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わかりきった結末  作者: 早雲
第四部
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青い封筒

 対象の生体情報を取得する仕事を続けていって、あまりに多くの人間の心理を読み込んだ。

 

 システムが効かない相手の行動を読むのだから、私自身が彼らのプロファイルを基にその人物のモデルを作っていく。

 

 数百の人間たちの中には破綻している心を持つものも少なからずいた。

 

 しかし、合理性が破綻していようが本能的な行動というやつは変わらない。いや、合理的でない人間ほど本能的であるともいえる。

 

 そんな人間たちの心を読んで、モデルを作ることは時に、ほとんど至難の業と呼べるようなものであった。加えて、この仕事はそもそもが違法だ。自分の仕事を正しいと思えなければ、どんな仕事だってパフォーマンスは落ちる。 

 

 それにも係わらず、我ながら、そのような精神衛生上の茨の道をよく歩く気になったものだ。いや、確かに選択肢はなかった。だが、ここまで自分がこの仕事を精度よく遂行するとは思わなかった。

 

 生きるためだ。もちろんそうだ。だが、それは本当に罪を犯すに足る理由なのだろうか。



「今回は対象の方に生体検知器を埋め込むことにならずに済みましたね」

「ああ」


 今回の対象の女性は幸いなことに、単純なデータ一つを補完するだけで、"異分子"という判定から外れた。これで我々も余計な手間や罪が省けると言うものだ。


 事務所に帰った我々は、ふと不思議なものを見つけた。原色の青の封筒が事務所の扉に挟まっている。


「なんでしょうか、これは。インフラの使用許可?」

「いや、違う」


 インフラ=システムに関する情報は如何なる場合も外部へ電子通信すことが許されないので、その使用許可書も書簡で届く。


 だが、インフラの使用許可書はこんな目立つ封筒では送られてこない。


「なんでしょうか?今どき郵送されてくる書類なんて」


 私は書類の封を切った。どうせ碌なものではないのはわかっている。私は封筒の中身を確かめた。ため息が出そうだった。


「警察省……」


 それはかつての警察省の同僚、アサクラからの書簡だった。

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