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俺、この人生が終わったら、異世界行ってSSR嫁と冒険するんだ  作者: 新木伸
ハルナテーア編

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16/35

#015.第六層で遭難者を助ける 「あんた一体何者なんだ!?」

「おー……、いつつー……」


 どこまでも落ちてゆく思っていたシュートが、ようやく終わった。

 ダメージはない。しかしケツが痛い。


 俺はケツを撫でながら立ち上がった。

 しかし、ううむ……。暗い。


 これまで迷宮の中には灯りがあって、不自由することはなかった。

 だがこの場所には灯りがほとんどない。見えるのは足下ばかり。

 空気の流れとか、声の反響とかで、かなり広い場所だとわかるのだが……。なんにも見えないのは困ったな。


 灯りがあるのは遠くのほうで、その灯りというのは――。


「え? あれ、魔法の炎か?」


 遠くで火の壁が燃えていた。魔法使い系は上げていないので俺は使えないが、たぶん、「ファイアウォール」とか、そういう魔法だろう。


 その魔法の火の光に照らされて、冒険者らしき人が三人ほど見えている。

 部屋の隅に身を固めた冒険者たちは、炎の壁を張り、それでモンスターを防いでいるのだった。


 火の壁を挟んで、けっこうな数のモンスターがいた。

 モンスターたちは、火の壁があるので、冒険者たちを襲うことができない状況だ。一匹がじりじりと前に出るが、じゅっと火に焼かれて、また元の場所に戻る。


「おーい! あんたたち! 大丈夫か!」


 俺は剣を抜いて近づきながら、冒険者たちにそう声を掛けた。

 歩きながら、僧侶Lv5から戦士Lv5へと、転職しておく。最大MPは減るが、HPと近接戦闘向けのステータスがあがる。

 たぶんSTRが攻撃力で、CONが防御力だ。

 そしてDEXが命中率で、AGIが回避率か。INTとWISは、それぞれ攻撃魔法と回復魔法に関係するのだろう。


 モンスターはカエルのような姿をしていた。ただしやたらとデカい。全長50センチぐらいはある巨大カエルだ。


 炎の壁の内側に逃げこんだ冒険者たちは、俺に驚いた顔を向けている。


「え? あんた――一人で? ……こんな場所まで?」


 それ、さっきも言われた。


「あんたたちは、ミランダたちの連れか?」

「ミランダたちに会ったのか!! あいつらは――!?」

「無事だ!」


 俺はそう叫ぶと、袋を放った。炎の壁の上を越えて、向こう側に投げ入れる。

 袋の中身は薬草詰め合わせだ。上層にいた三人のほうに僧侶がいたから、こっちにいる連中には回復魔法はないはずだ。


「薬草か! ありがたい!!」


 袋の中身を確認して、相手が叫ぶ。


「じゃあ、これ片付けるから、ちょっと待っててくれ」


 俺はそう言うなり、ざっしゅざっしゅと、カエルを惨殺していった。

 カエルたちは冒険者のほうにロックオンしていて、俺には背中を向けてまったくの無防備。

 普段なら獲物の横取り行為となるのだろうが、いまは救助活動なので問題ない。


「すげえ……、一撃……かよ」


 冒険者は口をあんぐりと開けて、こちらを見ている。

 ちょっといい気分。

 スキルポイントで殴るようなもので、だいぶ無双できている。


 いや……。真面目にやろう。

 さくさくとカエルを刈ってゆく。はじめ十数匹いたカエルは、あっという間に減ってゆく。

 戦士のLvが、6になって7になった。取得可能スキルが増えているかもしれないが、確かめるのは後回し。


「いや待て――全部は倒すな! 全部倒すと!」


 最後の一匹に手をかけようとしたところだった。冒険者が、慌てた声で、そう叫んだ。


「え?」


 ぎりぎりで、剣を止めることができた。

 なぜ倒してはならないのかはわからないが、とにかく、倒さずに――。


 おや?


 首の前に剣を突きつけた巨大ガエルが、ぷーっと膨らんでいって――。


「やばい――爆発するぞ!」

「うおっ!」


 巨大ガエルが、バーンと弾けた。爆発した。


 俺は爆発に巻きこまれて、粘液と体液と、その他、いろいろなものを頭からかぶるはめになった。


 肉だの骨だのといったものは、黒いもやになって消えていってしまったが……。俺がかぶった液体だけは、そのまま残る。


《Lvがあがりました。戦士Lv8になります》


 またLvが上がってしまった。レベルアップ内容を確認するのは、例によって、後回しだ。


 それよりも、カエルが破裂して、その液体をかぶった部位から、ひりひりと痛みを覚える。


「うおっ! なんだこりゃ!」


 ステータスを出してみると、HPが1ずつ、ゆっくりと減ってゆくのがわかった。


《名前:ダイチ HP:85/87 状態:毒》


「毒か!!」

「ポイズントードの自爆は毒だ! おい――毒消し! 誰か毒消し残ってないか!?」


 冒険者が仲間に叫んでいる。


「心配ない」


 俺はそう言った。

 仕組みがわかれば、どうということはない。


「リムーブポイズン」


 皮膚のひりひりとした感覚が、すうっと消えていった。

 毒を消すことに成功したらしい。


「す、すげえ――リムーブポイズンまで使えるのか!? でもさっき剣で……、ポイズントードを一撃で……、剣も回復魔法も使えるなんて……。あんた、いったい何者だよ?」

「通りすがりの冒険者さ」


 そう言ってみた。

 ……が、ぜんぜん決まらない。


 なぜなら頭からひどい臭いのする液体をかぶったままだからだ。

 毒は消えたが、頭からかぶった液体はそのままだった。こっちのほうはリムープポイズンでは消えてくれないらしい。

 鼻が馬鹿になりそうな臭いが立ちこめる。


 近づいていって、話しかける。

 そういえば、さっき、なにか気になることを言いかけていた。


「さっき全部倒すなって言ってたが……。なんでだ?」


 もうファイアウォールは消えてしまっていて、顔は見えない。

 声の感じから、俺よりもすこし年下ぐらいかなと思う。アラサーぐらいだな。

 あー……。いま俺、25歳なんだっけ。じゃあ向こうのが年上だな。変な感じがするな。


「ああ……、そ、そうだ。そうなんだ。ここはボス部屋で……、俺たちも聞いた話で、詳しく知ってるわけじゃないんだが。こんなところまで潜るつもりはなかったんで……。シュートで落とされちまっただけで……」


「はっきりしないな。要点を頼む」


「俺らの仕入れた情報じゃ、迷宮主をポップさせる条件っていうのが、この部屋のザコを一匹残らず倒すってことで……。だけどなにも出てこねえってことは、デマだったってことだな。ちくしょう。ギズモの野郎。金返してもらうぞ」


 冒険者は緊張が解けたのか、ははは、と笑った。

 その笑いが止まる前に、それは起きた。


「GHOOOooo――!!」


 ものすごい咆哮が広間に響き渡る。


「で――出た! ミノタウロスだ! やべえ!」

「くそっ」


 俺は剣を構えた。


    ◇


【ハルナ視点】


 シュートの罠のところで、あの人の匂いを見失ってから、別の階段ルートで第六層に下りた。


 迷宮の通路を駆けながら移動してゆく。

 この第六層にまでくると、灯りもなくほぼ暗闇だった。でも狼牙族は夜目を持っているので、特に困らない。

 夕暮れの薄暮ぐらいに見えていて、行動に支障はなかった。


 モンスターとは何度か出くわした。

 すべて鎧袖一触。切り捨てて、先を急ぐ。


 しばらく移動するうちに、私の自慢の鼻は、あの人の匂いらしきものを嗅ぎつけた。

 この匂いが流れてくる先は……、たぶん、ボスルーム。


 迷宮主が現れるという特別な場所。


 この迷宮に入ってはじめて、私は緊張を覚えた。

 迷宮主は、さすがに私の手にも余る。パーティを組んで戦う相手だ。信頼できる後衛を得ていれば、私は前衛の一人として迷宮主に立ち向かえるだろうけど。

 しかし、一人では……。


 でも、あの人の匂いがそこにあるのというのなら……。私に選択肢などあるはずがない。


 私はボスルームと思わしき場所に入りこんだ。


 ほっとした。

 ボスはいない。

 冒険者らしき男性が三人。そしてあと、もう一人の人が……こちらはすごい匂いを発していて、すごく臭い。


 あの人の匂いは、たしかにこの部屋にあった。だが……、あの人本人は、いない様子。


 部屋の中にいる四人に、あの人のことを訊ねようとしたとき――。


 急に――。部屋の中央に、強烈な匂いが出現した。

 大型のモンスターが、突然、現れた。

 そしていま入ってきたばかりの扉のほうから、カチリと、鍵でも掛かったような音が――。


「GHOOOooo――!!」


 出現したばかりの、そのモンスターは、咆哮をあげ、そして――。

今回の話はどうだったでしょうか!


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もっとやれ!


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