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わかりきった結末  作者: 早雲
第一部
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明かされない過程

 私には不思議な才能ギフトがあった。

でもどんな贈り物だって、受け取る側の気持ちを汲まなければ、ただの自分勝手。


 だから私は、きっと神様は自己中心的な性格なんだと子供心に確信した。


 他人より秀でた能力はときとして、その能力の保持者に利しない。


 他人より秀でた能力はときとして、大勢からの攻撃の的になる。


 そんな理由で私はできることをできないふりしてきた。それが平和に生きる道だ。


 だけど、ここは私だけの場所だ。だから、あえて言葉にしてみようと思う。


 私に何ができるかを。何を隠してきたかを。何におびえたかを。


 私には、たとえどんな人でも、その人が次にとる行動が100%わかる。


 それが私への、神様からの贈り物だった。

「みんな幸せになりたいがゆえに生まれて、生きているはずなのになぜこのような惨劇が起こるのでしょう。先生」


 殺風景が広がっている。


 少女は私の教え子で、私は少女の先生だから、質問には答えなければならない。


「わからない」


 積み重なった元、生命たち。その体に集めていた化学反応群。可逆性のものが消えて不可逆性の反応だけ進行する。ゆえに生命のサイクルは停止する。カスペルの法則によれば、地上での死体の腐敗速度は速いそうだから、彼らの命の残滓も長くさらされることはないだろう。


 少女はいう。


「先生。私は今まで信じてきましたの。何をと聞かれると兎に角、答えづらいものですけれど、それでも何かを信じてきましたの。それでも今見ている眺めを知ってしまって、信じていたものが音を立てて崩れていくような気がしています」


 私はその何かを知っているようにおもう。人類が持っている本能を、醜く下衆な習性を覆い隠すのに絶対必要なものだ。人が人たるために最優先にしなければいけないものだ。それでも今眼前に広がることを確認した後で、口にするにはあまりに心もとない言葉。


「……」


 生徒たる少女に道を示す役割を課されているにもかかわらず、私には何も言えなかった。少女は抑揚のない声で、こういった。


「微塵の救いもございません」


 私は無言で少女の手を取って、その場を離れることにした。


 その戦場を。

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