見つけた
「見つけた」
キーボードから手を離した。
「情報を共有するよ」
僕は解析の結果を役人達に共有した。
数年前に強盗殺人で捕まった宇佐美元一尉は、フルゲノム、経歴、病歴、各種生体マーカーの定量の情報を採取されていた。サーバーにアクセスして得たこれらの情報を入力値に行動予測の解析を行った。
「この街のホテル?」
荒川は呟いた。
共有した画面には、宇佐美の行動予測テーブルと居場所の推定地が載っている。
「おそらく宇佐美元一尉はそこにいるよ。入力値が足りないから正確じゃないけれど、可能性は高い」
「確実ではない?」
「そう。だから、僕達が行動を起こすためには、その場所に彼がいるかを確かめなければならない」
僕は考えつつ言った。困ったような顔をして、荒川が言う。
「逃げると言う選択肢も取れるはずです。宇佐美の居場所が推測できるなら、そこから出来るだけ離れるべきではないでしょうか?」
今度は僕が困ってしまった。僕はすでに結論を出してしまっているからだ。最善は宇佐美を殺すこと。次善は僕が死ぬこと。
逃げる。確かにそれもひとつの手ではある。僕が逃げれば、ひとまずは状況が保留される。その後ゆっくり戦略を練れば良い。
しかし、これまでの"対網"の行動を思い返すと逃げるという一手が致命的である可能性すらあるのだ。もしも、僕を見失った対網が、僕を誘き出すために愛を人質にとられたら?その可能性だってないわけではない。
そして、正直に言おう、僕は旧友を殺されて逃げる自分が許せなかった。それこそが、おそらく一番賢明であろう策を僕に取らせなかった理由だ。宇佐美を殺す大義を離したくなかったのだ。
室内を見渡す。
「相手の場所を確実にしよう。それが優位を取ることになる」




