序章
初めまして、ユウと申します。
「大好きなあなたへ」に興味を持ってくださいまして、
ありがとうございます。
この物語がわたしにとって初めての作品となります。
独学でいろいろなハウトゥ本を読み漁り、学生時代に構想していたストーリーを
再構成して、書き始めてみました。
まだまだ稚拙な文章ではないかとも思いますがご一読を、お願いいたします。
教室から、中庭を眺めていた。
私たちの学園の進級や下級生の入学式が終わり、学校全体が少しずつ落ち着きを取り戻しつつある5月の初め。
クラブ活動や委員会が今日の活動を終えて、ほとんどの生徒が下校した時間。
紅く染め上げられた学校の共有スペース。
お昼時には、生徒達の明るい声が響く場所だけれど、
放課後の、ましてやこんな時間には誰ひとりとして足を運ぶ生徒はいない。
ただなんとなく、寂し気な空間を見つめていた。
なにを思うでもなく、ぼーっと眺めていると校舎の影から誰かが出てきた。
見慣れた制服を着たふたり、男子生徒だった。
誰だろう。
あのふたりは今までどこにいたのだろう。
………
どうでもいい疑問だった。
「……あの子達は、ちゃんと持ってるんだろうな。」
どうでもいい思考なのに、自分たちの居場所を持つのだろう彼らを眺めるわたしは、少し惨めな気がして……
だから、
「そろそろ帰ろう。」
重く沈んだ気持ちをカバンと一緒に背負って教室をでる。
………。
わたしが昇降口にでると、また見覚えのある生徒が立っていた。
男の子が首を大きく傾けて空を見上げている。
「………」
暖かな光を受けて何かを見つめている彼の姿が綺麗だったからだろうか、
このひとがなにを見つめているのかが気になって、つい視線を追った。
なにもなかった。
ただ、私たちを照らす紅い夕焼けの空があった。
春を迎えたばかりの空は、ぼんやりとした雲が浮かんでいて、
冷たい空気に夕日が混ざりあって、肌寒いのに暖かい。
眩しさに目を細めてから再び青年に視線を戻すと、
いつの間にか、逆に彼に見つめられていた。
首の動きだけで、“どうかしたの?”と問いかけられた。
そこでようやくどうしようかと考える。
確か彼は、クラスメートだったハズだ。
名前は、なんだったっけ………
わからん。
「なにを見てたの?」
「ん?」
「……なんか、ごめん」
さっき中庭にいたのはこの人だろうか。
だとすると、もうひとりはどこにいったのだろう。
テキトーにごまかそうとしてみたけど、彼はわたしの言葉を待っている様子で、けれど返す言葉が浮かばず、なんとなく謝る。
続く言葉がなくて気まずい………
だからわたしはこの場から逃げることにした。
「じゃあ、また明日ね」
「……うん、じゃあね」
名前も知らないクラスメートは控えめに手を挙げて、それを振ってくれた。
………
私たちの出会いは、印象にも残らないようなごくありきたりなものだった。
何かの始まりを告げるようなものでもなく。
なんとなく顔見知りだったから挨拶をしたという程度だったのに、
なぜだろう………わたしはこの時のことをよく覚えている。
「大好きなあなたへ」を読みくださり
ありがとうございました。
いかがだったでしょうか、
とはいえ、まだ主人公とヒロインが出会った? だけの段階です。
これから少しずつではありますが、二人の物語を進めていきます。
またあらすじで書きました通り、こちらは物語の半分になります。
同時に連載を行います「大好きな君へ」もご一読いただけましたら、
書き手であるわたしにとってこの上ない喜びとなります。
そして、ご意見やご感想をいただけましたら、ありがたく存じます。