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俺、この人生が終わったら、異世界行ってSSR嫁と冒険するんだ  作者: 新木伸
ハルナテーア編

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14/35

#013.遭難者を見つける 「あなたLvは?」「20より先は数えちゃいないな」

 あれ? 誰かいる?

 通路を進んでいくと、前方にホールのような小部屋があり、そこの壁にもたれてへたりこむように座る、少数の集団と出くわした。


「だいじょうぶか?」


 他の冒険者と出会ったのは、これがはじめてだ。

 彼らはなにやら疲れ切っている様子だったので、まず、こちらから話しかけた。


「え? 誰?」


 三人いるうちの一人、髪の短い女性が、こちらにぎょったした顔を向けている。


「あ。俺。ダイチっていうんだが。ええと……。冒険者で――」


 言わずもがなのことを言ってしまった。

 迷宮に潜っているのだから、冒険者以外にありえない。


「え? あんた、一人で……? ソロで……? こんな深部まで? うそでしょ?」


 いま俺たちの居る場所は、迷宮の第五層。

 調子よく狩りをしていたから意識していなかったが、もう「深部」と呼ばれるような所まで来ていてしまったっぽい。


 モンスターからのドロップが良くなってきていたから、ついつい、先へ先へと進んでしまった。四層はマップを半分しか埋めていないが、この五層への下階段を見つけたので下りてきたわけだ。


 五層で敵はまた強くなったが、ドロップも良くなったようで、狩りはわりと順調だった。

 出るはずがない、と言われていた赤魔石以上のものが、わりと頻繁にドロップしている。たぶん商人に転職して取得した『アイテムドロップ率上昇』とか『幸運上昇』とかが働いているに違いない。赤以上が出ないというのも、「通常の手段では」という意味なのだろう。


「信じられない……。ソロでこんなところまで下りてくる人がいるなんて……」


 女の子はそう言った。汚れて疲れた顔をしていても、美人だ。ショートカットで活発そうな感じ。服装は動きやすさを重視した皮鎧だが、あちこち肌が覗いていて、ちょっと扇情的。

 本職のシーフさんあたりだろうか。


「救出隊……、じゃ、ないんだ」


 女の人、女の子か? ――は、明らかに落胆したような顔になった。


「え?」


 そんな深刻な事態だったとは。てっきり休憩しているだけだと……。


「部屋に入ったらモンスタールームでね。それで追いかけられて、逃げてきたんだけど……。仲間とはぐれて」


 美人――美少女シーフさんは、そう言って爪を噛む。


「あたしのせいだ……。あたしが欲をかいて、もっと先に進もうなんて言ったから……」


 俺はポケットの中に手を入れた。鑑定石を握りしめる。

 心の中で、「鑑定」と念じる。

 鑑定対象は、目の前のシーフさん。


《鑑定に成功しました。シーフLv7。名前:ミランダ》


 鑑定石の仕組みは、もうわかっているので、もういちど「鑑定」と念じる。


 ---------------------

 名前:ミランダ

 種族:ヒュース ♀

 年齢:18

 職 :シーフLv7

 HP :4/24

 MP :5/ 5

 STR:18

 CON:16

 INT:13

 WIS:12

 DEX:25

 AGI:38

 CHA:20

 LUK:20

 ---------------------


 こんどはステータスまで出てきた。スキルや転職可能職業などは見えない。俺の持つ鑑定石のLvは2だから、たぶんLv3の石を使って、三回鑑定をしなければ、そこまでは見えないのだろう。

 だけどこれだけわかるのでも、だいぶ役に立つ――。


 ――って!

 HPが4しか残ってないじゃん!


 他の二人も確認する。他の二人は……。


 名前:コーエル 種族:ハーフエルフ♂ 職業:僧侶Lv5 HP:1/21 MP:0/18

 名前:フィア 種族:ヒュース♀ 職業:魔法使いLv6 HP:2/14 MP:0/25


 うわぁ! 1と2! 死にかけてるしっ!


 あわててバックパックを下ろす。

 中にはぎっしりと薬草が詰めこまれている。これまで使い道のなかったものだ。


「これ! 薬草だ! よければ使って――」

「助かる!」


 緊急事態だからか。遠慮や辞退の言葉なんて一度もなく、ミランダは薬草をひったくるようにして受け取った。


「ほら――フィー! コーエル! 薬草よ!」


 仲間の体にそれぞれ押しあてた。


 薬効を示す光が、じわっと二人の体に染みこんでゆく。

 HPを確認すると、一ずつではあるが、ゆっくりと増えつつあった。

 これで安心だ。


 二人のために、薬草をもう二つ。

 そしてミランダのためにも二つ。残りは予備として、三人に対して、それぞれ三~四個ずつぐらい。

 バックパックを膨らませていた薬草の、半分ほどを分け与えた。


「これだけあれば地上に戻れるか?」

「戻れると思うけど……。あなたは?」


 さっき彼女は、仲間とはぐれた、と、そう言った。

 同じように救助を待つ人が、この階の近くにいるはずだ。


「俺はこの階をもうすこし探索してゆく。あんたの仲間に、もし出会ったら、残りの薬草を渡しておくよ」

「……お願い。せめて認識票だけでも」


 うっわぁ。いきなりヘビーな話きたー!

 彼女の口から認識票という話が出たということは、仲間はもう生きていないと思っているということだ。


「予備の武器があったらもらえないかな。剣が折れちゃってね」

「ロングソードでいいかかしら? ドロップ品でノーマルだけど」


 ミランダはバックパックから剣を出してきた。おお。俺の折れてしまった青銅の剣よか、ぜんぜん上等じゃないか。


「ありがとう。代金は――」

「よしてちょうだい。こんなんじゃぜんぜんお礼に足りないわよ」

「そうか。じゃあ有り難くもらっておく」


 まあノーマル品とか言ってたから、あまり高くはないのだろう。


「ねえ、あんた――!」


 立ち上がって、背中を向けると、呼び止められた。


「あなた――Lvは?」

「Lv? ……5だが?」

「うそぉ!?」


 あー、そりゃまあ、そうか。

 思わずいまの職業の戦士Lv5を、素直に答えてしまっていた。


 こちとら、転職しまくりの、スキル取りまくりの、無双をやっているわけで……。

 スキルポイントで殴りつけるような真似をしているわけだから、単なるLv5とはだいぶ違うはず。


「冗談だ。ええと……」


 なんと言えばいいのか。

 転職可能な職業のLvを全部足した数で答えればいいかな。


 「戦士Lv5」「平民Lv5」「狩人Lv5」「修行僧Lv5」「商人Lv1」「農民Lv1」「木こりLv1」「猟師Lv1」「格闘士Lv1」「僧侶Lv1」「シーフLv1」


 ええと……。全部足すと、27になるか。


「20から先は数えちゃいないな」


 思わず、ほんの出来心で、そう言ってみた。

 俺! カッコいいこと言ったあぁぁ――っ!?


 ……はっ!?


 ハズしていなかっただろうか?

 一瞬で我に返って、そーっとミランダの顔色を伺う。

 ぽーっと上気した顔が、こちらに向いていた。


 ――イエス!!

 セーフだったぜ!!


 そして気がついたっぽい、もう一人の女の子――フィアとかいったっけ? その子も、こっちを見て、ぽーっとした顔を向けていた。


 こそばゆいね。


 仲間を探すなら、早く行動したほうがいいだろう。

 俺は背中を向けたまま、彼女たちに手を振って、ダンジョンの通路を進んでいった。

今回の話はどうだったでしょうか!


面白かった!


更新がんばれ!


二人の〝初夜〟まであと何日だ! 早く読ませろ!



どれか思っていただけたなら、下の評価ボタンをクリックして応援してくれると、


す~~~ごく、励みになります!


よろしくお願いします!

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