これならお菓子もいたずらも一緒に楽しめるね♪
『ん、うぅ、……シロナぁ』
私、日吉シロナは目の前のベッドに横たわる下着姿の少女、蓮佛聖の胸の上に手を置く。シロナの体は雪のように白く同性である私でさえ思わず見惚れてしまうほどきれいだ。
『ねえ聖ちゃん、いいよね?」
その言葉とともに私は聖ちゃんの胸の上に置いた手を彼女の胸の上の下着に手をかけるように動かす。
『…………ぅん』
聖ちゃんは恥ずかしさに顔を真っ赤に染め、今にも消え入りそうな声であるが、私の言葉に肯定の返事をする。
『じゃあ、はずすね』
そして私は聖ちゃんの了承を得たと同時に、手にかけていた下着をゆっくりとずらし、その布の下に隠されていた肌を露出させる。
『聖ちゃん、きれい……』
私はおもわずといった感じで言葉をもらす。
形の良い豊かな胸。しかしその胸には今、それを覆い隠す下着が存在しない。
そんな自らの姿に加え、その姿を私に見られているという状況が彼女の心を羞恥で満たし、その肌をほんのり赤く染める。
その姿は、もともとのきれいさに加え、官能的で艶めかしく、まるで至高の芸術作品のようである。
『じゃあ、触るね』
私は聖ちゃんの下着越しでない胸にそっと手を置く。
『あ……やっ……んぁ』
始めは弱く聖ちゃんの胸に触る。
そしてそのたびに彼女は声にならない声を上げる。
その私の理性を溶かしていく喘ぎは、壊れ物を触るかのように優しく触るだけだった私の手に力を入れる。
『んぁああ、シロナぁ……やぁあ』
時間の経過とともに聖ちゃんの声はどんどん大きくなってくる。
それは羞恥ゆえか、それとも快楽ゆえか。
次第に私たちの行為はどんどんエスカレートしていく。
そうしてとうとう、私は聖ちゃんの下半身へと手を伸ばし―。
「……で、この官能小説らしきものは何?」
蓮佛聖は手元にあるA4の紙から目を離すと、日吉シロナにあきれ混じりにジト目を送る。
「えへへ、いい感じでしょ?」
しかしそんな聖の視線などまるで気にした様子もなく、シロナは見当違いな回答をする。
「私はそういうことが聞きたいんじゃなくて、この官能小説をいったい何を思って書いたのかって聞いてるの」
聖が改めて聞くと、シロナは「なるほどね」といった後、聖の質問への回答を始める。
「聖ちゃん、今日って10月31日じゃないですか?」
「その通りね」
「つまり今日はハロウィンというわけです」
「まあ、たしかにそうだけど、それがどうかしたの?」
「つまり今日はいたずらをしてもいい日というわけです!わかりましたか?」
「……はい?」
回答を聞いたが残念ながら聖には理解ができなかった。
「まったく、物分かりが悪いですよ聖ちゃん。今日は1年で1度の合法的にいたずらをやってもいい日です。だから私は聖ちゃんへのいたずら用にあの小説を書いたというわけです。どうです?ドキドキしました?」
「……とりあえずハロウィンに関する認識がおかしいことだけがわかった。こういうときって普通『お菓子をくれないといたずらしちゃうぞ』とか言うものじゃないの?」
「じゃあ聖ちゃん、お菓子をくれないといたずらします」
「……いや、今お菓子持ってないけど」
「はい、だからいたずらしました!」
そう言ってまさしくいたずらが成功した子どものような笑顔を聖に向けるシロナ。その笑顔を見ると思わず脱力してしまう聖。
「はぁ、とりあえず一応の納得だけはした」
「それは何よりです。じゃあせっかくなので聖ちゃんも私にいたずらします?せっかくですし、その小説に描いたようないたずらでもいいですよ」
シロナは聖にそう言うと、その様子を妄そ……もとい想像したのか、小さく「きゃー」と言って両手を頬にあてながら1人で照れる。
「さすがにいきなりは、その……困る。私にも準備が、その……」
いや、シロナが1人で照れていると思ったが、言われた方の聖も照れていた。
「しょうがないですね。それはまたの機会にしましょう」
「うん。そうしてください」
シロナもこの話はさすがに冗談だったのか、すぐに話を引っ込める。そのかわり今度は別の話題を出す。
「でもせっかくのハロウィンですし、それに私にはお菓子の準備もちゃんとあります。だからせっかくなので例の定型文をお願いします」
シロナはそういうと、笑顔で聖に催促をする。
そのくらいなら別にいいかと聖も思い、シロナの希望通りにハロウィンの定型文を口にする。
「お菓子をくれないといたずらしちゃうぞ」
「はーい。では私からのお菓子です」
その言葉とともにシロナは用意していたというお菓子を取り出す。
「……あの、シロナこれはどういう?」
しかし聖はシロナがとりだしたお菓子に困惑していた。
シロナは聖の戸惑いを感じ、一度姿勢を正すとシロナの困惑に答える。
「もちろん、私からのお菓子ですよ。……いたずらも兼ねてますけど」
そう言って、シロナは元の姿勢に戻る。
シロナが用意したお菓子はそれ自体は何の変哲もないお菓子だ。クッキー生地のお菓子を棒状にし、そこにチョコレートをコーティングしたお菓子。……いわゆるポ○キーなどと呼ばれているものだ。
この前振りでおおよそ見当がついているだろうが、シロナはこのお菓子をただ手渡しするだけでなく、口に加えながら渡してきたのである。……俗にポ○キーゲームと呼ばれる形である。
「あの、シロナ。普通に手渡しじゃダメなの?」
聖は当然の疑問を口にする。
仕方がないので再度シロナは口からポッキーをはずし、聖の問いに答える。
「だって、普通に渡すだけじゃつまらないじゃない?それにいたずらが1つだなんて誰も言ってないし、この方法ならお菓子もいたずらも一緒に楽しめるよ。まさに一挙両得!そして最後に単純に私が聖ちゃんとキスがしたいからです!」
そうシロナが言い切ると、再度ポ○キーゲームの姿勢で聖のことを待つ。
「あ、あの。えっと……」
「ふぃふぃふぃふぁん、ふぃふふぇふぉふぉうふぉ(聖ちゃん、いつでもどうぞ)」
シロナは聖が来るのを今か今かと期待のまなざしで聖の目線よりも下から見つめる。そんなシロナの上目づかいを受けて、聖の頭はパニック状態である。
「……」
シロナはただただ聖のことを待つ。そのシロナの視線はただひたすらに聖だけを映す。
そんな時間が数秒続いたのち
「……シロナのばか」
そうつぶやき聖はやめるのだった。
「「ぅん……ちゅ……」」
シロナに抵抗することを。
「えへへ。おいしかった、聖ちゃん?」
「…………ばか。聞かなくてもいいでしょ」
こうしてシロナと聖の実に甘ったるいハロウィンは過ぎていったのだった。
一応ですけどこの登場人物は7~8ヶ月くらい前に書いたホワイトデーとエイプリルフールの短編に出てきた方々と同一人物です。
読んでも読まなくてもどちらでも問題ないですけど、よければそちらも見てみてください。
では最後に、ここまで読んでいただきありがとうございました。
以上、ハロウィンネタの短編でした!