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わかりきった結末  作者: 早雲
第三部
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武器

「武器は?」


 荒川たちは僕にそう尋ねられて、神妙な顔をした。


「持っていません。この国での軍事行動を想定していませんでしたし、我々は軍人ではありません」

「分かっている。だけど、この状況は武器がないとまずい」

「武器を持ってたとして、どうするつもりですか」

「わかるでしょう?」


 この場合の最善は宇佐美を行動不能にすること。


「宇佐美元一尉を殺す……」

「そう。まあ、拘束でもいいんだけれど、多分、無理だろうから。捕まえるならこの国の政府と協力しなければならない。だけど、ドクトリーヌ政府と協力して国際問題の火種をわざわざ捕まえる、なんてことは君らはしないでしょ?」


 役人たちは押し黙った。それは肯定とも否定ともつかない沈黙だった。つまりは保留、という事だろう。僕の現状は保留可能なものではないので、どちらにせよ、彼らの返答は意味のないものだと考え、自説に従い行動するのがよさそうだ。


 最善は宇佐美の排除だが、それが叶わない場合も考えなければならない。


 次善の策。それは多分、僕が死ぬことだ。宇佐美が僕を狙う理由はおそらく2つ。僕が情報をリークしてシステムを無効にすることを防ぐこと。そして、"大衆の行動予測"を可能にする技術を僕から奪うこと。


 出国前に誠には話してあるが、マクロなレベルでの行動予測システムは既に完成している。ただし、今のところ僕しかこの技術を実装できない。あるいは僕の研究資料を見れば、誠なら実装出来るかもしれないが、それを除いてその技術を取り扱えはしないだろう。


 最悪のケースは、システム無効の情報のリークが防がれ、"大衆の行動予測"システムが奪われることだ。そうなれば、我が国の政府は国民がそれと気づかぬ内に行動を予測し、制御することができるようになってしまう。


 僕が死ぬことで、少なくとも後者は防ぐことができる。少なくとも最悪ではなくなる。


 ならば。


 次善まで含めて、覚悟が必要だろう。



 戦闘となれば、論ずるまでもなく、僕たちが圧倒的に不利だが、それは真っ向から戦う場合の話だ。


 幾ばくか、僕には武力以外にも寄る辺はある。


「彼の位置と行動を予測しよう。その情報が得られれば、かなり選択肢は増える」


 僕は言った。訝しむような視線。


「そんな、不可能です。システムを使おうにも彼に検知器を取り付けるだけでも至難の技です」


 可笑しくなって思わず笑ってしまった。彼は今自分が誰と話しているのかを忘れてしまったらしい。


「僕がそのシステムの開発者だよ?」

 

 僕はコンソールに向かった。

 

 

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