第0話
よく似た二人の子供が、仲良く市街地を歩いている。
二人とも女の子だ。双子だろうか。
その両端には、大人の男性と、女性が一人ずつ。おそらくその四人は家族だ。
……とても、幸せそうな家族。
場面転換。
どこかの住宅の前。
白衣を着た成人の男性が、双子のうちの片方と話をしている。
しばらくすると白衣の男と一緒に車に乗り込んで、もう片方の女の子はそれを泣きながら見送っている。
母親は、その子をたしなめるように頭を撫でている。
場面転換。
子供がたくさんいる。
幼稚園かなにかだろうか。先ほどとは違う白衣の中年男性が、体格の良い人間を引き連れて歩いている。
彼が先ほどの少女に話しかける。会話の内容は不規則にノイズがかかっていて聞きとれない。
場面転換。
どこかの地下室だろうか。
コンクリートがむき出しの壁に囲まれた窓がない部屋で、先ほどの夫婦が白衣の男性達に囲まれている。
夫の腕の中には、ぐったりして動かない女の子が抱きかかえられている。女の子の腕には、いくつもの注射の痕が見えた。
場面転換。
どこかの家のリビングのようだ。
ソファや応接机が置かれている広めの洋室。大人の男性が床に倒れていて……その人は手足をきつく縛られている。暴行されたようで顔や腕に傷跡もある。
すぐそばで、母親が覆面をした人間に捕らえられている。
その目の前には中年男性が立っており……彼は母親の首を掴み、なんと片手でゆっくりと持ち上げる。
持ち上げられた女性は足をばたつかせ、顔を苦痛に歪ませながら必死に抵抗する。
倒れている男性は必死に何かを叫んでいるが、女性の足の動きは次第に緩まっていく。
場面転換。
感情が感じられない瞳。
場面転換。
苦痛をはらんだうめき声。
場面転換。
床に出来た大きな血だまり。
場面転換。
なにかの死骸の断片ようなものがいくつも横たわっている。
……その中に一人立つ、血にまみれた小さな少女が、目を大きく見開いて呟いた。
「たすけて」
・・・