ごめんね
”印刷”された銃を傍らに置いて、僕はキーを叩く。
僕が保持している技術のデータの概要と誠へのメッセージ。結果的に、僕は彼に自分の大事なものを二つ預けることになってしまった。
愛とAi。
片方は守り、もう片方は失くしてしまわなければならない。僕がすべきだったこれらのことを、最後までやりおおせなかったのは心残りだ。
支援もなく追われて、どうやら逃げ切る見込みもなさそうだった。ならば、せめて書き残せることを書こうと思い、僕は誠に伝えるべきことを書いていった。
夜は明けていく。
メッセージを送信する。
僕は印刷された銃を握りしめた。
生き残れる確率は万に一つもないだろう。
◯
ごめんね、愛。
最後の言葉が君への言葉じゃなくて。
最後の時間が君のものじゃなくて。
本当はずっと君の傍にいるのが正しいと思ってたんだ。
でも、僕の身は一つしかなかったから。
せめてこの世界が、少しでもいいほうに行くことを願うよ。
そのために僕は、頑張ってきたんだ。
世界が回ってることを信じたんだ。
それでも、ごめんね。
世界が、正しくあることを願うよ。
君のいる世界が。




