#004.ステータスオープン 「スキルポイントが300も増えてた件について」
「ステータスオープン」
俺は自分のステータスを開いた。
さっき檻の中の彼女と見つめ合うのに忙しくて、システムメッセージを聞き流していたのだが……。
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名前:ダイチ
種族:ヒュース ♂
年齢:25
職業:平民Lv1
HP :11/11
MP : 5/ 5
STR:12
CON:10
INT: 9
WIS: 7
DEX: 9
AGI:10
CHA:10
LUK: 8
装備 :平民の服
スキルポイント:300
▽▽▽
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あった。ここだ。スキルポイントのところだ。
前は0ポイントだったのに、300に増えている。
システムメッセージは、スキル『ヨメクル』が分解されたとか、還元されたとか言っていた。役目を終えたスキルが、スキルポイントに化けたわけだ。
あれ? じゃあスキル自体は?
ステータス画面の2ページ目を見てみると――。
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スキル:
『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』『ヨメクル』
▽▽▽
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うわぁ。ストップストップ!
変わってないじゃん……。
分解されて、なくなったのは、1個だけっぽい。あと何個あるんだよ。
まあそれはあとでいい。
いまはスキルポイントの使い道だ。
スキルポイントを、どうやって使えばいいのか、しばらく迷ったが――。
頭の中に浮かぶ、「スキルポイント300」という部分に意識を集中すると、取得可能スキルの一覧がでてきた。
いまの職業が平民Lv1なものだからか、取れるスキルは少ない。
しかし、その中に――。
あった。これだ。
『大陸共通語/読み書き』1ポイント
《スキル『大陸共通語/読み書き』を取得しました》
システムメッセージが聞こえてきた。
ステータス画面にも反映されている。
スキル画面の1画面目に、無数の『ヨメクル』の前に、きちんと『大陸共通語/読み書き』と出てきている。
そして――。
「うお。読める」
さっきからそこに立っている代読士が、ちっ、と舌打ちしたのが聞こえてきた。
すまん。商売の機会をなくさせて。
だがこちらもこの世界で暮らすなら、読み書きぐらいできないと――。
……ん?
共通語の読み書きが、たったの1ポイントで取れるスキルなら、なぜ、代読なんていう商売が成り立つんだ?
平民Lv1の俺でも取れたスキルなのだから、取得条件とかがもしあるとしても、簡単なはずだし。
みんなスキルで取ればいいだけでは?
まあその疑問は、あとでいいか。
まずは張りだしてある依頼書を……。
日本語と同じように異世界語を読めるようになったので、数分間ほどかけて、依頼書をざっと眺めてみた。
だいたいが買い取り依頼。これは常時依頼となっているようだ。
毛皮だの肉だのの買い取り価格が記してある。ただし書いてある動物あるいはモンスターが、どんなものなのか、俺にはわからない。「ミミルフィ」だの「ポトトマス」だのいう名前は、読めたとしてもわからない。どんなものなのか、想像もつかない。
ウサギやオオカミといったものならわかるが、そういうものの素材は、えてして安い。
金だ。金がいるのだ。
他には運搬の依頼があった。
運搬の依頼の相場は、日給100ギルぐらい。日本円にすると日給1万円か。向こうでも肉体労働の相場はそんなものだった。
労働系の仕事は、冒険者がやる仕事でもない気がする。いや冒険者向きなのか? ギルドのなかにいる冒険者たちを見てみると、皆、いいガタイをしているし……。
報酬が高額なものといえば、護衛の依頼や、討伐の依頼だった。実入りは労働系の数倍だ。さすが冒険者っぽい仕事。
だが冒険者ランクがFでは、受けられるのは隊商の護衛ぐらいで、しかも対象はパーティ限定ときた。
高額といっても片道7日で5000ギルとかなので、パーティの人数で割れば、労働系と大差ないかもしれない。こちらは途中で戦闘があったときには危険手当がつくらしいが。
結論。
「だめだ。金にならん」
あっれぇー? 冒険者って、金になるんじゃなかったっけー?
これだと日雇い労働者と大差ない感じなんだけどー?
ひょっとして、選択、間違えた?
「この近くに迷宮は?」
カウンターの受付嬢のところに戻って、そう聞いてみる。
「ありますよ。初級と中級と上級が」
「おお」
やはりあったか。迷宮は。
「街の東西南北に。初級は東です。入口で冒険者カードを見せれば入れますけど、Fランクでソロですと、初級までしか入れません」
「それで結構。あと、迷宮って……。稼げる?」
そこが大事。
「魔石の買い取りはいつでもやってます。低ランクの魔石は安いですけど。高ランクになりますと、かなりの買い取り金額になります」
「おお」
魔石っていうのは、たぶんあれだな。モンスターを倒すと手に入るやつだろう。
「黒茶赤橙黄緑青紫灰白、という順で――」
「ああちょっと待って。メモるから」
「初級迷宮だと、赤までしか出ませんから、黒10ギル、茶20ギル、赤50ギルと覚えておけばいいてすよ」
「なるほど」
三つくらいなら覚えられるが、いちおう、カウンターのうえにあったメモ用紙とペンで、メモをとっておく。
「ダイチさん。文字書けたんじゃないですか」
「さっきは書けなかったんだ」
「エマです」
「――ん?」
受付嬢は、胸のネームプレートを指差して、もう一度名乗った。
「私の名前。エマです。――覚えておいてくださいね。魔石の買い取りは、ぜひ私、エマにご用命を」
とびっきりの営業スマイルをもらってしまった。
次回、迷宮に潜り……ません。武器防具、装備を買ってきます。
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