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わかりきった結末  作者: 早雲
第三部
32/90

白い

人は過去の経験から予測を立ててる。


幼い頃の記憶から最近の記憶までごた混ぜにして、それと意識せずに今ある現状から未来をはじき出す。


これはヒトを含む神経系が発達した生物が持つ特徴だ。嫌な記憶がいつまでも残るのは、その方が危機管理能力が上がり生存率が上がったからだ。基本的に楽天家は生存に向かない。


こうやって形を整えていったある種の機能は時々僕らに嫌がらせをする。例えばうつ病や過剰なストレスによる精神疾患は、本来僕たちを活かすための機能が不全を起こした結果と言える。


だけどおおよそ、この記憶を元に未来に漸近する能力は今でも役に立っているといって良い。生物の進化や冗長性を考えたら割にましだろう。糖尿病や飢餓に対する過剰な反応にくらべたらよく出来た方であるとすら言える。


僕らは予測すると同時に、同種の他個体に予測される。つまり人間同士は互いの行動を予測し合う。相手が予測していると知ったら、さらにそれを上回るように予測しようとする。


この相互作用は二次のカオスを引き起こす。平たく言えば、”予測されることを認識している人間の行動を予測できない”。


僕らは互いに似てるから予測可能で、同じ理由で予測不能になる。なんとまあ皮肉な話じゃないか。


眼前に明度の高くて彩度が低い均一な視覚情報が広がっている。


情報を抽出する一部の手法としては差分を測るということが挙げられるが、全部が白い、ということしかわからない現状では、そんなことちゃんちゃら可笑しいとも言える。


何が言いたいかといえば、いま僕の目の前は真っ白だった、ということだ。


人間普通の生活を送っていても、大量の視覚情報が入ってくる。近代になって指数的な増加を見せている映像のもとになる数行列のデータ。


絵画、現実の映像、ヒトが作った架空の映像、コンピュータが作った架空の映像。その情報はどんどん蓄積されていく。


思い立てば、いつでも膨大な量の情報をアーカイブからとりだして見ることが出来る。そして、その大量の視覚情報による刺激で、現代に生きる人々は常に対処しきれないほどのストレスと不安を感じるようになった。


きっとだから、ぼくは目の前を真っ白にしている。ストレスと不安ばかりの世界なんて御免ではないか。


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