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わかりきった結末  作者: 早雲
第四部
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公園

 夕日がほとんど沈んだ頃、私たちは目的地にたどり着いた。そこは大きな国立公園だった。かつて私と友人の二人でシステムについて話し合った場所。そこにある木々や噴水は相変わらずそこにあった。


 大きく変わったところといえば、迷彩を着た男が慌ただしく出入りしたり、装甲車や重火器が並ぶ巨大なキャンプが出来ていたことだ。そこは陸軍の野営地だった。見張りの兵士が私たちに近づいてきた。若い男だ。私は少女を後ろに下がらせた。


「立ち入り禁止です、近づかないで下さい。ここは現在陸軍の管理下にあります」

「私はカイトウ マコトというものだ。我々を保護してほしい。この近くで武装している連中を見た」

「下がって!」

「……ここの指揮官に伝えてくれ。おそらく話が通っているはずだ」


 見張りの彼は耳に手を当て、小声で首元に着けているマイクに話始めた。アサクラが手を既に回してくれていることを祈るしかない。もし話が通っていなかったら、この神経質になっている兵士が我々を野営に入れてくれるとは思えない。


 やがて、兵士は耳から手を離し、我々を見やって言った。


「IDを」


 私はデバイスを繰って、兵士の目の前に自分の身分証明書を表示させた。彼は再び無線いくつか言葉を交わした後、私たちに言った。


「こちらへ」



 私たちはキャンプの奥にある簡易的に作られた指令室に案内された。私は少女に声をかけた。


「アイ、ここで待ってなさい」


 いつもなら、子供扱いだとか過保護だとか軽口を言うところだが、彼女は黙って頷いた。当然だが、市街地で戦闘が起こるかもしれないというこの状況は慣れない事で、ずっと緊張していたのかもしれない。


 指令室に入ると、私と同じくらいの年齢の男がデスクに座って何かを無線で話していた。どうやら市街地に巡回している兵士の報告を聞いているようだった。彼は私を見て、少し待ってくれと頼むように手を挙げる仕草をした。彼は通信を終えると、私に言った。


「話は聞いています。あなたと娘さんの保護ですが、2-3日までなら可能です。状況が落ち着いたら、安全区域まで輸送致します」


 私は安堵して言った。


「助かりました、ありがとうございます」


 私の様子をみて、指揮官は渋い表情をした。どうしたんですか、と尋ねると彼は困ったように言った。


「アサクラさんから聞きましたが、あなたは現在の国防に関する管理システムの開発者だそうですね」


 陸軍の部隊を管理するためにも、当然インフラ=システムは使用されている。兵士の私掠や犯罪などの予期せぬ暴発を起こさないよう、行動予測システムが使用されているのだ。しかし、政府の中でもインフラ=システムの存在は最重要機密だ。現場の指揮官である彼には、行動"予測"システムのことは知らされておらず、あくまで、兵士の行動履歴を管理するシステムだと伝わっているはずだ。



 私は彼の問いに答える。


「ええ、一部ですが私がシステムを構築しました」


 嫌な予感を覚えた。陸軍がインフラ=システムに依存している。ならば、この野営地も先のバグの影響を受けているのではないだろうか?


 私は恐る恐る訊いた。


「何か問題が?」

「実は、先程から軍の管理システムがうまく機能せず、兵士同士の連携にも問題が出ています」


 あるいは、と彼は続けた。


「あるいは、武器を持たないあなた方に取ってこの場所に留まるのは安全な選択ではないかもしれません。もちろん、危険が及ばないようには努めますが」


 私は内心舌打ちをしそうになったが、それを堪えて言った。


「いえ、保護してもらえるだけで十分です。我々も出来るだけ早くここを離れるようにします」


 そう言って一礼し、指令室を出ようとした。その時、指揮官に無線が入った。


「本部、こちらアルファ01」

「アルファ01、どうした?」

「ブラボーと10分程度連絡が取れません」

「原因は」

「不明です。連絡が取れないことの他に大きな変化はありません。彼らが見張っていた東側の出入り口に調査のために人員を送ってください」

「市街地の巡回で人手が足りない。アルファ部隊を二手に分けて片方を調査に向かわせろ」

「了解」


 堅牢と思われていたシステムが崩れるときは、かくも脆い。


 私は少女を見つけようと、指令室を出た。とにかく安全を確保しなければ。


 その瞬間、少し離れた場所から銃声が聞こえた。

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