう、それでさ。俺らが畑でトマト採ってたらさ、急に庭から真っ黒でぐちょぐちょってした怪しい奴が入ってきて。マグ先生がやっつけたんだ。先生むちゃくちゃかっこよかったんだぜ?」


「それはもう聞いたわジェイス。それよりも彼女たちのことを……」


「そ、そうだぞ新入り! 俺よりいっぱい食べるとは貴様、少しは遠慮をしろ!」


「貴方が口を挟むとややこしくなるからちょっと黙っててディルバー」


「う……うむ」


緊張がほどけ連鎖するように会話が広がっていく食卓。

ジェイスが話す隣でこくこくと頷くセージュに、ユーレカたちのことを詳しく説明するように言うコズエと彼女に便乗して文句だけ言いたそうにしたディルバーが続くも論破される。

各位を見渡しどう解説したものか考えていると、料理に満足したユーレカが話を始めようと俺にアイコンタクトを送ってきた。


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