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ロストスペル  作者: 海老飛りいと
第4章.機械都市
102/140

101 機械の人

***


(うぅ……なんてこったい……)


エルトから逃げ切ってマグ先生と出会って、これから一緒に機械都市に行くことになったのに。

ここまでトントン拍子に進んでいたのに、こんなところで引っ掛かっちゃうなんて思わなかった。

おのれ機械都市め。メナちゃんを連れて行けないだなんて。聞いてないよ。聞いてない。


「ぴゃゆっ?!」


「だーめ! ダメダメっ! 触んないで!」


手袋をつけた係員の手が伸びてきても、メナちゃんは私の胸に顔を埋めて離れない。

私だってこの子を手放す気はない。


だってだって、メナちゃんは私がこの世界に来て一番最初の友達で、大切な相棒で……この子がいなかったらこれまでだって笑顔で生きてなんてこれなかったと思うから。

知らない大人に怯えて震えているメナちゃんをぎゅっと抱き締めて、


「ゆーゆぴ? んぴぴょぴ……?」


「大丈夫だよ、メナちゃん。なんとかするから私に任せて」


心配そうに私を見上げてくるこの子の頭をよしよしと撫でてあげる。

そうだよね。メナちゃんは賢いから私たちが言い争っているのが分かるんだもの。

融通のきかない係員さんにはどうにか私の話を理解してもらわなくちゃ。このユーレカさんに任せなさい。

と、もう一回口を開いたその時だった。


「お困り事のようですね。いかがなさいました?」


白い燕尾服を着た執事風の男の人が私と係員の間に割って入ってきた。

背はマグ先生よりも高くて髪の長さも中髪くらいかな。エルトよりもちょっと毛量があって襟足が短い紺色の髪で、黒い磁石みたいな形のピアスを片耳にたくさん付けている。


でも、ピアスなんかより目立っているのはその人の肌の感じ。

服に負けないくらい色白なんだけど、左側の頬や首の辺りが傷だらけでヒビが入っている。

ううん、よく見たら怪我ではなくて。その部分に何か電流のようなものが走ってチカチカ短く連続して発光しているみたい。


コンセントを勢い良く抜いた時に一瞬だけ見える電気の光みたいに、肌の上で光っている。

リモコンの蓋のネジを外して開けて中身を見たら入っている基板みたいなものが肌の下にあって、その回路の上を肌で覆ってあるみたい。

光はその部分にある。体の中に電気が通っているかのようだ。


(なんか、SF映画に出てくるサイボーグ? みたいな人……あの人の体、機械で出来てるのかな?)


イメージとしてはそんな感じ。

機械都市って言うだけあって、もしかしたらアンドロイドとかターミネーターだとか、そういう感じの機械人間がいるのかもしれない。

いるとしたら今目の前に来たこの人がちょうどそんな感じの人みたい。

そう思いながら見ていると、


「コルベール様。それが……」


私と口論していた検問係の一人がその男性の名前を呼んだ。

コルベールさんは片手を上げて彼の言葉を一旦止め、私のもとでうずくまっているメナちゃんを見る。


「ああ、なるほど。貴女はその子と同伴がしたいのですね。でしたら……」


正面で見ると益々無機質でロボットみたいな顔してる。

左右が整いすぎている。不思議で変な肌。健康不健康では言い表せない白肌の上で青い電気がピカッと踊っている。


「こちらはいかがでしょうか?」


コルベールさんは私に優しげな笑みを浮かべながら手を差し伸べた。

笑ってはいるけど何となく違和感がある。

その手にはいつ用意したのか、犬や猫などのペットを入れて運ぶキャリーケースのようなものが提げられていて。


「最新鋭の技術を施したケースです。非常に強固で耐久性も高く、魔物が踏もうと割れませんし、海底の水圧にも耐えられます。絶対に壊れません。それにいくら大暴れしても内側からは開けられないように作られています」


つらつらと長い台詞を噛まずに述べるコルベールさんについ感心して聞きいってしまった。

商談をする人の定番の文句。どこかで聞いたことがある懐かしいかんじ。

ああそうだ。これはまるで早朝のテレビショッピングの謳い文句みたいだ。

現れた機械人の彼は手練れの販売員かなにかなんだろうか。






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