先輩と後輩
第3話です。
少しでもお楽しみいただければ嬉しいです!!
神橋くんの待ち人も来たことだし、わたしはひとり帰ることにした。
学校の正門をでたところで、かわいい声に呼び止められた。
「あのっ!! はっ、葉月先輩!!」
声のした方に振り返ると背の低い女の子がこっちを見ていた。
鞄の帯の色から1つ下の学年の子だとわかったけれど、
穏やかに吹く風に揺れるツインテールが、彼女をより子供っぽく見せていて、
もしかして小学生かと首を傾げてしまう。
人見知りするタイプの子なのだろう、少し恥ずかしそうに鞄を胸の前で抱きしめている。
………
誰だっけ?
見覚えはあるんだけどなぁ〜〜
え〜〜っと、そうだ!!
パンダだ!!
パンダ→笹……笹。
「えっと、笹嶋さんだっけ?」
自分のことながら、よくそのプロセスで思い出せたと思う。
去年のことだ。
テスト勉強の為に友達と放課後、図書室に入り浸っていた時。
わたしが勉強を教えた女の子だ!!
「あの、えっと……」
あの時もこんな感じで声をかけてくれたんだっけ。
そしてこう返したのだ。
「まずは、落ち着いて、ね」
以前と同じ言葉をかけ、そして嘆息混じりではあるけれど、彼女に優しく微笑みかける。
少し涙目になりながら、深呼吸している目の前の少女を見て思う。
かわいい、わたしSじゃないけど、この反応を見てしまうとちょっと、
いじめてみたくなっちゃうかも……
わたしがよこしまな考えを巡らせている間に落ち着きを取り戻したのか、彼女はしっかりと私を見据えて、
「この間は、勉強を教えて頂いてありがとうございました!!」
今どき珍しいぐらいにまっすぐな子だなぁ〜〜
こんなにまっすぐな子に言われたのだから、お礼の言葉は素直に受け取っておこうと思う。
「どういたしまして」
すると彼女は、満面の笑みで元気よく"はい"と応えた。
笹嶋さんの笑顔は日向の様だ。
懐っこくて温かい。
本当にかわいい女の子だ。
ふと、もしわたしに妹がいたら、いいお姉さんになれたかもしれないなんて思ったけれど、
そんな考えはすぐに振り払って、目の前の彼女に向き直ることにする。
言いたいことを言えたのは良かったけど、次はどうしよう……
そんな笹嶋さんの苦悩が見てわかった気がした。
やっぱりわたしは、嘆息混じりの笑顔を彼女に向けて話しかける。
「もしよければ駅まで一緒に帰りましょ」
「あっ、はい!!」
すると彼女は携帯電話を出して、なにやら操作を始めてしまった。
どうやら、メッセージを作っているようだ。
「あの、誰かと待ち合わせしてるなら、そっちを優先してね?」
言ってる間にどうやら携帯電話の操作は終わったようだ。
「いえ、葉月先輩ともっと話したいです!!」
お読みいただきありがとうございました!!
今回は、真琴と紗枝の絡みです。
明るい性格ではない真琴ですが、ひとりが好きなわけではなくて、
1人の時間も欲しいタイプだと思います。
紗枝は恥ずかしがり屋の女の子なのでしょう。
それでも言いたい事はちゃんと言葉にできる。
そんな強さを持った子です。
ここからふたりの帰り道。
どんな会話がされるのか、
無意識にお姉さんぶってしまう真琴と
あたふたしながら必死に話す紗枝。
女の子同士だと、どういう会話をするものなのでしょうか。
ちょっと想像するのが難しいですね。
それでは、第4話もお楽しみにしていただければ幸いです。