第5章:戦闘
第5章
その様子を陰から伺う者が居た。ランドの子分である。
そして、街を出た調査隊を見送り先回りして山の中に入って行く。
「親分!親分!!どうやら、調査隊と言うか討伐隊が例の切り裂き魔を捕まえようと、この山の中に入ってきやすぜ!」
子分はランドに急いで話した。
ランドは寝起きだろうか…しばらくボーっとしていたが、直ぐに立ち直り子分に質問した。
「その討伐隊は、どれくらいでこの山に着くんだ?」
「そうですね…。ちょうど、今日の夜くらいですかね。」とシシシと笑いながら答える。
「そうか…と言うと、大体2〜3時間で着くな。よしっ!今日はその討伐隊の後ろから、活躍を見ていようじゃ無いか」と笑いながら言う。
「へへへ…あの浮浪剣士も居るみたいですからね。楽しみですぜぃ」
そう言うと、子分は身を翻し
「よく見える場所を探しに行ってきやす!」と言い去ってしまう。
そして、ランドともう1人の子分ははその後を自然に追う。
夜、辺りは更け暗い山道を歩く討伐隊。
松明の明かりを便りに、山奥へと入って行く。
その後を、するりするりと足音を殺し、盗賊3人が後を追う。
更に、夜。
と言うよりか真夜中。
今日は満月で月が出ているが、木が生い茂り月の光が山奥まで届かなかった。
その時である…。
「出た!出たぞ!!」
と後ろを歩いて居た討伐隊が叫ぶが、その瞬間言葉は悲鳴に変わり倒れる音がした。
プリムは先頭を歩く棟梁と歩いて居たが、悲鳴を聞き後ろを振り向き戦闘態勢を取る。
その時、はっとした。
(後ろの方には、ガライさんが居る!怪我をしてるんだ!助けなきゃ!)
プリムと棟梁は、急いで来た道を戻る。
すると、暗闇から足音が聞こえてきた。
討伐隊に参加していた若者である。
若者は、暗闇から出てくると全身血まみれでプリム達の前で倒れた。
(ガライさんが危ない!)プリムは、若者を棟梁に預け更に来た道を戻る。
すると、ちょうど月の明かりが照らす道の真ん中にガライが立っていた。
プリムはホッと一息付いてガライに駆け寄ろうとした時である。
「ソイツに近付くな!」
前に街で会った盗賊の親分である。
はっと気付く前に、ガライは腕をプリムに伸ばしてきた。
伸ばしてきた。と言う表現が正しかったと言うとそうでも無いが周りから見ると、伸ばしてきたかの様に見えた。
それは違った。
伸ばしてきたのは、腕と言うよりか鎌みたいな物であった。
プリムは意味が分からずに居たが、ガライの足元に沢山の死体を見て直ぐに状況を理解した。
『切り裂き魔はガライさんだ!そして、私は殺される…。』
と思った瞬間。脳が横に揺さぶられた。
ランドは、驚異的なスピードでプリムを横に突き倒した。
そして、ガライの"腕"は地面に突き刺さる。何が何だか分からずに、ガライの方を見る。
しかし、ガライと思ったプリムはガライじゃないと一瞬思った。
しかし、違った。間違い無くガライだ。
しかし、その姿は変貌していた。
ガライの口からは、更に大きな口が出ていて、腕は鎌の様になり背中には羽が生えていた。
まさに、その生物は
"かまきり"
であった。プリムは逃げようとするが、腰を抜かしてしまったのか立てない。
隣でランドも同じように倒れている。
ガライが、口を―らしき物を―開く。
『王女様…。私の本当の姿を見て驚いているようだね。』プリムは、ガチガチと歯を震わせていた。
『切り裂き魔は私なんだよ。私が適当に、街の人間を切り、そして、討伐隊として街の人間を山奥へ誘き寄せ…切る!』
と言い鎌を舐めるように見る。
『そして、毎回1人は生き残らせては喉を潰し、私の正体をバラされないようにして、次の機会に殺す。』
と笑いながら、話を続ける。『そして、私はノウノウと街で暮らし殺す人間をじっくり決める。正に、素晴らしい場所であるよ』
とプリムの方を見る。
『君は、一国の王女なんだよな。ずっと…貴方を切る事を夢に見てきた。今日は素晴らしい日だ。プリム…お前を切り刻む日が、来るとは思わなかった。はぁ〜はっはっはっはっ』
とプリムの方へと歩みよる。
そして、鎌を振り上げる。
『ゆっくりとネチネチ殺してあげるよ』
そして、鎌を振り下ろそうとした瞬間である。
「親分から離れろっ!」子分達である。
子分達は、必至にガライに石をぶつけていた。
ランドは、倒れながらも叫ぶ。
「逃げろ!逃げてくれっ!」
しかし、それよりも早くガライは子分達に向かって行った。
『ウルサイ小蝿共が!』と鎌を振り下ろす。
ザクッ!と鈍い音がして、子分の1人が倒れた。
もう1人の子分はヒッと声をあげる。「ヤメロ〜〜〜〜!!!」
ザクッ!ザクッ!
真っ赤な血の海で倒れる2人。
しかし、ガライは倒れる2人にトドメを刺そうとし、鎌を振り上げ…下ろす。
プリムはバッと目をつぶり、下を向く。
そして、数秒後にまた顔を上げた。
「?」プリムは違和感を覚えた。
まるで時間が止まってるかの様に…。
2人に向かって、腕を振り下ろした状態のガライ。
しかし、腕の先が無くなって居た。
そして、そこから数メートル離れた場所にランドが立っていた。
左手には、"ガライの腕"を持っていた。『…っ』ガライは声にならない声を上げた。
ガライにも、何が起こったのか分かって居ない様だった。
ただ1つ言えるのは、腕の先が切り裂かれたようになっていた。
静かにランドが喋る。「辞めろと言ったのが聞こえなかったのか?」
ガライは、質問を聞かずに喋る。
「お前…何者だ!?」