#032.オークを倒してプチお金持ちになった 「お金って大事だと思った」
時間をだいぶ残して、俺たちは地上に戻った。
中級迷宮の一層目のほかに、二層目にも踏みこんだ。
キャタピラーとかいうイモムシ系のモンスターがいて、楽だがあまり美味しくなかったので(金銭的な意味で)、一層に戻って、オークを狩りまくった。
メイジの呪文をブレイクさせるだけなら、ファイヤウォールを狙って出せばいいということを発見してからは、二匹の群れも狙っていけるようになった。
メイジの足下に一直線となるようにファイアウォールを出してやるのだ。直線の延長上に、二匹までなら巻き込める。
魔石が小額の色ばかりだが、ざっくざく。
武器防具の装備品も、安物ばかりだが、ざっくざく。
アイテムストレージがあるので運搬は問題ないが、あまりたくさん溜め込むと大変だろうと考えて、今回はこのへんで切り上げることにしたのだ。
俺たちは人目につかないところで、おたがいのバックパックに荷物を詰め直した。
ハルナのバックパックには魔石を詰めこむ。
俺のバックパックは武器防具を詰めこむ。当然、入りきらないので、予備の革袋を三つ使って、そちらも満杯にした。
アイテムストレージのことは俺とハルナだけの秘密だったし、マジックバッグなんて高価な代物をDランク冒険者が持っているなんて思われるのもうまくない。
ギルドや店のなかで出すわけにはいかないので、こうして路地でこそこそと移し替えているわけだ。
「では。冒険者ギルドで換金してまいります」
「ああ。俺はこいつを武器屋に売ってくる。――あとで宿屋で会おう」
「はい。行ってまいります」
ハルナの後ろ姿を見送ってから、俺は、自分の荷物に目を向けた。
はぁ……と、ため息がでる。
金属製品がぎっしり詰まっているので、すんげえ重たい。
ハルナのほうに軽い魔石を預けたのは、男として、まあ当然の選択だ。
STR(筋力)は、ハルナのほうが大きいんだけどねー。
そのうち抜かそう。絶対にだ。
◇
「しめて。1万3千ギルだ」
「おおう」
「……なんだ? 不満か?」
武器防具の店のオヤジは、俺をギロリと睨んできた。
このオヤジ、顔に大きな向こう傷があるから、怖いんだよなー。
「いや……。けっこういったもんでな。びっくりしただけだ。その金額でいい。買ってくれ」
安物のゴミみたいなものばっか、とか思っていたのだが、本数をまとめると、けっこうな金になった。
ハルナを身請けするための三万ギルを稼ぐために、あくせくしていた時のことを思い出す。
中級迷宮に挑む冒険者になっていれば、意外とすぐだったのかもしれない。
ハルナに預けた魔石のほうも、けっこうあったはずなので、俺たちはちょっとした金持ちになっているはずだ。
こっちが1万3千ギルとして、あっちが1万か2万ぐらいとして――。
しめて3万ギル前後か。日本円にして300万円か。
すげえな。異世界。
日当300万円かよ。
いや。二人だからその半分か。それでも日当150万円かよ。
やっぱすげえな。異世界。
「そうだ。普通のロングソードって、売値っていくらだ?」
俺はふと思い立って、そう聞いた。
一つ一つの買い取り価格は、面倒なので聞いていない。
「800だな」
「さっきのなかに、鉄のロングソードがあったら、一本、残しておいてくれないか。かわりにこっちを売る」
自分の使っていたロングソードを渡して、かわりに、ほぼ新品の一本を受け取った。
腰に差す。
新品と刃こぼれした使い古しとで、買い取り価格が変わらないのが不思議だったが……。鍛冶屋のスキルかなにかでメンテできるのかもしれない。
金を稼いだら、武器と防具をいいかげんグレードアップさせるつもりだったが……。
ハルナと一緒のときに選んだもらったほうがいい。
いまいち、どれがいいのか、俺にはわからない。
ロングソードの買い取り価格を聞いたのは、ミランダに借りていた武器のぶんだ。
どうせ売却用だったのだろうし、金で渡せばいいだろう。
俺は武器屋を出た。
懐が温かいと、気持ちも温かくなるなぁ。
昔、どこかで聞いたことがある。
金で幸せは買えない。だがお金がないと、幸せになれない。
お金があったことで、ハルナを見受けすることができた。
幸せをお金で買ったわけではないが、お金がなかったら、この幸せはなかったわけだ。
うん。お金って大事。
俺はハルナの待っているはずの宿屋に向かうことにした。
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