なぜ地球なのか。
なぜ、ここまで地球のレベルアップを熱心に助けようとしているのか、
それは、地球が宇宙でも稀に見る美しい星だからだ。
その美しさは地球の内面の輝きを表している。
地球人のテクノロジーでは、とても発見出来ないだろうが、
地球の地中奥深くや海底では、莫大な価値のある資源が眠っている。
宇宙の宝物がたくさん地球には隠されているはずなのだ。
地球の美しさは俺も、認める。初めて、地球に派遣された時のことだ。
夏の夕暮れ時の空の美しさに不覚にも涙した。
青、オレンジ、紫、ピンク、光のコラボレーションによって壮大な動く芸術が空一面に広がっていた。
日の出、日の入りの瞬間は毎日、素晴らしい。
しかし、地球人は目の前でな自然の壮大なパフォーマンスが行われているというのに、
完全に無視して自分達のテクノロジーがうみだした、チンケな機械いじりに夢中になっている。
あの時はビックリした。俺はその時、空を指して一緒にいた地球人に「おい、あれが見えないのか」と声をかけた。
そいつは空をみながら、「えっ何なに」と言った。
ああ、これが3次元の人間の精神構造かと、納得した。
物理的に同じものを見ていても、見えるものが違うのだ。
もちろん3次元の人間でも、精神が早く進化し、他の地球人が気づかない美しい風景を残し、
色んな形で示している人間もいる。それが一流と言われる芸術家たちだ。
地球が非常に美しい、宇宙にとって価値ある資源であること、
これが宇宙が地球のレベルアップに注目している1番の理由だ。
しかし、親父がここまで熱心に俺を派遣してまで、
地球の成長にこだわるのは、それだけが理由ではない。
「息子よ、お前が地球に行くのを負担に思っているのは知っている。
しかしのう、私には、91が不憫に思えて仕方ないのだ。」
と涙ながらに親父が語り始めた。
俺の想念を読んでいたようだ。
我々5次元の人間は、注意を向けた人間が何を考えているのか分かる。
もちろん意識すればであり、特に意識せずに相手の考えを、
読まないでコミュニケーションを、とることもできる。好みの問題だ。
「私は91がな。こーんな小さな赤ちゃんの頃から奴の成長を見守ってきた。
本当に優しい子なのじゃ。ところが、91自身が地球に転生する前に決めていた環境なんだが、
これが最悪での。母親は、自分の利益のため、奴を小さい内から朝から晩まで勉強させ、
中々寝かせない。気に入らないことをすれば、
殴る、口をきかないは当たり前じゃ。幼い91はどれだけ辛い想いをしたか、オッオゥ」
親父は泣き出した。
そうなのだ。親父は91が可愛くて仕方ないのだ。実の息子の俺より気にかけている。
「お前は本当に優秀な出来た子だからな。私が気にかける必要はなかったのだ。」
91自身は本当は地球という低次元の世界に生まれるような人間ではないのだ。
ただ、91自身の強い想いがあり、宇宙の反対を押し切って、
このレベルアップ前の重要な時期の地球に誕生したそうだ。
この辺の事情については俺はよく知らないが、やはり、どうしても地球で出会いたい女性がいたそうだ。
だから、その女性と出会う前に、他の女性と関係を持ってしまうとその無念で91は自分を殺してしまうようにプログラムしているらしい。何しろ、ずっとその女性と添い遂げようとしているのだが、
ことごとく、他の女性と関係しては、出会うことすらできず失敗し、
何千回と地球に転生を繰り返しているらしい。それで今回は最後のチャンスということで、
自分に厳しい条件をつけて、地球にいったらしい。3次元の地球じゃなければ、そんな失敗を繰り返す必要もないのだが、相手の女性というのが、
相当、地球の成長に大きな役割を果たしているらしく、地球でないと中々、共に暮らすことは難しいらしいのだ。