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第四話=計画

「おい、こら!シャワーのお湯を飲むんじゃない!!」

「ごくん…は、はい!申し訳ありません!!」

「眼が!!眼が痛いよ!!」

「シャンプーするときはしっかり目を瞑れと言ったはずだ!この馬鹿!」

「…甘い匂い!」

「石鹸は食べ物じゃない!!」

「歯を磨くと…歯がツルツルします…不思議な感じです」

「いずれ慣れる!というか慣れろ!!」



以上、ご覧の音声はお風呂場よりお送りしております。

お風呂イベントと言えばもっとキャッキャッフフフ、嬉恥ずかしのイベントだと思うのだが、そんなの関係ないとばかりに騒がしく大変な事態となった。


飯を食べ終えた俺達は陽が落ち切る前に宿屋を出て俺の部屋まで戻ってきた。

『扉』を出した時僅かに驚いた二人だが実はその凄さがよくわかってないのか、俺が通った後を特に怯える様子もなくすんなりとこちらに来ることが出来た。

部屋に戻ってきてまずやったことはお風呂に入れることだった。

はっきり言おう。

二人は臭い。

まともに体を洗ったことがないのもまるわかりなうえ、服は色の無い汚れた貫頭衣のようなものだけ、そんな状態が許せる現代人がいるわけがないのだ。

そんなわけでさっそく風呂にいれることになったのだが、シャワーなぞ知っているわけもなく、使い方説明のため一緒に入っている。俺は水着、二人は取りあえず服と一緒に丸洗いしてみた。

水も滴る濡れた姿に興奮するかなと思ったが二人から色気を感じる余裕が無いほど大変な事態になっている。

しかし観察することはするわけで、春風はまだ膨らみの少ない少女であるし…雪風は…境遇から考えれば奇跡的に胸があったが…そちらよりも二人とも見ていて痛ましいほどの痩せっぷりと…青あざの数々。

これで興奮出来る人間はかなり気合の入ったドSくらいだろう。

とにかくキレイになぁれと石鹸シャンプーリンス歯磨きセットをフル稼働させて対応した。

そのかいあってか、汚れはなんとかなった。しかし…


「ふぅ…問題は尽きないな…」


青あざはそのうち治るからいいのだ、今も二人に市販の薬を渡して塗り合いっこしてもらってる。

それだけでもかなり効果はあるだろう、だが、他の病気は対応できない。そも、最初に気が付いたのは虫歯だった。

見れば何箇所か黒くなっていたのだ。そこから思い至ったのは病気の数々。

聞いた生活から想像すればどんな菌を保有しているかわかったものじゃなかった。

いずれあんなことやこんなことをする関係を考えれば完璧に正常な状態までもっていきたい。

そうだ、俺の目標は『目指せ完璧で瀟洒な侍女達』である。

そんなわけで俺は無い知恵を使ってこの問題を解決するための策を練った。

もう夜も深まった時間だが面倒はさっさと終わらすに限る。

ネットを活用し当りのよさそうなところにメールを出す。

お金は貯金にこの前の金貨の買取り分に今度手に入れた金貨とかなりある。

つまるところ金に糸目はつけるつもりはなかった。

反応は明日。

薬を塗り終わった二人に適当に俺の服を渡し今日は寝る。

さすがにベッドを二人に明け渡すことはせず、毛布とクッションを渡し部屋の隅で寝ろといい付け俺はベッドに横になった。毛布とクッションの柔らかさに感動している二人を眺めながら俺はうまくいくことを祈った。


『○○興信所様、○○県付近の信用のおける医者または闇医者の捜索をお願いします。また…』


さてどうなることやら…。

明日にわずかな不安を抱きつつ眠りに落ちて行った。



翌日。俺からすれば比較的早くに目覚めたが二人は日の出から起きていたようだ。

俺が起きたのに気が付くと所在なさげにして周りのものを観察していたが、すぐにベッドの傍までやってきて床に頭をつけた。


「おはようございます、主様」

「おはよう…です。主様」


「うあ?、…ああ、おはよう、雪風、春風…」


一瞬誰が誰で、なにごとかと思ったのは内緒だ。

のそのそと起き上がり回転の遅い頭を早々に酷使して奴隷達に、トイレの使い方から朝の支度の仕方などを教えて朝食を食べる。

まだ完全な固形物は辛いだろうと柔らかな食パンにイチゴのジャムをたっぷりとバナナにヨーグルトを与えてみた。


「朝から…このように沢山の食べ物を頂けるなんて…本当にありがとうございます」

「甘いです。どれもこれも甘くておいしい、おいしいよ、です!!」

「それはなにより…ふぁ…」


ちょっとだけ頬が赤くなった二人の肌が穏やかに色付くのを欠伸混じりに観察しながらパソコンをつけメールを確認してみる。

朝早くながらメールを出した興信所、つまり探偵屋の全てから返答があった。

思った通り比較的大手のところは芳しくない返事、犯罪の可能性がある仕事は引き受けられないといった内容。

小さいところは引き受けてもいいと内容にあるが俺の勘がメールの文面から信用ならない止めた方がいいと告げていた。

その中から一件だけ、丁寧なメール内容にまずは打ち合わせからと好感触の所があったのでそこにメールを送り返答をまった。

まったりとすること一時間ほどでメールが返ってきて本日の打ち合わせが決定した。

空探偵事務所。

それが俺の見つけた興信所だった。



「何か複雑な事情がおありだと思いましたが、異世界…ですか。こんな首輪をした二人と…なにより『扉』を見せられたら信じるしかないですね」


空探偵事務所の代表、中年女性の空茜さんはまっすぐな目で俺を観察しながら説明に納得してくれた。

最初は事情を言わず医者だけ紹介か探してもらうと思っていが、あまり口が上手くない俺はボロがすぐにでもでそうになったのでいっそのことと全部を正直に話して協力を依頼した。

最初から俺のいうことを馬鹿にせず、真摯に話を聞いてくれたので信用できると踏んだのだが当りだったようだ。


「事情は理解しました。伝手のある医者に協力を依頼しましょう、また他にも色々やることがありますね。着手金もいただきましたのでそちらも協力しましょう」

「ありがとうございます、それにしてもよく信じてくれましたね」

「そうですね、人の裏ばかり探す浮気調査なんかよりずっと面白い案件だからでしょうか、年甲斐もなくワクワクしましたよ。あとは…私はお金が好きなだけですよ」


中年を過ぎたであろう空さんの顔に僅かに茶目っ気が浮かんでいた。

実際、打ち合わせの結果、着手金と報酬で今の見積だけで合計七桁後半を請求されている。

面倒な案件だから仕方ないが…俺は僅かに苦笑いだった。

色々と細かに相談した結果だがおかげで面倒事はかなり減った。

俺の理想の実現のためにはやることが多すぎだったのだ。そうまともに常識をしらない二人に『常識』を教えることはかなり苦労することになるのだから。

そんな訳でこの色々と頼める協力者は本当に助かったのだ。

そういったわけで空さんの伝手の医者に車で向かった。


闇医者というわけではなく、正規の医者だが密かに色々と細工してやってくれる医師、近藤医師のところには探偵事務所から三十分ほどで着いた。奴隷二人は車に驚き、人の多さに驚き、街の様子に驚きと飽きる間もなく驚きの連続だった。

そんな様子を若干面倒に感じつつも俺は少し投げやりながらいちいち説明してやった。

そうして到着した診療所で、近藤医師と看護師の田中さんを紹介された。

近藤医師は裏ごとをやっているような様子はまったく見えない柔らかなおじいさん先生で田中さんも雰囲気の明るい看護師さんだった。事情説明は空さんに任せて話を付けてもらう。結果二人を預けて徹底的な検査を受けてもらうことになった。異世界出身者がどんな病気を持っているかわからないから…各種検査に三日、結果がでるのに一週間かかるとのことなので二人はしばらく入院という扱いで預かってもらった。かなり不安な様子だったがしっかりと言い含めたし、幸い診療所の二人は不安がる子供をあやす様に気遣ってくれていたので奴隷たちは少し安心したようだ。さらにしばらく簡単な検査の様子を見させてもらったが、俺の知るそれと変わりない検査であったし、空さんも信頼できる人で腕も確かと太鼓判を押してくれたので任せることにした。

それと場合によっては『異世界出張』も受け付けてくれるとのことなのでかなり助かる。金はそこそこ要求されたが…。ともかく医師と知り合いになれたのは助かった。異世界特有の病気以外なら安心できる。


診療所から探偵事務所に戻ってきた俺と空さんは話を進める。


「ここからは異世界の話は誰にも話さないんですよね?」


あまり異世界の事は広めたくない俺にとって医師に話すのも実は消極的にだが反対だった。俺は懸念を持っていることをはっきりと伝えた。


「はい、教える必要がありませんから。あと関係するところはお金を多めに支払い。ちょっと珍しい外国からの長期観光客とでも言えば十分でしょう」

「そうですね…」

「細かな日常のこと…基本的な常識は元小学校の先生が知り合いにいますからその方にお願いします。それが済んだ段階で、各種習い事ですね」

「はい、俺の目標『完璧で瀟洒な侍女達との生活』計画を成功させるためにも各種習い事は必須です」


俺は力を込めて断言した。


「一種のハーレムですか…女の身からすれば理解しがたくはありますが、契約は契約ですから、全力で協力させてもらいましょう」

「はい、お願いします」

「全ての習い事を終えるまで大体二から三年くらいでしょうか…なかなかに長期の計画になりますね」

「たった二、三年で俺の今後の生活が安泰になるなら安いものでしょう」

「そうですね、しかし異世界でメイドに世話をされながらの悠々自適な生活ですか…さてこの物語はハッピーエンドを迎えるのでしょうか?」


若干おどけた様に言う空さんに俺は苦笑をもって答えた。


「…戦争が当たり前の世界か、はたまた魔物が存在する世界か…把握出来ていないことも多くあります…しかし恐れていては何にもできませんし。こっちで交通事故に合う確率とか社蓄のまま生活してうつ病を患って生きるかを考えたら、幸せな生活が掴めそうな異世界の方がずっといいですよ、それにすでに異世界生活計画は動き出していますし、一生を賭けましたからね。後は天の采配を待つばかりです」

「そうですね…現実は過酷さが増すばかりでしょうから…」


何かを思い出すかのように視線を外して窓の外を眺める空さん。

おれもつられて薄く雲の煙る空を眺めた。


「さて、雑談もこの辺にして詳細をもう少し詰めましょうか」

「そうですね」




『完璧で瀟洒な侍女達との生活』計画。

略して『完生計画』は俺のお眼鏡にかなう美人な奴隷を異世界で獲得し、こちらの常識と生活スタイル、さらに各種習い事を覚えさせて完璧で瀟洒な侍女を作り上げ、現実の品々を使いこなせる存在とし、向こうに道具を持ち込みまくって異世界で有りながら優雅に生活することを目標とする計画である。

その試金石となるのが衝動で買ってしまった二人の奴隷である。

彼女達にはこれから徹底した教育が待っている。まずは常識。次は勉強そして、俺を守り、また侍女達自身を守る各種武道、思いつくもので剣道、弓道、柔道、に薙刀…さらに続いて俺を楽しませ、また礼節を学ぶための芸道、茶道、華道、日本舞踊、各種料理…。余裕が出来たらピアノにバイオリンにあとは,ets…と眠る暇もないほどに教え込みまくる予定だ。

そのためにも口の堅く詮索しない優秀な各先生方が必要なわけだが、そんなのをいちいち自分で探したくはない、そんなわけで探偵事務所に依頼したわけだ。

幸い空さんはお金を払う限り協力を約束してくれているので各先生の捜索は大丈夫だろう。

後は俺がこれだけの習い事をさせるための金を集めないといけないが、幸い金貨は飴玉と交換で手に入るイージーモード。


俺の人生勝ち組待ったなしの状況だろう。


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