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machine head  作者: 伊勢 周
4章 カレイドスコープ
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作戦結果報告

 オペレータールームでは、戦闘が終了したことにより安堵と歓喜の声に包まれていた。レーダーにはこれ以上のマシンヘッドの反応は無い。同時に、回収作戦の実行が雪村により発令されている。


「はー、ヤバいと思ったけど、何とかなったー……疲れた……」


 桜庭は背もたれにだらりと身体を預けて、そう呟いた。海嶋と秋月も安心した表情でほっと息を吐きつつ、新たな回収作戦のサポートを行う為に端末の操作を再開した。


「マシンヘッドの破壊任務、お疲れ様です。二人共、お怪我は」

『あぁ、ありがとう。目立った怪我はないが、いくつか攻撃を受けた。帰ったら検査を受けるよ。……俺たちはぴんぴんしてるが、一般人が一人、犠牲になった』


 おそらくは、一人だけではなく、スワロウでも関知していない、さらに多くの人間がこの「カレイドスコープ」の犠牲になったのだろう。


「……把握しています。けれど、私達が見る限り、二人に目立った落ち度はありませんでした。身内を贔屓するワケではありませんが、客観的に見ても、どうしようもなかったです。犠牲は残念ですが……」

『あぁ。ありがとう。…………こういう事に慣れたくはないものだ』


 稲葉がぽつりとつぶやいた。


「慣れ? ……なんですか?」

『なんでもない。それより、これからの指示を』

「はい。既に回収班がそちらに向かっています。到着まで現場を保守、回収作戦の立ち合いをしてください。回収が終わり次第、基地に帰還して下さい」

『了解。作戦完了、安全確認が出来次第帰還する』



 午前二時を過ぎた頃、稲葉と不破は基地に帰還し、作戦の完了報告を行った。各種事後処理が行われ、午前三時を回る頃にはこの事件はひとまずの落ち着きを見せ始め……アーセナルの長い夜は終わり、少しずつ東の海に光が灯り始めた。




作戦結果報告デブリーフィング


敵個体名称コードネーム  カレイドスコープ↲


任務概要   エリア16・繁華街のはずれの空き地に出現。地上で行動する実働部 (以下A)と空中で索敵する司令部 (以下B)が分離された新しいタイプのマシンヘッド。↲

 地上で活動するAに構造らしきものは見当たらず、複数回攻撃を与えたが破壊に至らず。Bを破壊し、沈黙した為作戦は終了。Bは大きく破損しているため、動力や原理は解析不能。↲

 研究施設での内部解析を予定する。これによる民間人の被害者を数名確認。↲

 稲葉隊員・不破隊員、両名に軽微な負傷があるものの、心身共に健康状態は良好――。↲



          *


 稲葉は隊長室で今回の一件について考えていた。左手には、今回の「カレイドスコープ」についての第一次報告書。右手でこめかみを押さえ、渋い顔で紙面に視線を落としている。


(奴は、ただただあの場所で自生するためだけに活動していたのだろうか。ただ近づいた人間を襲い、喰う。積極的に人間を襲い、事が終われば去っていく他のマシンヘッドとは一線を画している)


「……機械に意思などあるものだろうか」


 稲葉はポツリとつぶやいた。今回の件で思った事だ。機械に命など在りはしないが、しかし、今回の敵に「生への執念」を垣間見たような気がした。人工知能が搭載されていて、それはただ危険に対する反射的なプログラムだったのだろうか。

 それとも、人間の命を取り込んだ事により、予想や想像を超える何かが起こったとでも言うのだろうか。


「そもそも、あの機械があそこに居た理由は何だ……」


 口にしたところで謎は深まるばかり。未だに首謀者であるブルームの目的は明瞭でなく、彼は機械を使って人命を奪い、そこから何を果たそうとしているのか。どこから来た何者なのかさえ掴めずにいる。

 顔や名前なんて何時だって変えられる。

 敵について、まだ何もわかっていないに等しい状態なのだ。いくら敵を破壊しても事態は前進した気がせず、勝利したはずなのにもどかしさと不安ばかりが先行する。

 しかし、それをひとたび表に出せば隊員たちに間違いなく波及していくだろう事を理解している。先頭に立つ者の一人として、暗雲は自分がせき止める。そんな強い意思と覚悟が彼にはある。



【設定資料】


カレイドスコープ

由来は万華鏡の英訳。

万華鏡の名前の通り、コロコロと姿かたちを変えて人間に襲いかかる。

基本的な形は無いが、人間の形をしている場合が多い。

人間の体温に近い物体を襲撃する傾向にあるが、あまり正確ではなく熱のあるものを手当たり次第に攻撃する場合が多い。

コアは上空数十メートルに浮遊しており、地上の索敵範囲はコアを頂点とした円錐形。その範囲の底辺は半径十メートル弱と広めだが、先述した通り正確性はかなり低い。

銀色の管を人間に刺して肉体エネルギーを奪い取り、コアが定期的に地上へ降りてそのエネルギーを直接供給する、その繰り返しによって自生していた。



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