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わかりきった結末  作者: 早雲
第四部
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そこには

 なんの変哲もないが、少々古びた事務所。レトロというと響きはいいが、まだそう言った価値が付かない程度の古臭さ。部屋の奥には大きな木製の机と椅子のセットがあり、そこに腰掛けている男がこちらを見据えた。男は若く、座っているとは言え、平均よりも身長が低いであろうことがうかがえた。


 私は、私をここに連れてきたバケットハットの長身の男に目をやった。このバケットハットの男は私を"ボス"に会わせると言った。彼がそうだろうか?


「最初に言っておきます」


 バケットハットの男が言った。


「彼はボスではありません。ボスの意向を伝えるだけのスピーカーと思っていただければ」


 私は驚いた。


「馬鹿な、これだけテクノロジーが発達した中で、人間スピーカーだって?」

「ええ、インフラ=システムへの対策ですよ。いかに我々が"異分子"として行動予測がされないと言っても、いつシステムが改良されるかわからないでしょう?出来るだけ、人を間に挟んで、個人情報を収集されるリスクを抑えておきたいというのが、ボスの考えです」


 私の胸に、わずかに黒いものが渦巻いた気がした。ただの感覚でしかないが、他人を身代わりに立てること、それを許容する組織構造、そしてスピーカーという役割を受け入れている目の前の背の低い男に、生理的な嫌悪を感じている。これは即ち、その"ボス"とやらに向いた感情でもあるのだろう。


 予想が正しければ、この"ボス"はかなり危険で、私と(あるいは彼女とも)浅からぬ因縁がある男だ。元軍人、そして私の友人で彼女の父を手にかけた男……。


 机に座っている背の低い男が初めて口を開いた。甲高い、掠れた声で、わずかに震えているようだった。


「こんにちは、カイトウ マコト。私はウサミ。ウサミ ショウイチ元陸軍一尉だ」


 そして、男は耳を押さえる仕草をし、言葉を続けた。


「我々の組織に入りたまえ。システムの破壊のために」

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