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わかりきった結末  作者: 早雲
第三部
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連続性をもつバイナリ



男は言った。


『果たして人は最初から自由を持っていたか。


もちろん反語だ。自由など存在しない。自由の定義が乱数性とイコールなら、少なくとも地球上の物理法則で表すことのできる我々は自由ではない。


それだけではない。人種、身体的才能、知的才能、芸術の感性。いかんともしがたい遺伝子や環境要因で決まる。


人は、成りたいものになどなれない。そうだ、人は最初から自由などではない。


しかし、私が許せないのは人の行動を人が縛ることだ。ばかげた感性じゃないかね。すでに不自由な我々に、滑稽な政府の役人がさらに不自由を強いようとするのだ。なるほど。絶対的な物理法則なら降参しよう。私の体の奥底にあるアルゴリズムであれば納得しよう。しかしどこぞの他人に、そしてその他人も所詮縛られるだけの人間だ、その他人に自分の行動を監視され、予測され、予測と異なれば排除される。許せることではないとは思わないかね。


君はどうだった?他人を縛ることに快楽を覚えたか。社会の異端者を切り捨てる仕事に誇りを持てたか。もしも君の誇りがそこにあるのであれば、私はこういわざるを得ない。なんて愚かだろうと』


男の目に見えたのは、ありったけの憎悪だった。


そこにはこれっぽっちの救いすらなかった。



どこにも逃げるなという警告を受けた。こういうときにはいったい何が正解なのだろうか?


今世紀の始めであればデジタルの世界とフィジカルの世界は分離されていた。


ハイテク装置だけに頼ればローテクに出し抜かれる。


だが、そんな世界はすでに終わって、デジタルはフィジカルをハックできるようになった。


だから、とても認めたくはないけれど、僕はすでに選択肢が一つしかない。相手を待つという選択肢しか。


なんせ、逃げようとすれば必ず捕まるからだ。つまり対網がこの国に入国しているのであれば十中八九ドクトリーヌ政府から支援を受けている。


政府の支援をうければ電子通信の傍受が可能になるし、電子通信の傍受が可能ならこの国のほとんどの物理空間も制御されたも同然だ。


つまりは対網はその気になれば、ホテルの出入り口くらいは簡単に閉鎖できる。


チェックメイト。


これはどうも、打つ手なしだ。


ならばせめて相手が紳士的であることを願いつつ、悠然と待とう。

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