赦しは神の業
フライトアテンダントは僕と話しているうちに、砕けた口調になってきた。幾分気を許してくれたらしい。
「それで?ドクトリーヌには何をしに行くのかしら?」
嘘をつくのが好きではないので僕は正直に答えることにした。
「僕の母国がデストピアを作ろうとしてるから、それを世界にバラしにね」
彼女は可笑しそうに言った。
「あら、この世界はずっとデストピアじゃないの、Big brother?」
「いいところもたくさんあるよ。まだ僕らの社会は偶然の神様がたくさんいる」
「もともと神様ってそんなにたくさんいないわ」
「僕の国にはたくさんいるんだよ、神様」
「ふうん?でも、神様がいる場所がユートピアとは限らないでしょう?だって今まで宗教を巡ってどれだけの不幸があったのかしら。すごい数じゃない?」
「それをいうなら科学だってたくさん人を殺してるよ。それに僕は今までがユートピアだったとも思ってないしね」
「単にデストピアじゃなかっただけってことね」
「その通り。僕はね、人間が言葉で説明できることを神様のおかげとは思わないんだ。必然は合理。そして偶然が神の業」
「じゃあ、赦しはだれのもの?」
「過ちは人の常、赦しも人間の業だよ、そうじゃない?」
フライトアテンダントはあごに手を当てて目を伏せていたが、やがて顔を上げて笑顔になった。
「面白い話だけど、感覚は掴めないわね」
僕は可笑しくなって笑った。フライトアテンダントの彼女はどうしたのかと訝しげな表情をした。
「どうしたの?」
「そう言えば、僕の古い友人も似たことを言っていたっけって思い出してね」




