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夫人と、夫人の夫。

夫人に連れられた家では、当主であろう男が迎えてくれた。男は、サー・ノーサンルーベと名乗った。爵位はひとつしかないらしい。


「あなた、客人です」

「うむ、名前を聞いてもよろしいかな」


明らかに異国の人間とわかる私たちに、彼は丁寧な対応をした。


「レイコと申します、貴族様」

「ヒロシと申します」


家名は聞いても無駄だろうね、とつぶやいた彼は、単刀直入に言うけど、と断ってから、いろいろなことを聞いて来た。


どこから来たのか、目的は何か。当面はどうするつもりか、などなど。


私達の目標は、現代日本に帰ることだ。それでも、タイムスリップなんて馬鹿馬鹿しいし、信じてもらえないことはわかっていたので、その点だけぼかしながら、主人に放り出された使用人として振舞った。


「さて、レイコとヒロシ。君たちは、見たところ、使用人としてはだいぶ歳をとっているね。それなのに、未婚だ。言葉は、、、まあ、下級の使用人くらいだろう。言葉遣いが不慣れだ」


この貴族リチャードというらしいは、私達の面談から見られる特徴を挙げる。


「君たちが妻に語ったという主人の特徴を満たす貴族は、この辺りには心当たりはない。さて、ここからが本題だ。遠方からこちらに放り出されるまでのあいだ。高齢、未婚、言葉の問題がありながら、君たちの栄養状態はすこぶる良いようだ。これらの事から、私は一つの結論に至る」


重々しく、核心に迫ろうとするかのようなリチャードの話ぶりに、思わず洋の方を見やる。洋は、じっとリチャードの目を見続けている。


「君達は、この辺りの片田舎にして見れば、なんというか、異様だ。何者だ」


冷たい汗が、ひたいを伝う。タイムスリップがばれたとして、どういう扱われ方をするのかはわからない。ただ、あまり良い状況にはならないだろう。


「科学者です」


凛とした洋の声が響く。


「正確には、学を修める前に破門され、放り出されました。ですから、無位無官の身です」

「ほう!」


淀みない弟の返答に、リチャードの声が予想外に弾むのがわかる。


「学者か!学問は良いものだ。そうであれば、君たちのことも納得はできる。何を学んだのかね」

「土木、、、いえ、建設関係のことを学びました」

「ほう!レイコも同じ学問を?なるほど、なるほど」


なんとか、洋の機転で切り抜けたようだ。それにしても、急にリチャードが好意的になったように感じる。


「いや、すまない。私は学問が好きでね、いやいや、下手の横好きさ。少しかじっただけだ。だが、君たちが学徒であるならば話は簡単だ。君たちには、中央の大学へ戻ったり、特に行く先があるわけではないのだろう?なら、ここで働けば良い」


この一言で、私達のここでの身の振り方が決まった。職業は、家庭教師兼技術者。給金などは、仕事ぶりをみて決めるが、部屋は与えてもらえるようだ。


「さて、長旅で疲れているとは思うが、最初の仕事をお願いできるかな?屋敷の裏側に小川があるんだが、そこにかけた吊橋が壊れてしまってね。何度かけても強風の日に壊れてしまう。いま、そこに技術者がいるから、相談に乗ってやって欲しい」


ーーーーーーーーーーーーー


リチャードは、2人が退出したあと、執事に命じた。


「彼らが優秀であれば良いが、優秀であったらあったで、厄介かもしれん。調べておいてくれ」


ーーーーーーーーーーーーー


玲子は、橋に向かいながら弟に尋ねた。


「ねえ、なんとか話はまとまったけどさ、大丈夫なの?なにも情報がないわよ?」

「そうだね、、、でも、ここがイギリスだったとしたら。大体の年代はつかめて来ているよ」

「どういうこと?」

「ううん、それは、橋に着いたら話すよ。橋を見れば、僕の考えが正しいかはわかるからね」




この物語では、科学関係や社会制度は、頑張って史実に沿って書いていきます。名前とかは適当です。

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