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俺、この人生が終わったら、異世界行ってSSR嫁と冒険するんだ  作者: 新木伸
ハルナテーア編

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21/35

#020.ハルナと二人で食事をする 「椅子に座っていいんだよ」

 目覚めたときには、すぐそこに女の子の顔があった。


「お目覚めになられましたか」


 ぱっちりと開いている目が、俺に向けられる。


 うわっ。わわわーっ。

 顔近っ。

 まつげ。長っ。


 やっぱりこの娘は、美人だった。


 俺と彼女は、寄り添うようにしてベッドに横たわっていた。

 てゆうか。俺が枕にしていたのは彼女の腕だった。


「うわっ。俺寝てた!?」


 がばりと起きあがる。


「いま何時? どのくらい寝てた?」

「正確な時刻はわかりませんが、昼ぐらいです」


 あれ? じゃあ意識を失っていたのは、数分とか、それくらいか?


「ご主人様は、丸一日、よくお休みになられていました」


 うっわ! 二十四時間もかよ! 一度も目を覚まさずに!

 飛び起きて、ばくばくとしていた動悸もすこし収まってきて、すこしは頭が働くようになってきて――。昨夜――ではなくて、一日前の出来事を、すこしは思い出してくる。


「あの。俺……、君になにか変なことを……」


 恐る恐る問いかける。

 たしか意識の途切れる直前、欲望にまかせて不埒な行為に及ぼうとしていた記憶が……、うっすらと……。


「いいえ」

「そ、そうか……」


 彼女が首を横に振ったので、とりあえず、安心する。


「でも私はご主人様のものですので。なにをされても構わないんですよ?」


 うおう。

 す、すごいことを言う……。

 な、なにをしても…。

 ごくり……。


「ご主人様は倒れるように眠ってしまわれました。よほど疲れておいでだったのですね」

「き、君は……、一日ずっと?」


 一日ずっと腕枕をしてくれていたのだろうか。つきっきりで添い寝してくれていた?


「あ。だいじょうぶです。私はご主人様ほど疲れてはいませんでしたし。狼牙族はもともとそれほど睡眠を必要としないんです」

「つまり? どのくらい起きてたの?」

「十八時間ぐらいでしょうか」

「す、すまない」

「いえ。お寝顔を拝見させていただいておりましたので。まったく得で……。あっ。いえ。なんでありません」


「………」

「………」


 ベッドの上で、二人並んで腰掛けて、二人で無言でいる。

 そういえば、さっき、なにをしてもかまわないとか言っていた。

 なにをしてもかまわないということは、つまり、昨夜のつづきをしてもかまわないということだろうか。


 ベッドについていた手を、すこしずつ動かしてゆく。

 一センチ刻み、一ミリ刻みで、動かしていって、彼女の手に重ねようとした、その瞬間――。


 ぐう~きゅるるるる。


「……す、すいません」


 可愛らしいお腹の音が、変な気分を中断してくれた。


 そうだよな。丸一日、俺につきっきりだったということは、丸一日、なにも食べていなかったわけで――。


「まずは、なにか食べに行こうか」

「はい」


 あ。尻尾がぶんぶん動いてる。


    ◇


 一階に下りる。

 フロントというほどでもないが、宿の人を見つけて、宿代を払っておくことにする。

 宿代は1日分しか払っていなかったので、本来なら時間超過なのだろうけど。

 小銀貨1枚で、まとめて5日分ほど、前払いししておく。


 なんか見覚えのあるチビッコ兄妹を見かけた。昨日、湯を持ってきてくれたチビッコたちだ。

 今夜も頼むよ。――と、小銅貨3枚を握らせておく。

 宿の人と似てないから、たぶん家族とかではないのだろう。小学校に上がるかどうかというこんな歳から、兄妹揃って労働しているとは、異世界って大変だと思った。


 ハルナを連れて、外に出た。

 店の人の話では、近くに美味しい食堂があるらしい。


 昼をすこし回っているせいか、食堂にはいくつか空席があった。空いているテーブルの一つを選び、二人で向かい合わせに座ろうとした。

 ……のだが。


 なぜかハルナが、俺の席の後ろに回って、そこで立っている。


「ええと? ……なにをしているのかな?」

「ご主人様のお食事の世話を」

「君も座ってほしいんだけど」

「はい」


 ハルナは、床に正座しようとして――。


「ああーっ! そうじゃなくて椅子に――」


 俺は慌ててそう言った。


「ご主人様」


 ハルナは、ぴしっとした顔と声とで、俺に言う。


「……奴隷は主人と同じ席についたりしないものです」

「俺は気にしないというか。むしろ君が床に座っていたら、俺が気にする」


 女の子を床に正座させて食事するとか、どんなプレイだよ?


 俺はそこで周囲を見回し――。


「ひょっとして、店で奴隷が客として食事をするのは、いけないこと?」

「いえ。主人と一緒であれば構いません。ペット連れで入店するのと同じです」


 ペ……、ペット扱いなのか。


「とにかく座って。一緒に食べよう。いや。一緒に食べたいんだ」

「かしこまりました」


 メニューを開く。

 読み書きのスキルを取っているので、ハルナに読んでもらわなくても自分で読めた。


「なにを食べたい?」

「ご主人様のお好きなもので」


 やっぱりこう言ってくるよなぁ。


「ええと……。肉と……、魚と……」


 言いかけたところで、わかってしまった。

 「肉」のときと、「魚」のときとで、尻尾のぱたぱた度合いが違っている。


 顔はクールに取り澄ましているのに、あれ、自分で気がついていないんだろうなぁ。


「あと。サラダは?」

「ご主人様がお入り用でしたら」

「この鳥肉の載ったサラダなんてどうかな?」


 ぱたぱた。


「あとパンなんだけど」

「ご主人様の――」

「揚げた肉を挟んだパンがあるって」


 ぱたぱた。


 ……わかりやすい。


 ハルナは肉好きのようである。

 考えてみれば当然か。狼牙族というのは、狼系の獣人種族らしい。

 食生活も狼寄りなのだろうから、お肉大好きなのも、うなずける。


 肉と、肉の載ったサラダと、肉を挟んだパン――カツサンドみたいなものを二人分頼んだ。


「うおっ……。すげえ量」


 ステーキなのかローストビーフなのか、よくわからない塊が出てきた。

 一ポンドどころのサイズではなく、一キロ以上はありそうだ。

 二人分なのかと思ったら、これで一人分らしい。ハルナのまえにも、同じサイズの巨塊がどかっと置かれる。


 サラダもLLサイズ。カツサンドっぽいモノに至っては、ちょっとした百科事典ぐらいのサイズ。


「いただきます」


 ハルナは、食べるまえに、なにかしきりに祈っていたが――。俺は日本人的に、軽く手を合わせただけで食事をはじめる。


 食べはじめてみれば、腹が減っていることに気がついた。

 丸1日飲まず食わずでいて、そのあと丸一日、爆睡していたわけだ。そりゃ腹も減る。


 それでもこの量は、ちょっと食い切れず――。


 ハルナが俺の残した肉と肉と肉を、物欲しそうに見つめている。

 いや。表情的にはいつものクールさんで、一切、表にあらわしてはいなかったが、なんとなくそうだと直感した。


「食べる? ちょっと食い切れなくて――」

「いえそんなっ! ご主人様の残り物を頂くなんて、そんなこと――!」

「あ。ごめんね。嫌だよね」

「――そんな光栄なことっ!」


 あ。そっちですか。


 ハルナの健啖ぶりを、微笑ましく見つめた。

 エサ代大変そう。……などとは、これっぽっちも思っていない。ほんとうだ。

長くなりそうなので、いったん、分割します。

イチャラブ回、まだまだ続きます。


こーゆーところを描きたくて、この物語を描いてるようなもんっス!

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