#023.服屋と武器屋にも寄っておく 「ご主人様はどちらがお好みですか?」
一杯、二杯を引っ掛けたところで(といってもミルクだが)、退座させてもらうことにした。彼らはこのまま夕方まで、さらには深夜まで、ずっと宴会をやっているらしい。
とても付き合いきれない。
昼から夜まで飲み続けとは、冒険者というのは、こういうものなのだろうか。
予定通りに、服屋と武器屋とを回ることにする。
服屋では、俺とハルナ、二人の服の予備を買わないとならない。
お互いに着の身着のまま。これからの生活を考えると、一着ずつは予備が欲しい。
ハルナの着ているような服の予備を買おうと思ったら、戦闘用のバトルドレスは特注品だと言われた。
それはまた今度ということになった。
そういえば武器と合わせて2万5千ギルもした品だ。いまの手持ちでは足りるはずがない。
普段着として普通の服を買うことにした。あと換えの下着だとかも――。
好きに選んでいいと告げたのだが、ハルナは「ご主人様はどちらがお好みですか?」と、俺に聞いてくる。普段着とかならいくらでも聞いてくれて構わないのだが……。下着まで聞いてくるのには困り果てた。
下着は、かぼちゃパンツみたいなものと、現代世界のものに似た伸縮するゴムみたいな素材を使ったものとがあった。後者のものは、デザイン的に向こうの世界とあまり変わっていない。
……いや。女性用の下着なんて、そんなにまじまじと見た覚えなんて、あるわけないので、正確にいうと、よくわからないのであるが。
「うわー……、うわ……、すごいです……、すごい伸びます……」
ハルナも興味津々で、みょ~ん、みょ~んと、引っぱっている。
俺の視線に気がつくと、はっ、となって頬を赤く染めた。
俺のほうも、たぶん顔は赤くなっている。
値段のほうは普通のかぼちゃパンツと比べて段違いだったが、数枚ほど、購入することにした。こっちのほうが似合うだろうし動きやすいだろうし、なによりカワイイし……。
武器防具の店で見たのは、俺の装備品だけだった。
ハルナのバトルドレスは迷宮にも潜れるような品だし、持っている二本の剣は、店主がしつこく「見せてくれ!」と言ってくるような物だった。
俺のほうの装備は、予算4500ギルで買った安物だ。
昼の食事と道具屋と服屋の支払いは、たいしたことがなかったので、まだ大銀貨6枚――6000ギルは残っている。
……って、安物を揃えたときの金額とたいして変わらないな。
冒険者は、やっぱ、装備品にいちばんお金がかかるっぽい。
日常生活を送るぶんには、5000ギル=五十万円もあれば、当面の心配はまったくいらないぐらいなのに、装備品を買おうとなると、安物ぐらいしか手が出なくなるのだ。
いちばん安い鎧の皮鎧だって、何千ギルもする。
まあ……、向こうの世界で革ツナギや革ジャンなんかを買おうとしたら、十数万円ぐらいはするわけで……。つまり、1000~2000ギルということだ。
案外、似たような値段なのかも。
そういや模造刀とかだって、よく知らんけど、何万円ぐらいはしそうだし。
そういうものなのか。
樽に何本も入れられている一本500ギルの青銅の剣を、適当に抜き取って眺めていると――。
「ご主人様。さすがにそれは、いま使っている剣のほうが良い品であるかと」
いまの剣は、ミランダから借りたロングソードだ。鉄の剣である。
……そういえば返してなかった。
ドロップ品だと言っていたから、買うより、迷宮でドロップさせるのがいいのかもしれない。こんど新品で返すか。売却金額相当を渡そうとしても、絶対、受け取ってくれないだろうな。「命の恩人から受け取れないよ」とか言って。
結局、革鎧だけを新調した。
いま着ているものは酷使しすぎて、修理するよりも買い直すほうが安くあがるということだ。
買ったのは、前と同じ最安装備の「革の鎧」。壊れかけの革鎧との交換で、しめて3000ギル。大銀貨3枚が吹っ飛んでいった。
「金、稼がないとなー」
2万ギルとかいう値札のついてる金属鎧を眺めながら、ぽつりとつぶやくと。
「ご主人様なら、そのぐらい、すぐに稼げると思います」
ハルナがそう言ってくれた。
ああ……。信じてくれる女の子がいるって、いいなぁ。
いまなら空でも飛べそうだ。
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二人の〝初夜〟まであと何日だ! 早く読ませろ!
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