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ロストスペル  作者: 海老飛りいと
3.5章(3章後日談)
78/140

77 ちょっとぶり

そうと決まれば善は急げ……でもないが、俺はすぐ行動に移った。


「ちーっす! マグちん、ちょっとぶり~」


「こんにちは、ミレイ。警邏の仕事中?」


レシート整理と同日、街中。巡回中のミレイとばったり出会い挨拶を交わす。

パトロールをしているものと思ったが彼女は片手に瓶入りの苺牛乳とロールパンを持っていた。


「いや……サボりか? それ」


「ノンノン。ゥチらは好きな時間に休憩していーの。いつ飯がとれなくなるかわかんないから腹が空いたときにとっとけ、ってさ。隊長の'おコトバ'なんだょね」


近くの木箱に瓶を置いて煙草を吸う物真似。ミレイもジンガの言い付けが彼が煙草を吸いたいときのための詭弁だと解っているようだ。


ファリーの一件でマグは王国騎士団(バテンカイトス)でのちょっとした有名人になったらしい。

あの夜の森での出来事以後、ファリーに襲われた人々の敵討ち……なんて言い方はどうにも。なのだが、とにかく彼等を安心させるための材料にはなれた。


何より俺は今まで誰も口答えしようとしなかった銀蜂部隊の隊長と副隊長に食って掛かった(結果論だ。不可抗力だ)怖いもの知らずとして名を広めていたのだった。


ミレイ曰く戦いの中で燃え尽きて消えてしまったカナンは無事らしい。

だが暫く力が戻るまで実体を表すことが出来ないのだそうで、


「そそ、あとねぇ隊長からマグちんへの伝言。『これに懲りたらテメェんとこの剣のガキには無理させんなよ』って」


「ジンガさん、アプスが精霊だって気付いてたんだ」


「まー、隊長はカナンちゃんとも長ぁ~いからね。あーしらよりもずっと精霊のコトには詳しーよ」


「なるほど。カナンさんも精霊、だったのか。ところでその、ジンガ達なんだけど、今って……」


「ぇ? 隊長? 隊長達ならちょーど今朝、機械都市に出発したトコだょ? マグちんタイミング悪っ」


ジンガとイレクトリアは二人揃って出張中。

しかも今朝方出発した。よりによって行き場所までもが何の巡り合わせなのか噂の機械都市。

対ファリーの際のカナンのことで殴り合いの喧嘩をし、ジンガがイレクトリアの頭を文字通り吹っ飛ばしてしまったらしく、機械都市へ調律に行っているとのこと。

治療や治癒ではなくて調律との言い方に何かがつっかえる。


「だったら機械都市へはどうやって行くの?」


会話の流れのままに一番聞き出したかった情報を然り気無く聞けば、


「急用? ってか、マグちん機械都市行ったときナイ系? ゥチらより長く生きてそーなのに」


ミレイは苺牛乳を飲み干して猫耳をぴこっと揺らした。


「行ってみたいん? んーでも、あすこはアテが無いと(キビ)いっしょ?」


「アテ……?」


「誰でも馬車でビューンどぞーって場所ぢゃナイんだょね……なんか、検問?トカがケッコーあって。誰かに招待でもしてもらんなぃと……」


困ったな。と、相槌を打つ俺に少し考える素振りのミレイ。

「あーしの武器も機械都市製だけど実際に行ったコトないし。どぅもしてぁげらんないケド」と、一言置いた後、


「もしかしたら、治癒団(リント)の人達ならなんか解るかも?」


「リントって、十字蛇竜治癒団(リントヴルム)?」


「そそ。アノ人らなら機械都市を行き来してるらしぃし何かわかんじゃなぃかなーって」


ファリーの件で街の負傷者たちを看てくれていた治癒団(リント)といえば、揃いの白衣と金色の十字の印を持った人々のこと。

ミレイから詳しく聞けば医療技術の提供や研究、病人の診察を行うために彼らは機械都市を度々訪れているという。

先ほど話題に上がったジンガとイレクトリアも機械都市に用事があるというよりも、看てもらえる医療機関が機械都市にあり、そこに向かったというのが正しいそうだ。


「ありがとうミレイ。じゃあ治癒団(リント)の人を探してみるよ」


「ぃてら。まったねー! マグちん」


元気な挨拶を背に散策は続く。



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